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伊藤園傘下に加わったタリーズコーヒー松田公太社長の次なる目標は?

2006年10月31日

秋の夜長のコーヒーブランド物語に引き続き、シアトル系のカフェの話題を紹介します。スターバックスに次ぐシアトル系のカフェ「タリーズコーヒー」が、緑茶飲料のマーケットリーダー「伊藤園」の出資を受けて業務提携することになりました。 情報源は、『伊藤園、「タリーズ」株36%取得――コーヒー強化、「渡りに船」』(日経流通新聞MJ 2006年10月27日 19面)です。

緑茶飲料ではシェア29%を握る最大手の伊藤園だが、品ぞろえで大手に劣る同社は「おーいお茶」や「充実野菜」シリーズなど野菜飲料に次ぐ新分野を強化することが長年の課題。とりわけ、自販機販路の構成比が高く安定収益源になりうるコーヒー飲料の強化は至上命題だった。

伊藤園は「具体的な業務提携の申し入れはこれから」(幹部)というが、「タリーズ」ブランドのチルド(冷蔵)コーヒーや豆などをコンビニなどに強い伊藤園の営業網を活用して来年にも販売する予定。両社共に事業拡大をめざす北米市場でも相乗効果を発揮できる見込み。緑茶最大手のノウハウで苦境のクーツを再建することも可能だ。

「『タリーズ』と『おーいお茶』の強者連合が誕生した」(野村証券の沖平吉康アナリスト)と市場の評価もおおむね好意的。発表から一夜明けた25日、伊藤園株は前日比90円高の3,820円で引けた。お互いにメリットを確認できれば、株式の追加取得も検討する構え。コーヒー事業の成長など真価が問われるのはこれからだ。

出遅れているコーヒー分野で有力ブランドを手に入れたい伊藤園と、資本の充実安定化を望むFXGの思惑が一致した今回の業務提携を、株式市場も好感したようです。この記事の解説のように、両社の提携はビジネス戦略上のWIN-WIN関係の構築が目的であった、と考えていいのでしょうか?

しかし、実際にはもっと複雑な事情が隠されていました。情報源は、『スクープ詳報! 伊藤園がタリーズを傘下に 経営権争奪戦の舞台裏』(週刊ダイヤモンド 2006年11月4日 14~15ページ)です。

FXGの業績は売上高120億円だが、約12億円の最終赤字に落ち込んでいる(2006年3月期)。業績が振るわないなか、事業継続のために資金調達が必要となっていた。

業績不振の原因は、「新規事業が足かせ」(関係者)となっていることだ。事業の柱であるコーヒーチェーンの「タリーズコーヒー」は03年3月期の110店舗から順調に拡大し、今では全国に約300店舗を展開している。

その一方で、緑茶中心の和風喫茶店「クーツ・グリーンティー」は4年たった今もわずか11店舗。昨年9月に始めた中華風デザートの専門店「爽好果(シャンライカ)」も2店舗にすぎない。

和風喫茶、中華デザートは、日本のタリーズコーヒーを創業した松田公太FXG社長が、多角化路線の一環として日本独自に店舗展開してきたものです。タリーズコーヒーだけであれば、本来黒字化していたはずのFXGの収益の足を引っ張っているが、これらの新規事業です。FXGが新たな資金調達を必要としているのは、この新規事業のテコ入れのためです。

資金調達は結局、SBIホールディングスの子会社が運用する投資ファンドに委ねた。今年8月末、同ファンドが第三者割当増資により17.1%を引き受け、さらに9月末にはユニカフェから株式保有分の半数に当たる約12%を譲り受けたことで、同ファンドが28.96%を保有する第2位株主に浮上した。

SBIの出資を期に、株主の動きはあわただしさを増す。9月中旬、松田公太・FXG社長は、友人である本庄周介・伊藤園常務を通じて本庄八郎・伊藤園社長に近寄り、10月13には自身が保有する株式の4%を一株1,800円で売却。さらに、エーシーキャピタルの保有するFXGの株式すべてについても、伊藤園に売却する基本合意を交わした。

先述のとおり、FXGの新規事業は振るわず、経営陣のあいだから松田社長に対し、「代表権を返上し、子会社債務を引き受けるべき」(関係者)などと、経営責任を問う声が高まっていた。

外堀が埋まっていくなかで、急浮上した伊藤園との接近。ある関係者は「松田社長は伊藤園に話をもちかけ、筆頭株主となってもらうことで、社長続投を考えていたようだ」と内情を語る。

今のところ、社長人事の行方は不透明だが、少なくとも、クーツ・グリーンティーなどの新規事業は撤退することになる。

和風喫茶事業を推進したきた松田社長は、緑茶の分野で強いブランド力を持つ伊藤園と業務提携することにより、新規事業の立て直しを期待しているような節も見られます。しかし、この記事の推測が正しければ、伊藤園以外の株主の意向によっては新規事業からの撤退する可能性も否定できません。

今から2年ほど前のFXGは株式を上場していたので、市場から自由に資金を調達することができる環境にありました。現在のように投資ファンドからの資金を頼らざるを得なくなったのは、同社が上場を廃止して非公開企業となったからです。同社が上場廃止に踏み切った理由は、2003年に遡ります。

FXGは当時、債務超過に陥っていた米タリーズと経営統合し、米ナスダック市場への上場を計画していた。

米タリーズを経営統合すれば、FXGの財務状況は悪化し、株価への影響が大きいと判断。そこで03年10月、エーシーキャピタルによるTOB(株式公開買い付け)を受け入れ、01年7月の上場からわずか2年半後の04年1月、大証ヘラクレス(旧ナスダック・ジャパン)上場を廃止した。

ところが、米タリーズとの交渉は創業者側が大詰めで、「役員会での拒否権を与えてくれなければ経営統合はできない」と主張、白紙に戻ってしまった。

結局、05年8月に米タリーズから日本での「タリーズ」商標権を20億円で取得することで合意したものの、非公開化の大義名分は消えうせた。

そもそも松田社長が米国タリーズとの経営統合を目指したのは、本社の業績不振によりタリーズというブランドが毀損することを恐れたからです。さらに日本のビジネスへの悪影響を避ける理由だけでなく、自分が心底惚れ込んだタリーズが苦境に陥っているのを見過ごせない、といった松田社長の個人的な思い入れもあったのでしょう。

米国タリーズの買収に失敗した松田社長の情熱の矛先が向かったのが、「クーツ・グリーンティー」と「爽好果」といった新規事業でした。その新規事業が撤退を噂される中、伊藤園傘下に入った松田社長はこれから何を目指していくのでしょうか?


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