ソフトバンク対総務省の争いの次なる火種は、Yahoo! BB 光の映像配信サービス
2004年11月01日
ブロードバンドの普及により、リッチ・コンテンツの映像も手軽に家庭に配信ができるようになりました。この技術革新により、従来より曖昧であった「放送」と「通信」と線引きが、再度大きな問題になりそうな動きがあります。昨年9月にベンチャー企業のエフエービジョンが、海外居住者向けのテレビ鑑賞サービスの「録画ネット」を開始しました。本年7月に、このサービスが著作権法に抵触するとしてサービス停止の仮処分を申し立てたのが、NHKと民法キー局5社です。この10月に裁判所が下した決定では、エフエービジョン側の主張は完全に退けられる結果が出て、現在はサービスが停止状態になっています。情報源は、『「録画ネット」を恐れるテレビ放送居の事情』(インターネットマガジン 12月号 p.70-73)です。
録画ネットの仕組みはこうだ。サービス加入者はまず、テレビチューナーとキャプチャーカードを搭載したパソコンをエフエービジョンから購入する。一般に「テレビパソコン」と呼ばれている市販の製品である。加入者は自分の購入したテレビパソコンをエフエービジョンに預け、同社はこれを松戸市の自社施設に保管する。パソコンは地上波を受信し、NHKや民放の番組をHDDに録画する。
海外在住の加入者は、手元のパソコンからインターネットを経由してこのテレビパソコンにアクセスし、iEPG(電子番組ガイド)を使って番組の予約や受信、録画を行える。そして録画したテレビ番組を実際に視聴する場合はインターネット経由で手元のパソコンで受信する。
国内のテレビ番組をエンコードしてサーバーに収め、国外の日本人にインターネット経由で放送する ── 一見素晴らしそうなビジネスだが、ごく素直にこうした商売を始めてしまうと、著作権法の公衆送信権に抵触する。録画ネットでは、番組の視聴が私的利用の範囲を超えないような仕組みも作られている。そのひとつは、認証管理の方法だ。加入者は録画ネットのポータルサイトでID、パスワードを使った認証を通った後に自分のテレビパソコンにリモートアクセスできるようになるが、同じIDで別の人が認証しようとすると、先にログインしていた人はセッションが切れ、操作もデータ転送もできなくなるようになっている
NHKが今回サービス停止処分を求めた背景には、オリンピックの放映権の問題がからんでいます。
オリンピック放映権は、各国の放送局や政府が国際オリンピック委員会(IOC)から得る仕組みになっている。そして、この放映権がおよぶ範囲は、国内に限られている。獲得した放映権は、日本国外では無効なのである。これを逸脱するとIOCからたいへんなペナルティが課されかねないし、その国の放映権を持っている放送局連合や政府などからも賠償請求を起こされる可能性もある。NHKが危惧しているのは、録画ネットのようなサービスが普及することによって、この放映権の枠組みが崩れてしまいかねないことだった。
「現在エフエービジョンが提供しているサービスは小規模で、影響は少ないかもしれない。だがこうしたサービスがなし崩し的に増え、適法だと認められるようになると、大手の企業が同じようなサービスを大規模にスタートさせる可能性もある。もしそうなれば、放映権の枠組みが崩れていまいかねない。そうなってしまう前に、このビジネスは間違っているということをきちんと知らしめておかなければならないと考えている」(NHKの社内弁護士である総務局法務部の梅田康宏弁護士)。
この「大手の企業が同じようなサービスを大規模にスタート」というくだりにピンときました。それは、ソフトバンクBBが、Yahoo!BBのFTTH版として発表した「Yahoo! BB 光」のオプションサービスの中にある「無線TV パック」です(『ソフトバンクBB、1Gbpsの光ファイバサービス「Yahoo! BB 光」』)。
Yahoo! BB 光の月額料金には含まれないオプションサービスとして10月に投入予定の「無線TV パック(仮称)」も紹介された。IEEE 802.11g準拠の無線LANを搭載した専用端末にテレビやDVDプレーヤーなどを接続することで、PCからもビデオやDVD、多チャンネル放送などを視聴できる。合わせて無線TV パックのテレビ映像を再生できるYahoo! BB 光専用のポータルサイトも開設。テレビ映像の視聴のほか、再生しているPCのHDDにテレビ映像を録画することも可能だという。
年内には映像配信サービス「BBTV」もYahoo! BB 光に対応する予定で、多チャンネル放送や電子レンタルビデオサービスが利用可能になる。さらに現在はハイビジョン映像を配信するための新型STBを開発中という話も明らかにされた。さらにはテレビ用のポータルサイトも用意し、このポータルからテレビやBBTVといった映像コンテンツなどが視聴可能になるという。
これらの映像サービスをネットワークに用意されたHDDに録画できる「Yahoo! BB ネットワーク HD」というサービスも提供予定で、ネットワーク HDに保存された映像は外出先からも視聴できる。ただし、著作権の問題もあるため、ネットワーク HDに保存された映像はあくまで個人利用に限るという。
ソフトバンク側は、著作権法に配慮することを表明しています。しかし、ネットーワーク上のハードディスクに保存された映像は、「外出先」からも当然アクセス可能になります。この外出先に国外が含まれるかどうか、今のところ明らかではありません。基本的には、海外旅行先で映像を見る行為は、先に紹介した「録画ネット」と同じで、著作権法上の公衆送信権に抵触することになります。ソフトバンク側では、この問題を回避するために、海外からは視聴できないような特別なシステムの導入を考えているのでしょうか。
現在、ソフトバンクは総務省と通信分野で、携帯電話の周波数帯域の割当を巡り争っています。技術的な解決策がないまま「Yahoo! BB ネットワーク HD」サービスが導入されるとなると、今度は放送分野で総務省とひと騒動起きることは間違いないでしょう。
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