ビジネス書にみるタイトル・マーケティング
2004年04月20日
ターゲット・マーケティングという言葉を持ち出すまでもなく、書籍のタイトルにも、明確に対象者を織り込んだネーミングが多くなってきた。
しかし、この組み合わせを間違えると、かえって訴求テーマが曖昧になり、逆効果になることもある。
今後はタイトルの占める役割がますます重要になるはず。その背景には、インターネットでの書籍注文の普及がもたらす、購買行動の変化がある。
1)インターネットでは、タイトルでしか書籍を選べない
書店では、装丁や本文の文字の大きさなどにもこだわるが、インターネットでは分からない。必然的にタイトルの持つ影響度が高くなる。
2)インターネットでは、ストレートなタイトルがものをいう
書店では、少なからず他人の視線を意識するものだが、インターネットでは見栄を張らずに自分の欲しい本を堂々と注文できる。例えば、「サルでも〇〇できる」「いまさら人に聞けない〇〇」のようなタイトルも、人目を忍ぶ必要はない。
インターネットで目立つために、タイトルもますます過激化するはずだ。
ニッポンの課長 重松 清 (著) 日経BP社極めてオーソドックスなタイトル。直木賞作家の重松清が初めて挑むビジネス系のノンフィクション。『日経ビジネスアソシエ』に連載にしていたものを、加筆して単行本化したものなので、ある程度の売り上げが見込める強みがある。そのため、装丁も著者の名刺の写真を見せるだけのシンプル主義で、奇をてらう必要のない王道路線。「日本」ではなく、「ニッポン」としたところが、「ガンバレニッポン」が連想され、世の課長職に対する応援歌になっているような感じもする。
課長の会計道 千代田 邦夫 (著) 中央経済社キャッチコピーには、「リストラの最前線であえぐ多くの課長に、生き残るための最善策として会計を身に付けることを説く」とある。
著者は大学教授で会計学の専門家であるが、なぜ会計に「道」をつけたのかの理由が、判然としない。ラストサムライ以降の「武士道」(新渡戸稲造著)ブームに便乗しようと考えたのかもしれないが、その効果はほとんどのないと思う。「上司を見返せ」の真っ赤な帯も、内容とマッチしているとは言いがたい。
女子大生会計士の事件簿3 山田 真哉 (著) 英治出とっつきにくい会計のイメージを払拭するのに成功した好例。シリーズ3作目となる本書も、快調に販売を伸ばしている。その秘密は、平易な内容もさることながら、タイトルの秀逸さにある。「女子大生」、「会計士」、「事件簿」の組み合わせに意外性があり、思わず手にとってみたくなる誘惑に駆られる。これが「新人会計士の奮戦記」あたりの平板なタイトルだと、ここまで売れなかったはずだ。
金児昭のやさしい会計実学 社長!1円の利益が大切です 金児 昭 (著) 中経出版一部上場企業での財務会計の実務経験を持つ著者が、自らの実例の基づき、経営者に対して、現場発想の会計の大切さを説くもの。ターゲットに直接的に呼びかける、現場感のある「実学」「1円の利益」といったフレーズを盛り込み、ストレートに訴えかける力強さがある。
鋭い頭を持った、世界で通用するMBA的課長術 斎藤 広達 (著) WISH BOOKS著者には「MBA的発想人」、「MBA仕事術―あなたを人生の勝者にする!」の既著があり、それなりに売れたのではないか。今回はMBAと課長の取り合わせが不自然に思え、ネタが尽きた苦しさを感じる。「MBA的発想人を改題、大幅加筆」というのも、焼き直し感が否めない。そもそもMBA取得を志す者は、日本的な中間管理職の象徴である課長程度を目標にはしない。「鋭い頭を持った」というフレーズにも疑問。簡単にMBAを疑似体験したいと願う読者心理を狙うとすれば、「鋭い頭になれる」とすべき。
MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術 くらた まなぶ (著) 日本経済新聞社上で紹介した本と、ガップリ四つに組んだタイトル。所詮座学にすぎないMBAを真っ向否定し、リクルート社で数々の雑誌を創刊した自身の実績で全面的勝負の意気込みは伝わる。なぜ、著者名がひらがな表記でなければならないかは不明。
中高年のための携帯電話ABC 法林 岳之 (著) 日本放送出版協会4月から始まったNHK趣味悠々の番組テキスト。番組の内容を調べたところ、携帯電話を使ったことのないお年寄りを対象にしているようだ。率直に言って、この本と番組のタイトルは、放送内容を正確に表わしてはいない。「中高年のため」ではなく、「初めての携帯電話ABC」もしくは「携帯電話入門」とすべき。ターゲットとすべきマーケットが小さくなることをおそれて、中高年としたしたのであろう。今回のように明らかに誤解されるようなタイトルは、信頼性をそこなう。
その他、ブランド名となった著者名を、全面的に打ち出した本もある。表紙、帯にも当然のように著者の近影が入る。ひとたびブランドとして確立できれば、タイトルにあえてひねりを加える必要もないということ。






