「オタク・ユビキタス時代」のオタクは、かつてのマニアの呼称が変わっただけ
2005年11月16日
野村総研が発表した『オタク市場の研究』に関する記事を書いて以来、何となく「オタク」という言葉の使われ方に注目してきました(野村総研発表『オタク市場:12分野で172万人 規模は4110億』の妥当性)。今日も、こんなタイトルの記事「技術オタクの時代」が幕を閉じる?--米調査を見つけました。
今後もIT業界で仕事を続けたいなら、優れた技術スキルを身につけるだけでは不十分だ。これからの労働者は、雇用者に新しいビジネススキルをアピールしていく必要がある--Gartner Groupのアナリストらは調査報告書のなかで、こう述べている。
ITの有効性に対して巻き起こる疑念や、オートメーションの増大、業務の海外移転などの不安要素を抱える米IT業界では今後、技術や地域の商慣習、業界プロセスに関する知識を持つだけでなく、リーダーシップをも兼ね備えた新しいタイプのIT専門家が求められるようになるだろうと、Gartner Groupのアナリストらは述べる。
IT業界の労働者は、顧客の業界に関する知識や彼らが抱える問題、直面する規制など、ビジネスの現場を理解していることをアピールする必要が出てくる。
しごく当たり前の内容です。ビジネスセンスのない技術者は、これからは生き残れないということを言っているだけです。なぜ、ここで「オタク」という言葉が出てきたのでしょうか? 念のため、原文のタイトルを見ると、"The end of the age of the techie?"となっていました。
techie をわざわざオタクと訳したわけです。techie はオタクではありませんし、単に技術に詳しい者という意味だけでしょう。もう少しネガティブな意味があって、オタクに近い言葉の nerd や geek といった言葉も、原文では使われていません。原文の意味を考えれば、「技術オタク」よりも「技術バカ」の方が、ニュアンスが正しく伝わると思います。
いくらオタクと一般人との境界線が曖昧になってきたからといって、IT業界で働く技術の専門家をオタク呼ばわりするのは誤りでしょう。オタクブームに便乗した悪乗りでしかありません。まあ、注目度の高いタイトルをつけるのも、マーケティングのテクニックのうちと考えれば、あまり堅いことを言ってもしょうがないという側面もあります。もし、養老孟司氏の『バカの壁』が売れていた頃であれば、「技術バカの壁」くらいのタイトルになっていたはずです。
このようにオタクが拡大解釈して使われる場面が増えると、まさに「オタク・ユビキタス時代」という感じがしてきて、違和感を覚えることも少なくありません。そう思っていたところ、現在のオタク現象を説明してくれる記事を発見しました。筆者は著名な社会学者というわけではありませんが、その説明は納得できるものです。 情報源は、キモオタの発祥に見るコンテンツ社会の臨界点です。
オタクとい う言葉が発祥した80年代、この言葉の語感はもっと反社会的、ではないな、どちらかと言えば脱社会的な響きを持っていた。当時同じようなカルチャー用語に「ビョーキ」があったが、双方とも社会的不適合性という意味では、同じようなものであったろう。
ただ近年、オタクによる市場経済効果を試算するなどの試みが行なわれていくに従い、「オタク」という語感の持つ脱社会的な部分が抜け落ちてしまった。
いくら言葉から脂っ気を抜いたとしても、すぐさまそれに対応して人間が変化するわけではない。冒頭にも述べたが、要するに名指ししていた層が変化しただけなのである。筆者が体感的にこの推移をまとめると、以下のようになろうか。
80年代 90年代 00年代 脱社会的
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社会的オタク オタク キモオタ マニア オタク 一般人 一般人 一般人 まず90年代に、いわゆる旧来のマニアと言われる層の行動が社会的に目立たなくなった。バブル経済の崩壊により、お金のかかる趣味に没頭する人が少なくなったということもあるだろうか。筆者の知るところでは、高級オーディオやホームシアターなどの趣味は、いったんこの時期に衰退している。マニア層を相手にしていた商売にとっては、まさに失われた10年である。
継続的に使われない言葉は、古くなる。00年代を迎えてまた趣味などを始める多少の余裕が生まれると、かつてのマニア層を総称する言葉が空白となる。どうもその部分に、「オタク」という言葉を多少ライトな感覚で当てはめていったのではないか。
00年代に入ってからの「オタク」は、以前であれば趣味人や通(つう)であることの、自嘲的なニュアンスとして成立しつつあるように感じる。
簡単に言えば、現在のオタクは昔で言うマニアを指す意味で使われているということです。 オタクの意味が変わったために、筆者はかつてのオタク(真性オタク)を表す言葉として、「キモオタ」を登場させています。
また、筆者の論点で興味深かったのは、マニアの行動が脚光を浴びるのは好況期であるという点です。確かに、90年代には趣味に没頭する余裕のある人間も少なくて、マスコミの方でもそれを題材する余裕がなかったのかもしれません。
ところで、何歳になったら趣味に没頭していても、オタク呼ばわりされなくなるのでしょうか? 2007年以降に一斉に定年を迎える団塊の世代の中には、定年後の準備として趣味に精を出す人間も増えています。そんな姿を見て叱咤激励する本が、残間里江子氏の『それでいいのか 蕎麦打ち男』です。世間に背を向けて蕎麦打ちに打ち込むのは、オタクと同じだと思うのですが。。。
なお、冒頭で紹介した『「技術オタクの時代」が幕を閉じる?』というタイトルには、あまり関心できなかった私ですが、『それでいいのか 蕎麦打ち男』のインパクトには、拍手を送りたいと思います。
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