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ケータイ広告を総取りした電通に突きつけられた「予想外」の問題

2006年11月28日

鳴り物入りでスタートした携帯電話の番号継続制度(MNP)の導入から、1ヶ月が経過しました。11月27日の日経新聞朝刊14面の『景気指標』によれば、利用者数は当初の予想を大きく下回り、約50万人程度となる見通しのようです。「約9,500万利用者の1割が動けば1,000万台となるだけに、端末メーカーなどは期待を膨らませたが、結果は思い通りには進んでいない」と、MNP特需を期待した関連業界にとっては、完全に肩すかしといったところでしょう。

MNP特需の恩恵を一人受けているのは、携帯3社の広告宣伝を一手に引き受けている電通です。電通の好調振りは、先ほど発表になった決算にも表れています。 情報源は、『番号継続制、笑ったのは電通――携帯各社CM「総取り」(日経産業新聞 2006年11月21日 28面)です。

「上期の連結売上高が目標の1兆円の大台を突破した」。11月16日。東京・汐留の電通本社で開かれた中間決算説明会。俣木盾夫社長は胸を張った。

9月中間期の連結業績は、売上高が前年同期比11.1%増の1兆350億円。営業利益は同16.8%増の271億円。テレビ局各社がCM広告収入の減少で軒並み苦戦し、業界2位の博報堂DYホールディングスも減収減益となるのを横目に、大幅な増収増益を達成した。

なぜ電通だけ好業績をあげられたのか。サッカーのW杯ドイツ大会の関連ビジネスが伸びたこともあるが、ソフトバンクの携帯参入と番号継続制度導入で増加している携帯の広告をほぼ総取りできたことも大きい。

もともと携帯業界では、NTTドコモとKDDIのテレビCMは電通の扱いが多い。電通とドコモは2000年に「iモード」の広告を扱う共同出資会社を設立して携帯の広告市場を切り開いた。人気CMキャラクター「ドコモダケ」のデザインには電通が参画している。

KDDIでも電通の存在感は大きい。電通本体や電通子会社で有名クリエーターを抱えるシンガタ(東京・港)がauの若年層に訴求する広告戦略を担当し、ドコモ追い上げを支えてきた。

一方、ボーダフォンは博報堂が中心だったが、ソフトバンクによる買収に伴い、ソフトバンクの広告を担当していた電通に変更。「予想外」のコピーで印象的なCMを手掛けるとともに、キャメロン・ディアスら大物芸能人との契約も決めた。

広告だけではない。電通は社名選定にアドバイスするなど、ソフトバンクモバイルの戦略立案にも参画。ソフトバンクモバイルのマーケティング・コミュニケーション統括部長には電通から栗坂達郎氏を迎えた。

ソフトバンクモバイル幹部は「新製品や新サービスの投入戦略に様々な批判もあるが、電通と組むことで消費者に強くアピールできた。その結果、番号継続制度でも他社への乗り換えを抑えることができた」とみる。

携帯3社のCMを総取りした電通は、さぞかし笑いがとまらないことでしょう、と思っていたところで、好事魔多し。3社のCMを総取りしたが故に、電通は現在コピー通りの「予想外」の問題に直面しています。

問題の端緒は、ソフトバンクの「通話0円」等の広告表現が景品表示法に違反する恐れがあるとして、KDDIは公正取引委員会に訴え出たことに始まります。これを受けた公取は、ソフトバンクの法務担当者を呼びつけ、正式に調査に乗り出しました。

法務業界では敏腕で知られるソフトバンクの法務担当者は、自社の非を認めることなく一挙に大反撃に打って出たのです。情報源は、『KDDIが火をつけ公取があおったソフトバンク広告騒動の舞台裏』(週刊ダイヤモンド 2006年12月2日 14~15ページ)です。

ソフトバンク側は、待っていました、とばかりに大量の資料とともに公取に乗り込んだ。画面付きのポータブルDVDプレーヤーを持参し、各社のテレビ広告を公取の担当者に見せ、一時停止をしながら問題点を解説するほどの熱の入れようだった。

ソフトバンクが表現に問題があると主張した他社の広告はNTTドコモの「ファミ割ワイド」「2ヶ月くりこし」、auの「My割」「無期限くりこし」、ウィルコムの「ウィルコム定額プラン」など、主力割引商品のほぼすべて。ソフトバンクは自社の問題だけでなく、「業界全体の広告表示の問題として取り組んでほしい」と要望した。

ちなみに、ウィルコムはそもそも番号ポータビリティに参加していない。完全にとばっちりを受けた格好だ。

ソフトバンクの主張に効果があったのか、うわさされていた措置はその後も発表されていない(11月22日現在)。それどころか、公取は他社の調査も始めた。17日までに携帯電話・PHS各社の担当者を呼びつけ、事情を聴取している。このやりとりに関係したある通信会社の幹部は「公取は業界全体の問題として進めようとしているフシがある」と漏らす。

さらにソフトバンクの怒りの矛先は、携帯の広告を制作した広告代理店にも向かいます。

ソフトバンクの反撃は通信業界に対してだけではない。じつは、携帯・PHS各社の広告はすべて同じ大手広告代理店によって製作されている。広告代理店各社には消費者に誤解を与えないための表現上の基準があるという。

ソフトバンクのある幹部は、「代理店が提案した内容にイエスと言っただけ。同じ代理店の基準に従って作られた広告なのになぜうちだけが悪者なのか」と憤る。ソフトバンク側の強い意向で代理店担当者も公取に出向いて、説明をしている。

「権力によるソフトバンクいじめ」ではないとかという同社の主張は、筋が通っています。余勢を駆って、ソフトバンクは広告を掲載した新聞社の責任も追及します。

また、新聞各社に対しても「自社の広告掲載基準を通しておいて、当社を責める報道をするとはいかがなものか」と矛先を向ける。問題になった広告の初回の出稿時には訂正の指示はなかった。

しかし、公取の調査が明るみに出て以降、ソフトバンクが新聞社に提出した広告の原案には前回にはなかった大量の訂正指示があったという。つまり「チェック機能は働いている。掲載の言い逃れはできない」。

今後、公取からなんらかの措置がなされた場合、広告代理店や新聞社に対して、損害賠償請求をする可能性もあるとこの幹部は語る。

この中で一番言い逃れできないのが電通です。なにしろ日本国内の携帯の広告を制作しているは電通1社でけなのですから、携帯広告の表現基準イコール電通の基準ということになります。同社にとっては頭の痛い話でしょう。

問題点が業界全体の広告倫理の話にまで波及したため、言い出しっぺのKDDIまでもが、いまや騒ぎがこれ以上拡大することを望まなくなったようです。

公取の調査には期限がないため、いつ判断が下されるかはわからない。なかには長期間放置されるものもある。ある通信会社幹部はこう漏らした。「すべての関係者が、このままうやむやになるのを望んでいるのではないだろうか」。

おそまつな話です。よく考えると、携帯電話業界をあげての「番号継続制度(MNP)まつり」に踊らされなかった一般消費者は、案外賢いのかもしれません。


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