隠れたロングセラー『チョコラ』に見るマーケティング・メディア・ミックス
2004年08月19日
前回の「アンパンマン」に続いて、ロングセラーブランドのマーケティング戦略に関する話題です。男性にはあまり馴染みのない製品ですが、エーザイのビタミン剤『チョコラ』は、1952年の発売で、実に半世紀以上のライフサイクルを持つロングセラーです。2004年の売上目標も100億円と聞けば、エーザイの大衆むけ医薬品の中で旗艦ブランドの1つとして、位置付けられていることが分かります。このブランドをさらに強化するために、テレビCM以外にもインターネットを利用したメディアミックス戦略にも、最近は積極的に取り組んでいます。8月19日付けの日経流通新聞16面記事『エーザイのチョコラ:CMで共感、ネットで詳しく』の一部をご紹介します。
「いつものメークがのりませ~ん」。鏡台に向かって困り果てた表情を見せるOLを演じるのは、映画「踊る大捜査線」でお茶の間にも人気が広がった若手実力派女優の深津絵里さん。主力製品「チョコラBBプラス」の最新CMでは、肌の調子が気になり始めた30歳前後のOLの朝の風景をコミカルに描く。肌の手入れをさぼっていたことを反省し、チョコラBBプラスを飲むことで、肌荒れの悩みを解消。仕事にも元気に取り組むようになるというストーリーだ。
深津さんを同製品のCMに起用したのが01年。「主要顧客層である30代前後の女性が共感を持てる女優を選んだ」とエーザイ薬粧事業部マーケティング企画部の大根田昌孝課長は話す。当初深津さんが出演するCMはチョコラBBだけだったが、好評のためチョコラシリーズの栄養ドリンク剤など姉妹品も含めたCMキャラクターに広げた。
チョコラシリーズが定番商品として長く売れ続けるのは、人気女優の出演するCMがあるからだけではない。 「医薬品としての優れた薬効が支持を得ている」と大根田課長は話す。昨年発売した「チョコラBBプラス」は、ニキビや口内炎、体の疲労感に効き目のあるビタミンB1とB6を増量し、キャップ部分も錠剤が一粒ずつ取り出しやすく改良した。
ただこうした製品情報までを15秒のテレビCMで紹介するのは困難。そこで活用するのがインターネット。2000年にチョコラシリーズの情報提供のために開設した「チョコラドットコム」では、テレビCMでは伝えきれない薬効などの製品情報をきめ細かく伝える。ビタミンに関する雑学やテレビCMの製作裏話も掲載し、製品ユーザーが商品知識を深められるように工夫した。同サイトへのアクセス数は月3万件、不定期に発行するメールマガジンには1万8000人が登録する。顧客が共感できるCMとネットを使った製品情報の2本立て戦略が、定番商品の強みを支えているようだ。
早速、「チョコラドットコム(www.chocola.com)」を見てみました。エーザイのサブドメインではなく、独立したブランドがドメイン名として使われていることは、同社の主力ブランドとしての期待の現れと考えられます。また、チョコラがエーザイの製品であることを知らなくても、「チョコラ=chocola」の表記がわかれば、簡単にアクセスできるので、新規顧客の開拓にも有効でしょう。
このホームページを見て最初に気づいたのは、チョコラ関連製品の意外なほどの品揃えの豊富さです。基本製品の錠剤群がビタミン成分の配合のバラエティで5品目。ドリンク群が、医薬品で1品目プラス医薬部外品で3品目の計4品目。その他にも、子供用として、錠剤とシロップの2品目があります。私を含めた男性は、チョコラ製品がこれほど商品展開(line-extention)していることを知らなかったのではないでしょうか。その理由は、チョコラが女性をターゲットにした製品で、マーケティング・コミュニケーションも女性にあわせて来た影響だと思われます。
この『女性をターゲットにしたビタミン剤』という点が、チョコラブランドの強さです。同じビタミン剤であるタケダの『アリナミン』と比べてみるとよく分かります。アリナミンもチョコラと同じく錠剤とドリンク剤の製品構成ですが、子供用製品がありません。子供用の生活財の購買決定権を持っているのは母親です。ロイヤリティの高い女性を顧客にするチョコラの方は、子供用のマーケットにも製品を投入できるわけです。
チョコラ製品の課題の1つは、ビタミンのサプリメントといかにしてマーケットを分け合っていくかだと思います。美容と健康に関心の高い女性ほど、複数のビタミン・サプリメントを自分向きにブレンドして、摂取する傾向が強いのではないでしょうか。今後ますます消費者のビタミンに関する知識が豊富になり、サプリメントも手軽に購入できるようになると、医薬品の薬効に頼った差別化策だけでは、マーケティングも難しくなるのではないでしょうか。
2番目の課題は、男性マーケットを狙うかどうかの問題です。ニキビやシミは、性差に関係ないもので、この問題に悩んでいる男性も多いはずです。最近の若い男性は、美容に対する関心が非常に高くなっているので、有望な潜在マーケットといえるのではないでしょうか。マーケティング戦略としては、男性向けの新製品を投入するやり方と、製品はそのままで男性向けのコミュニケーションを始めるやり方があります。前者のやり方だと、『家族皆のチョコラ』になってしまい、オロナミンのような陳腐なコンセプトになる危険性があります。むしろ『肌に敏感な女性が愛用する医薬品』は、当然男性のニーズも満足できるというコミュニケーション・コンセプトの方法が有効だと思います。
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