梅田望夫氏がワン・アンド・オンリーと礼賛するグーグルのブランド問題
2006年10月25日
先ほどヤフーとグーグルの2006年第三4半期の決算が発表されました。かつてないほど両社の優勝劣敗が明らかになった決算と言っていいでしょう。一部にはグーグルの急成長も鈍化するとの予想もあっただけに、この結果はグーグルの底力を改めて印象づけるものになりました。情報源は、『グーグル:独り勝ち 7~9月期純益倍増 ヤフーと明暗』です。
米インターネット検索大手のグーグルが19日に発表した7~9月期決算は、純利益が前年同期比92.4%増の7億3300万ドルとほぼ倍増した。一方、ライバルの米ヤフーが前日発表した7~9月期決算は37.5%減の1億5900万ドルにとどまり、明暗を分けた。
グーグルは売上高も70.4%増の26億9000万ドルと好調。検索連動型広告(検索したキーワードに応じた広告)で先行し、広告収入が伸びた。
ヤフーは広告収入が伸び悩み、売上高も18.8%増の15億8000万ドルに終わった。提携戦略の差もグーグルの「独走」を許す要因となった。セメル会長兼最高経営責任者は「満足しておらず、改善に努める」と語り、新たな広告システムの導入を急ぐ考えを示した。
グーグルとヤフーとの差は、動画共有サイト「YouTube」がグーグルに加わったことにより、さらに広がることになるのでしょうか? しかし、爆発的な勢いでユーザ数を伸ばしていた「YouTube」も、ここにきてその勢いも若干弱含みに転換する兆候が現れてきました。情報源は、YouTubeの利用者、米で急減 日本でも横ばいにです。
ネットレイティングスが10月23日に発表した9月のネット利用者動向によると、動画共有サイト「YouTube」の利用者数が、前月と比べて米国で初めて減少し、日本でも横ばいとなっている。
利用者数(家庭からのアクセス)は、米国で1895万5000人と、8月(2298万9000人)より18%減、日本で734万3000人と、8月(731万9000人)からほぼ横ばいだった。
アクセス数の減少が日米同時に起こったのは、単なる偶然と考えるべきなのでしょうか? それとも「YouTube」が大きな転換点を迎えたと判断すべきなのでしょうか? 単なる一時的な成長の踊り場で、グーグル傘下に入った効果もあって「YouTube」のアクセス数は、翌月には反騰を見せてくれるのでしょうか? 10月のアクセス数の発表が今から楽しみです。
また、懸案であったテレビ番組の違法アップロードに関しては、「YouTube」の方でも事後的な対応には努力しています。これもグーグルに買収された影響なのでしょうか? 情報源は、日本の著作権関係23団体・事業者の要請で、YouTubeが約3万の著作権侵害ファイルを削除です。
社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)や社団法人日本映像ソフト協会(JVA)をはじめとする日本の著作権関係の23団体および事業者は10月20日、YouTubeへの要請によって動画投稿サイトYouTubeから著作権侵害ファイルが削除されたと発表した。
これは、YouTube上にテレビ番組をはじめとする膨大な量の日本の著作物が、著作権者、著作隣接権者の許諾がないままに投稿、掲載されている事態を重視し措置を講じたもの。関係権利者は10月2日から6日までの5日間を「YouTube対策強化週間」と定め、YouTubeに対し著作権侵害ファイルを削除するよう要請した。
グーグルによる「YouTube」の買収が発表されたのは、日本時間の10月10日です。したがって、日本の著作権関連者が削除を要請したのはそれ以前のことになるので、買収劇とは直接の関係はないようです。しかし、グーグルという巨大資本の一部となった「YouTube」が、今後は事後的な対応に止まらず、何らかの事前チェック機能を実装する可能性もありえるかもしれません。
ところで、『ウェブ進化論』の著者でミューズ・アソシエイツ社長の梅田望夫氏は、グーグルによる「YouTube」の買収をどのように分析しているのでしょうか? 梅田氏のインタビューが今週発売の週刊ダイヤモンドに掲載されました。情報源は、『ユーチューブ買収に見るグーグルの圧倒的優位と成熟』(週刊ダイヤモンド 2006年10月28日 141ページ)です。
――今回の買収が意味するものは。
ひと言で表現するならば、グーグルが世界の中心になったということが、ますます明らかに、揺るぎない事実となったことだ。もはや経営力+技術力+資金力において、ワン・アンド・オンリーであり、マイクロソフトやヤフーをはじめとするすべてのIT企業は、どのようにグーグルと対峙してよいか、見当さえつかないはずだ。
――100近く存在するビデオサイトのなかで、ユーチューブはなぜ抜きんでたのか。
これという理由はない。グーグルの創業者に比べれば、凡人が、ほかより早く、上手につくっただけであり、まさしくコロンブスの卵だ。ただし特筆すべき点は、ユーチューブのファンは、その多くが初めて見た時点で、他人にその存在を紹介したくなったということ。『ウェブ進化論』を上梓した2006年2月以降、唯一のサプライズがユーチューブの成功であり、変化の差分のすべてであった。
――ユーチューブの成功は、創業からわずか20ヵ月でもたらされた。参入障壁は低く、第二のユーチューブの出現もありうるのでは。
正しいときに正しいことを正しい場所で行なったユーチューブは、雪だるま式に成長を果たした。ひとたび巨大な雪だるまとなれば、グーグルすら追いつけない。それを正しく認識し、ユーチューブをたたきつぶすのではなく、のみ込もうと考えたところに、グーグル経営陣の力量を感じる。彼らは世間知らずの天才ではなかった。
グーグルのビジネス戦略を中心に、ネットの「あちら側」と「こちら側」という概念を用いてわかりやすく「web2.0」を説明したのが、大ベストセラーとなったのが『ウェブ進化論』です。元々梅田氏にはグーグルのみを礼賛する面が強いように感じたのですが、今回のコメントではさらにその傾向が顕著になっています。グーグルは唯一無二の存在と言い切っているくらいですから。
梅田氏が盤石と考えるグーグルですが、当の経営陣は買収による巨大化がもたらすマーケティング上の問題点を認識しています。情報源は、YouTube買収が浮き彫りにした「Googleのスプロール現象」です。
New York Timesの記事ではYouTubeの買収に関連して「Googleが今急務と考えている大きな課題」について報じている。Googleの製品/ブランド戦略における問題点である。記事によると,創業者のSergey Brin氏,Larry Page氏そして会長兼CEOのEric E. Schmidt氏は,同紙に次のようなことを語ったという。それは,増大し続けるGoogleのサービスがユーザーにうまく認知されていないということ。このことが今のGoogleを悩ましているという。
Googleはここ数年,目まぐるしい勢いで新サービス/機能を追加してきた。たとえば「Google Personalized Home」「Google Personalized Search」「Google Talk」「Google Desktop」といった正式版サービスに加え,研究開発サイトではベータ・サービスを次々に公開している。「Google Notebook」「Google Co-op」「Google Base」はほんの一例に過ぎず,日々こうした新サービス/機能が続々と追加される。これによって何が生じるか――。それは,ユーザーの混乱とサービス認知度の低下である。
こうしたサービスは,Googleトップページの下にぶら下がる形で紹介されている。それゆえに,それぞれのサービスは埋もれてしまい,その存在感を十分に示せない。サービス名と機能の関係がユーザーにとっては複雑で,どのサービスがどう役立つのかが分かりにくい。そのため各サービスの認知度は低く,期待するほどのアクセスがない。そのことを,Brin氏,Page氏,Schmidt氏は懸念しているという。
買収したサービスはあくまでも自社ブランドの一部として取り込むのが、これまでのグーグルのブランド戦略の基本でした。
具体的には新サービスを統合し,既存のアプリケーションの新機能として提供していく。同社はこの考えに基づいて,さまざまな方法を模索していくという。
このことは,同社がつい最近発表したサービスにも表れている。Ajaxワープロとして知られる「Writely」のGoogle化だ。Googleは今年3月,このオンライン・サービスを買収したが,これまで何ら変更を加えることなく提供してきた。
しかしこの10月11日,このWritelyを同社の表計算サービス「Google SpreadSheets」と統合し,新たに「Google Docs & SpreadSheets」として提供した。これに伴い「Writely」の名を廃止した。かつてのURL(http://www.writely.com/)も新URLにリダイレクトするようにした。
Googleは,YouTubeのサービスにおいても同様の戦略をとるつもりかもしれない。しかし,それにはリスクが伴うとNew York Timeの記事では述べている。YouTubeをGoogleブランドで提供すると,今抱えているスプロール現象を“加速”させる可能性があるからだ。
一方で,今の計画通りGoogleから独立したサービスとして提供し,それがサービスの発展につながれば,その“成功事例”をもとに,既存の Googleサービスを切り離していくということも考えられる。つまりGoogleから独立したサービスを市場にどんどん送り出していくのである。この戦略ならば,スプロール現象は解決するかもしれない。しかしそこにもリスクは残る。Googleブランドの希薄化である。
「YouTube」はこのまま独立したブランドで提供していくのでしょうか? その場合は、既存の動画共有サービス「グーグルビデオ」と、どのように併存・差別化させていくのでしょうか? それとも、将来的には「グーグルチューブ」として2つのサービスは統合されるのでしょうか? 巨大化したグーグルのブランド戦略の今後を占う上でも、「YouTube」がどう扱われるかは注目でしょう。
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ネットレイティングスが10月23日に発表した9月のネット利用者動向によると、動画共有サイト「YouTube」の利用者数が、前月と比べて米国で初めて減少し、日本でも横ばいとなっている。












