再生関連企業の新任社長(同じ東大卒でも、中身は色々)
2004年05月22日
先週末で、ようやく上場企業の決算発表も峠を越えたようだ。各社の業績予想とは別に気になるのが、役員人事。私見では、それほど大きな動きはなかったようだ。むしろ、私が注目したのは、最近世間を騒がせている、問題企業のトップ交代の方だ。
最初は、経営再建中のカネボウの会長兼最高経営責任者(CEO)に就任した、余語邦彦氏。朝日新聞の略歴では、東大、官僚、外資系コンサル、光通信再建、産業再生機構と、絵に描いたようなエリート像がうかがわれる。
余語氏は東大院機械系工学科を修了し、科学技術庁(現文部科学省)勤務後、経営コンサルタント会社社長などを歴任。00年には経営再建中の光通信に移り、副社長としてリストラを断行して再建を軌道に乗せた。再生機構の執行役員には昨年8月に就任した。
しかし、余語氏の光通信時代の経歴について語る別の記事 カネボウ化粧品CEO 余語邦彦氏の報じられない「過去」を読むと、見方は一変する。クリーンなイメージだけのパワー・エリートといった人物ではないようだ。
「余語氏の経営再建手法は単純明快だ。ネットバブルの崩壊で経営が悪化した光通信に入った時には、まず、インターネット関連から撤退。次にベンチャーキャピタルが投資していたネットベンチャー企業の未公開株を投げ売りして、現金を得た。その結果、2300億円あった有利子負債を2年間で900億円に圧縮した。赤字部門を切り捨て、売れるものはすべて売るという、実にシンプルな手法です」と、当時の関係者はこう分析する。
アングラ人脈の間では「重田社長の先兵としてネットベンチャー、クレイフィッシュ(以下クレイ社)に乗り込み、会社乗っ取りを仕掛けた張本人」として広く知られている。(中略)
あるベンチャー起業家は「資産の売却にかけてはすご腕だが、再生という根気のいる仕事はどうかな(向いていない)」と疑問符を付ける。余語氏の仕事がカネボウ化粧品の売却先を探すこと、それも、いかに高くカネボウというブランドを売るかの駆け引きに専念することだとするなら「再生」の二文字が泣く。
余語新社長の評判は単なる「解体屋」として終わるのか、それとも本当の意味での「再建家」として名声を勝ち取ることができるのか、今回のカネボウでの実績で真価が問われることは間違いない。
一方、今回余語氏を送り出すことになった、産業再生機構の富山和彦専務の経歴の方も負けず劣らず華々しい。 朝日新聞「人間力」こそニッポンの勝ちパターン」 。
東大法学部「6年生」で司法試験に合格したが、当時目新しかった経営コンサルタントに惹(ひ)かれ、85年にボストン・コンサルティング・グループに入社。数カ月後に先輩9人と飛び出し、CDIをつくった。(中略)
――ところで、執務室ではロックを聴いているようですね。
(冨山)高校時代に友人とつくったバンドを6、7年前に再結成したんです。私はサイドギターとボーカル。最近はレッド・ツェッペリンの曲が多いかな。年に1度、ライブハウスでコンサートを開くんですが、みんな仕事が忙しく、練習から遠ざかってます。
――休日の過ごし方は?
(冨山)高1、小4の息子とテニス。あとはバンドの練習かな。
――大学生時代はどんな生活だったんですか。
(冨山)最初の3年間はバカみたいに遊ぶ、軽薄な学生。冬はスキーで夏はダイビング。普段はテニス。夜は当時ブームのディスコに繰り出す。ガキですね(笑い)。
富山氏の方も、一般から見れば、エリートであることには変わりないものの、先の余語氏に比べれば、人間くささが感じられる。
前会長の不祥事の中、まさに「火中の栗を拾う」かたちで、武富士の社長に就任した、元松井証券専務の元久存氏の経歴は、こうなる。
東大文卒。86年山一証券入社。98年旧住友海上火災保険入社。99年松井証券入社。取締役、常務を経て01年1月から専務。04年5月武富士顧問を経て6月29日社長就任予定。
猛烈な上昇志向で自ら進んでキャリア・チェンジをしてきたというよりも、山一證券の自主廃業後、流れに任せた結果がこういうキャリアになったという感じがする。就任時の記者会見でも控えめな発言に終始していたようだ。
「私はそんなに大物ではありません」
14日の就任内定の記者会見で、武富士の創業者である武井元会長から直接就任を要請されたのかとの質問に、控えめにこう答えた。
やはり、一貫して国内の伝統的な金融畑を進んできただけに、強烈な自己主張が美徳とされる外資系コンサル出身者の2人と比べれば、発言も慎重である。
しかし、他人を褒めることがめったにない松井証券の松井社長が、片腕として信頼していただけに、その実務の能力は折り紙付きと言えよう。
また、ワンマンに近い松井社長の下で働いた経験のある元久氏は、武井一族の絶対支配が浸透した武富士の再生には、うってつけの人材という見方もできなくはない。
ここまで書いてきて、全く偶然にも、東大卒の社長の話ばかりで、「日本の企業再生は東大卒社長が担う」みたいな内容になってしまった。当初考えていた構想から、かなり外れてしまった。
本当は、ビジネスマンには、「再建」向きの人と「起業」向きの人とがあるのではないか、という展開にもって行きたかったのに。今回は、とりあえず「以下次号に続く」ことにさせてもらうことで、ご勘弁を。
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