セブンイレブンの飲料値下げ戦略が、MBO後のポッカに与える影響
2005年09月05日
コンビニエンスストア最大手のセブンイレブンが、3日から全国の約1万1000店で、500ミリリットルのペットボトル入り清涼飲料の主力7商品の税込み価格を、147円から125円に22円引き下げました。業界トップが先陣を切って値下げに踏み切ったわけですから、業界他社も追随せざるをえないでしょう。現状では、業界2位のローソンと3位のファミリーマートは、ひとまず静観の構えですが、ミニストップは同じ3日から、追随値下げを実施しています。
ナショナルブランド製品の定価販売を基本にしてきたコンビニが、その戦略を転換せざるをえなかった理由は、ディスカウントストアや100円ショップの低価格路線に対抗するためです。コンビニの中でセブンイレブンが、最初に値下げを打ち出したのは、同社とイトーヨーカ堂が、持ち株会社セブン&アイ・ホールディングスに統合されたことと、無関係ではありません。
持ち株会社化に伴い、セブンとヨーカ堂は同一商品は同一価格で仕入れる方針を打ち出したからです。すなわち、セブンはヨーカ堂に比べて仕入れ価格が高かったので、ヨーカ堂並みの引き下げを、メーカー側に求めることになります。圧倒的なチャネルパワーを持つセブンが、自社の利益を削ることで販売単価を下げることはありえません。
相対的に立場の弱い飲料メーカー側は、コンビニ側からの値下げの要求を飲まざるをえないでしょう。これだけだでも、飲料メーカーの経営にとっては大きな打撃ですが、 さらなる悪材料も予想できます。それは自動販売機による販売への影響です。飲料メーカーの利益源は、定価販売できたコンビニと自販機からの売り上げにありました。今回その一角が崩れたわけですから、自販機の割高感が際立つことになり、自販機の売り上げも減ることは間違いないでしょう。
現在はコーヒー系の飲料は、セブンイレブンの値下げ対象の商品には含まれていません。しかし、今回の値下げが100円ショップやディカウントストアへの対抗策だとすれば、それらで販売されているコーヒー系飲料も、ゆくゆくは値下げの対象に含まれることになるのではないでしょうか。
そうなれば、缶コーヒーのポッカコーポレーションなども、その影響を受ける企業の1つです。そのポッカは、MBO(経営陣による企業買収)によって非上場化に踏み切りました。同じようにMBOによる非公開化を実施したのが、アパレルのワールドです。ワールドの経営陣は、非公開となることで短期的株主利益に左右されず、長期的戦略を展開できると考えたからです。健全な財務体質で優良企業のワールドの決定は、概ね好意的に評価されたようです。
競争が激化する中、シェアを落としつつあるポッカがMBOを実施する事情は、ワールドとは全く違います。 情報源は、『非上場化へポッカの凋落』(日経ビジネス 2005年9月5日号 10ページです)。
MBOに伴うポッカ株の公開買い付け価格は1株当たり690円。これまでの株価に2割以上プレミアムをつけたが、それでも1株純資産(2005年3月期末で791円)を100円も下回る。ポッカが株式市場で、いかに魅力のない銘柄として割安な水準で放置されてきたかが分かる。
伝統ある缶コーヒー事業で安定した利益を上げ、同時にレモン果汁やスープといった成長分野に資金を振り向けるという道筋を描く。その実現には資金が必要だが、株価が安すぎて新株発行による増資は事実上、不可能。加えてポッカはかねてから買収の標的とも見られてきた。このため、経営権を維持したまま資金を供給してくれる投資ファンドに避難したというのが、株式市場の一致した見方だ。
かつてポッカの缶コーヒーは、ダイドードリンコ、UCC上島珈琲と並んで3強と呼ばれていました。そのポッカも現在のシェアは3%と、昔日の面影はありません。ポッカ凋落の原因を、日経ビジネスでは次のように分析しています。
「敗因」は2つある。1つは採算を維持しやすい自動販売機の設置で出遅れたことだ。ポッカの自販機台数は約9万台で国内最大のコカ・コーラで国内最大のコカ・コーラグループの約10分の1にとどまる。
さらに、約7000億円と頭打ちの缶コーヒー市場で、味わいや香りなど品質にこだわったものの、人気タレントらを起用する競合他社との販促の力勝負に埋没した格好となった。
「品質競争より、パワーマーケティング合戦。年々、この傾向は加速している」。ポッカのある幹部社員はこう分析する。
私の予想が正しければ、いずれコンビニ側は、コーヒー飲料への仕入れ価格の引き下げを迫ってくるはずです。もしポッカがその要求を拒めば、コンビニでの扱いはなくなり、仕入れ価格の引き下げに応じれば、当然利益率は低下します。どちらを選択しても、業績への悪影響は避けられません。
ポッカのMBOに資金を提供したのは、投資ファンドです。投資ファンドの目的は投資先企業の経営を立て直し、転売により利益を得ることです。したがって、投資先企業を一体として立て直すよりも、細分化して切り売りした方が、回収できる資金が大きいと判断すれば、それを躊躇する理由はありません。
そう考えれば、ポッカのコーヒー事業だけが転売されるような展開も予想できます。既存の飲料メーカーの中で、コーヒー製品のラインナップを強化したいと考えているところが、売却先の有力候補となります。かつてコーラ製品を欲しかったサントリーが、ペプシを買収した例もありますので、まんざらありえない話ではないと思います。
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