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上場企業平均給与ランキング上位を独占するテレビ局が守旧派なのは当然

2005年11月01日

前回、厳しい競争環境にないテレビ局の人間が、非常に高い給与を貰っているのは納得できないという趣旨の投稿をしました(三木谷氏の手法に非難が集まったとしても、TBSに同情したい気持ちも起きない)。正直に言えば、テレビ局社員の好待遇に対するやっかみ半分の投稿でした。今回は単なるやっかみにならないように、もう少し突っ込んだ話にしたいと思います。

そう考えていたところ、タイミングよく今週発売の週刊ダイヤモンドに、『職業別・会社別・資格別・国内外別給料全比較』という、誌面の半分以上を費やす大特集が掲載されました。果たしてテレビ局社員の給与は、どれくらいなのでしょうか? 以下が『全上場会社対象 従業員の平均年収ランキング(p.95)』のベスト10です。


順位社名年収(万円)平均年齢
1フジテレビジョン1,56739.8
2朝日放送1,52639.5
3ミレアホールディングス1,49942.2
4日本テレビ放送網1,46239.6
5TBS1,44343.5
6スパークス・アセット・マネジメント投信1,43435.2
7電通1,38039.3
8テレビ朝日1,35841.1
9キーエンス1,33431.9
10博報堂DYホールディングス1,27947.7

フジテレビを筆頭に在京ネット4局の平均給与が、軒並みベスト10に入っています。最後発のテレビ東京でも、20位(1,135万円 平均年齢38.1歳)です。しかも社員の平均年齢もTBSを除けば、40歳以下ばかりということで、テレビ局の好待遇振りが際立っています。これにテレビ局の収入を支えている広告代理店2社(電通、博報堂DY)を加えれば、ベスト10の半分以上がテレビ業界関連企業ということになります。

これは、広告収入を基盤とした現在のテレビ業界のビジネスモデルが、いかにうまみの多い仕組みとなっているかを、端的に物語るのものです。このようなテレビ局社員の処遇について、ダイヤモンドでは次のように分析しています(p.54)。

大手テレビ局社員の年収は、会社員のなかではずば抜けている。

キー局の場合、ドラマやバラエティの制作職、報道記者など、番組制作の現場では、30歳で年収1000万円を超える社員も多い。

「タレントや構成作家のスケジュールに合わせて、深夜に打ち合わせが行なわれることもあり、毎月の時間外勤務が100時間を超える。年収が高いのは残業代が多いから」と、バラエティ番組の制作に携わる民放社員は言う。

一方、地方のテレビ局の場合、平均年収は2~3割低くなる。

視聴者からの受信料収入で成り立つ日本放送協会(NHK)と違い、民放の売り上げは番組提供料などの広告収入が大半を占める。そのため、各テレビ局は視聴率の獲得に全力を挙げる。

「視聴率が高い番組は、競合他社より高い広告料金を取れる」(民放・営業職)からで、会社の売り上げ、ひいては社員の給与に直結するからといえよう。

まあ、この説明で納得する人も少ないでしょう。テレビ局の全社員の平均給与が高い理由を、制作関連の職種の残業代の多さだけに求めるには無理があります。テレビ局とはいっても、総務、経理をはじめ一般企業と同じ仕事をしている社員も沢山います。要するに職種に関わらずベースとなる給与が高いだけの話です。

また、最近の番組の多くが外部プロダクションへのアウトソース化が進んでいます。そのようなプロダクションの社員の給与は、テレビ局社員とは比較にならないほど低額であり、また正規の残業代も支給されているのか怪しいところもあります。つまり、いまどき珍しい日本型下請け体質が根強く残っている業界の構造が、テレビ局の高収益を実現しているとも考えられそうです。

ここまで書けば、テレビ局がネットと放送との融合に消極的な理由は明らかでしょう。 テレビ局にとっては、テレビがメディアの中心であり、テレビCMがマーケティング・ミックスの中心である時代が続くことが、最も好都合なのです。テレビCM枠を多く抱える大手広告代理店にとっても、事情は全く同じです。両者が現状維持の守旧派となるのは当然です。

5月に野村総合研究所(NRI)が、『企業の広告・宣伝手法は、マスメディアから個別対応のITメディアへ~HDRユーザの過半数がテレビCM80%スキップ、今年の損失総額は約540億円に~』と題するレポートを発表しました(『Googlezon時代』で『ユビキタス』の夢よもう一度と目論む(?) 野村総研)。テレビCMの将来性に疑問を呈するこのレポートに真っ先に噛み付いたのが、大手広告代理店とテレビ局関係者でした。テレビCMの有効性を否定されることには、過敏に反応せざるをえません。

しかしテレビ局や広告代理店の社員も、HDレコーダーとネット普及がテレビCMの価値を相対的に低下させつつある現象に気づいていないわけではありません。ネットを活用したビジネスへテレビ局が乗り出す必要があることも十分に理解しています。一流大学卒の高給取りはそれほど馬鹿ではありません。

テレビ局がネットと放送の融合の必要性は理解しているとはいっても、その主導権と実行スピードに関しては、ネット企業との間に大きな隔たりがあります。現在のビジネスモデルの延命が第一とすれば、テレビ局にとっては、あくまでも自分が主導権を持った上で、できるだけゆっくりとしたスピードでの融合が理想です。したがって、ネット企業と緩やかな形での業務提携を進めることは、テレビ局も否定的ではありませんし、細かな提携はそこそこ実現しています。

それがネット企業に主導権が奪われて、スピードもコントロールできなくなる可能性が高い資本提携という話になれば、一転して拒絶されることになります。TBSも楽天の三木谷社長の手法に関して縷々文句をつけていますが、本質的にはネット企業主導で融合が進むことを避けたいだけです。極端な話をすれば、相手が楽天でなくても資本提携を迫るネット企業は、すべて拒絶されると考えるべきでしょう。

フジテレビとライブドアの場合も根本的には何の違いもありません。フジテレビが避けたかったのは、ライブドアに株を持たれて主導権を奪われることです。大騒動の末、フジテレビがライブドアの株主になるという逆の形で決着を見ました。その結果、フジテレビ側が主導権を堅持することに成功したので、現在に至るまでフジとライブドアの共同事業は目に見えた成果を上げていません。まさにフジテレビのスピードで進んでいる(進んでいない)わけです。

そう考えると、三木谷氏が株式を取得した上でTBSとの交渉に臨んだ動機は十分に理解できます。株を持っていなければ、TBS側のペースでのらりくらりとかわされるのは、目に見えています。そういう煮え切らない展開こそが、三木谷氏には我慢ならなかったのでしょう。


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