成果主義は虚妄か?「UP or OUT」
2004年05月08日
企業の人事処遇制度改革の柱であった成果主義を見直す動きが出できた。
虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ: 高橋 伸夫 (著)揺れるトップ、悩める人事、落ち込む一般社員におくる、学問的立場から初の「成果主義」粉砕の書。経営学・経営組織論を専門とする東大教授が、企業現場でのエピソードもまじえつつ、「成果主義」の無惨で愚かしい正体を解き明かす。
成果主義見直しの動きの背景には、企業業績の回復があることは間違いない。 今回の業績回復は、雇用の増加を伴わない、いわゆる Jobless Recovery の側面が大きいので、社員の閉塞感の方はいっこうに改善しない。リストラで職を失わずにすんだ社員の疲弊感が、むしろ強まる傾向にある。
過半数の企業で 「質、量ともに負担が増大」 【Intelligence】
5年前と比べて若手社員の「仕事量が増えた」「仕事の範囲が拡がった」「仕事の内容が高度化した」と答えた企業がいずれも過半数に上った。これらは昨今のリストラの進展によって社員数を押さえ込む一方、企業として収益をあげるための仕事の全体量が変わらない中、必然的に生じたことといえる。(中略 )
このような状況下、若手社員の会社への帰属意識は低下傾向にあるようだ。5年前と比べて「やや低下した」「低くなった」とする企業がやはり半数近くあり、一方で「高まった」とする企業はごくわずかしかない。
そのため企業の側では、処遇制度の見直しや、モラール(士気)の維持・向上、キャリアプランの明確化を今後の課題として考えているという。社員が企業を見る目も厳しくなっているのだ。
このような企業と社員の緊張関係は、終身雇用制度と手厚い福利厚生といった「御恩と奉公」のようなかつての会社組織を知る人には信じられないかもしれない。
果たして、これから日本企業では、脱・成果主義の方向に軌道修正が起こるのか。
究極の成果主義が導入されている、外資系の戦略コンサルティング会社の場合は、どうなのだろうか。
外資系の戦略系コンサルティング会社では、概ね次のようなキャリアパスが用意されている。勿論、会社によっては、実際の呼称が違うところや、さらに階層が細分化されているところもある。
↓
コンサルタント
↓
シニア・コンサルタント
↓
パートナー
各々の階層には最長滞留年数があらかじめ決められている。その年数以内に次の階層に昇格できなければ、退社することになる。この際、年数を延長することは、原則として許されない。
この原則を表すのが、「UP=昇格 or(さもなくば) OUT=退社」だ。
勝者には厚い処遇が約束されているコンサルタント会社では、この完全成果主義に表立って異を唱える者はいない。元々、他社から引く手あまたの優秀な人材が多いので、「OUT」となっても、それほど悲観的な雰囲気はない。
実際、他の企業に移った者がそこで才能を開花させて、元のコンサルティング会社をクライアントとして利用するといった逸話も稀ではないくらいだ。
この違いは、どこからくるのであろうか。
それは、社員が入社以前に自社の処遇制度をどこまでハッキリと理解しているかによる。
一番困るのが、途中で制度が変更になることだ。
外資系コンサルティング会社の場合は、最初からハイリスク・ハイリターンの成果主義を理解した上で、入社するので、解雇になったとしても不満を漏らす社員は少ない。退社後も、かつての職場の不平不満を述べることは、むしろ「負け犬の遠吠え」と見られかねず、自分のキャリア上は、決して有利には働かないと割り切って考える。
一方、日本の大企業の場合は、リスクもリターンも中くらいのつもりで入社したのに、途中でゲームのルールが変更になっては、ついていけない社員が出るのもやむをえないといえよう。
今後は、成果主義の見直しの風潮の中で、どのような変化が起きるのか注目されるところだ。いったん成果主義の目指した以上、もはや引き返すことは不可能ではないだろうか。
完全成果主義を標榜したベンチャー企業が、成長とともに成果主義の度合いをゆるめると、不満に感じる社員も登場するはずだ。舵取りを間違えれば、逆方向の問題が顕在化する危険性もないとはいえない。
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