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ソフトバンクは携帯ビジネスのチェンジ・エージェント? それともラビット?

2006年04月27日

ソフトバンクのボーダフォン日本法人に対するTOBが成立しました。新生ボーダフォンの社長には孫正義ソフトバンク社長が就任するするとともに、5月1日には本社をソフトバンク本体のある「東京汐留ビルディング」に移転する予定です。これによって名実ともにソフトバングループ企業となったボーダフォンと、グループ内の既存ブロードバンドサービスを融合する取り組みが本格化することになります。

昨年のプロ野球ビジネスへの参入に引き続き、今回の携帯ビジネスへの参入と、一般の人の間でもソフトバンクの知名度は高まり、もはや「household name」の域に達した感があります。ビジネスパーソンを対象にして実施したブランド力調査でも、ソフトバンクの順位は前年の47位から15位に急上昇しています。情報源は、『ブランド・ジャパン2006-ビジネスパーソンが選んだ総合ベスト30』(2006年4月24日 日経ビジネス 115ページ)です。


ブランド・ジャパン2006

それではソフトバンクによるボーダフォンの買収を、当のボーダフォン・ユーザはどう考えているのでしょうか? 情報源は、『携帯新ブランドに「ソフトバンクいらない」が多数派?』です。


携帯調査

現ボーダフォン・ユーザの半分近くを占める45%がポジティブに捉え、反面ネガティブに見る割合が6.5%と最も高いのもボーダフォン・ユーザになっています。当事者ゆえに、はっきりした意見が現れた結果と見て取ることができそうです。

また、48.3%のボーダフォン・ユーザが「どちらともいえない」と回答しているところも見逃せません。現状では、ソフトバンクに買収されたことで起きるであろう変化を、最も影響を受けるユーザでさえも予想できていないことになります。

ソフトバンクとしては、現ユーザが他社に流れるのを食い止めるためには、ソフトバンク・グループの一員となったメリットを明解に説明する努力が必要でしょう。それでは、ソフトバンクの携帯ビジョンが見えにくい中で、フトバンクに対して具体的にどのようなことが期待されているのでしょうか?


携帯調査

現在加入しているキャリアにかかわらず共通して期待が集まっているのは、やはり料金と端末の値下げに関わるものです。その他「通話・通信品質の向上」「端末の機能向上」に期待する割合がボーダフォン・ユーザで高いのは、それだけ現状に対して不満を感じているユーザが多いことの裏返しと考えられます。

ボーダフォン買収後は、ソフトバンクは新しいブランド名を採用することを発表しています。ユーザにブランド名の変化について尋ねると、次のような結果になりました。


携帯調査

ボーダフォン・ユーザの中で「ソフトバンクまたはその一部を含むもの」を望む回答は、わずか8%しかありません。ソフトバンク関係者は、この数字にさぞかしショックを受けたことでしょう。加えて現ユーザの4割近くが、ボーダフォンの名前を何らかの形で残すことを希望しています。

この数字を取り上げて、記事のタイトル『携帯新ブランドに「ソフトバンクいらない」が多数派?』が生まれたわけです。さらにこの結果をベースにして、ソフトバンクというブランドの問題点を指摘する派生記事も掲載されました。情報源は、『「ソフトバンクの名前いらない」を真剣に受け止めるべき』です。

ITmediaモバイルが3月に行ったアンケートの結果でも、ソフトバンク系のブランド名はアレルギーに近い反応を受けている。ユーザーの声は「新ブランドに“BB・Softbank・Yahoo!”を入れないで!」という方向性を示しており、記事では「この3つはNGワード」と評される有様だ(3月30日の記事参照)。

ソフトバンクはYahoo!Japanの創設やYahoo!BBによるブロードバンドサービスの価格破壊などで、日本のインターネットに一定の貢献もしてきたはずである。それでもなお、ユーザーから不信感を持たれるのは、Yahoo!BB開始初期のユーザーサポート体制の不備と軽視、Yahoo! BBその他で起きた一部の強引かつ品位に欠ける顧客獲得活動、そして顧客情報流出事件などを通じて、通信サービスに不可欠な「ブランドへの信頼」を育み損ねてきたからだ。

この記事のようにソフトバンク・ブランドを酷評していいものか、若干の疑問も感じます。「ボーダフォン・ブランドがなくなること」と「ソフトバンク・ブランドに変わること」は、本来区別して評価されるべきではないでしょうか? 例えば、「ボーダフォンがドコモやAUに変わった」としても、かなりの数の現ユーザは反発を覚えると想像するからです。誰しも自分が使っていたブランドが消えてしまうのは、快く思わないでしょう。

話を携帯ビジネスでソフトバンクに期待されている役割に戻します。ドコモやauのユーザの中にも、ソフトバンクが業界に与えるインパクトに注目している割合は、決して低くはありません。ソフトバンク自体は否定していますが、ユーザは料金値下げ競争に拍車がかかることに期待しているのは明らかです。

世間がソフトバンクに期待するのは、マラソンをペースメーカーとして先導する役割、すなわちラビットでしょう。ソフトバンクがレースを引っ張ってくれれば、全体の値下げのピッチも早まるとの期待です。Yahoo!BBでADSサービスの価格破壊を引き起こしたように。

しかし、今回ソフトバンクが考えているのは、単純な値下げ戦略ではないようです。情報源は、『特集-見えない値下げ 電子マネーがあおるポイントバブル』(2006年4月24日 日経ビジネス 31ページ)です。

今年11月。携帯電話業界で番号継続制が始まる。ここでボーダフォンを買収したソフトバンクが動く。系列のヤフーで決済関連事業室リーダーを務める田鎖智人氏は言う。「Yahoo!ポイントを携帯電話サービスの割引に使えるよう検討をしている」。

それだけではない。ヤフーは自社ポイントと日航のマイルとの相互交換を5月から始める。日航が「マイル2倍」で振り出したポイントが、ボーダフォンの値下げ原資となる構図だ。

同業他社が静観できるはずがない。例えばauを運営するKDDIは「他社にあって当社にないサービスはなるべく減らす」と答えた。ドコモやauは、携帯電話上で電子マネーが使える「おサイフケータイ」機能を携帯電話に搭載しており、電子マネーと馴染みが深い。他からのポイントを受け入れつつ、自らが電子マネーの発行体となって対抗する可能性もあり得る。

果たしてソフトバンクは、携帯業界全体のチェンジ・エージェント(change agent)になれるのでしょうか? それとも、どんなに先頭を走ったとしても自分は決して一番にはなれないラビット(rabbit)の役回りで終わってしまうのでしょうか? 現状としては、ラビットを予想する声の方がマジョリティという感じです。


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