個人情報保護法とマーケティング・リサーチ
2004年05月18日
来年4月には個人情報保護法が完全実施されることになる。しかし、この法律が対象とする個人情報の範囲に曖昧なところもあり、積極的な対策を打ち出している企業は少ないようだ。
そこで経済産業省では、同法の曖昧さを補い、対象事業者側の取り組みを促進することを目的に、施行ガイドラインを作成することにした。検討中のガイドラインによれば、顧客データを保有する、ほとんどすべての販売業者が対象となるようで、その影響は当初予想以上に大きいものになりそうだ。
詳細を報じる、日経流通新聞の記事を紹介する。
経産省、個人情報保護へ指針――事業者向け来月中にも、利用目的明確に説明 【2004年5月15日 日経流通新聞MJ 2面】
経済産業省は通信販売など所管する民間事業者を対象とした個人情報保護のための指針(ガイドライン)を来月中にも作成する。個人情報保護法ではあいまいな表現にとどまる個人情報の定義や、利用目的などを具体的な事例を挙げて解説する。ソフトバンクや日本信販などデータ流出事件が相次ぐなか、業者による情報の管理・運用を厳密に定めることで、消費者の信頼性を高める狙いもある。(中略)
ガイドラインで、個人情報は氏名や住所、電話番号のほか、電子メールのアドレスを指すと明記する見込み。
「個人情報の利用目的の特定」の項目では、企業や業界団体などが個人情報を収集する際、使用する目的を当人に具体的に伝えることを求める。例えば「顧客サービスの向上に役立てる」や「事業活動のため」などといった抽象的な表示は認めないとしている。
収集目的がアンケートであった場合、ダイレクトメール(DM)の送付などはできない。ただ、今後、DMを希望するか否かなど確認をするための書簡の送付はできるとしている。
ほかにも、事業者が保有する個人情報の開示を求められた場合に開示しなければならない事例や、情報をどのような状態で保存すれば良いかなどの事例を紹介する。
このガイドラインには、企業側にとってかなり厳しい内容が盛り込まれそうだ。
顧客データの管理体制の整備や従業員の教育コストを考えると、どの企業でもかなりの投資が求められることになろう。
当然、管理すべき顧客データが多い企業ほど、費用負担は重くなる。
企業の製品開発と販売促進等のマーケティング活動に必要な情報は、ターゲット顧客に対するアンケート調査に頼っている部分が多いのが現状だ。今回のガイドラインによれば、法律施行後はDMを送付して、手軽にアンケートを実施することはできなくなるようだ。
今後は、アンケート協力者の個人情報保護に関わる管理コストのアップを嫌う、規模の小さな販売業者の中には、調査業務を信頼のおける外部の専門業者にアウトソースするところも増えるのではないだろうか。
しかし、市場調査を専門とするリサーチ業界の方も、個人情報保護法の完全施行に向けて、準備万端とはいかないようだ。次に紹介するのは「宣伝会議」6月号の関連記事。
個人情報保護法の完全実施施行が1年後(2005年4月1日実施)に迫り、市場調査業界では、次第に緊張感が高まってきている。この個人情報保護法は特別に市場調査業界に限って適用されるということではないが、市場調査データの収集段階では調査対象者から直接個人情報を提供してもらうことの多い調査業界にとって見れば、その個人情報の取扱い・管理については特に緊張感をもって対応しなくてはならない。
個人情報管理はリサーチ会社の生命線なので、業界全体の緊張感が高まるのも当然だ。よく言われるように、業界全体に影響を及ぼす外部環境の変化は、脅威であると同時に、ビジネス・チャンスにもなる。明解な個人情報保護ポリシーを掲げる調査会社に業務は集中し、それのできない会社は淘汰されることになる。
最後は、個人情報保護意識の変化が一般消費者のネット利用に及ぼす影響。
関連情報は、【日本総研のJapan Research Review5月号】「個人情報保護の在り方と取り組むべき課題」から。
<消費者の個人情報保護に対する意識の現状>
実際、インターネットを利用するにあたってプライバシーの保護に不安を感じる者の割合が高い(総務省「通信利用動向調査」の調査結果では54.1%)にもかかわらず、氏名、住所、年齢、メールアドレス、電話番号等の個人情報を、ホームページ運営者に求められるがままに無防備に記入しているユーザーが少なくない。NRI セキュアテクノロジーズが実施した「個人情報保護に関する消費者意識調査2003 」(2003年7月)によれば、9割以上のユーザーがウェブサイトに住所や氏名など自身の情報を入力した経験を持つ。さらに、趣味や嗜好・生活習慣などについて入力した経験を持つ者の割合は84.6 %、家族構成や家族の氏名についても66.2%に達する。
最近頻発している個人情報の流出事件の影響もあり、消費者側もこれまでよりは自分の個人情報の管理に注意を払うようになるはずだ。
ネットのアンケートでも、安易に自分の情報を記入することの危険性に気づき始めている。自分が信頼するところからの調査依頼しか回答しない人も増えるだろう。消費者の調査会社を選別する目も厳しくなるに違いない。
ネットの普及により、手軽にアンケートを実施できる時代になった。インターネット専門の調査会社も多数誕生している。また、歴史のある調査会社もインターネット調査に軸足を移しつつある。前者の代表例がマクロミルで、後者が矢野経済研究所。
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マクロミル社は、本年1月東証マザーズに上場。
セグメント毎にきめ細かく対象を募集。
「男性のみ」の募集。
1958年設立の独立系市場調査会社の老舗
矢野経済研究所によるネット・リサーチ。
この2社はリサーチが本業であるだけに、個人情報管理に万全だと思う。一般企業もネットを利用した懸賞募集の形をとりながら、色々なアンケートを実施している。個人的には、そういった懸賞を狙うよりは、リサーチ会社のアンケートにこまめに答えるほうが、小遣い稼ぎとして得策だし、個人情報流失の危険性も少ないと思う。かくいう私も、懸賞は色々試してみたが、ほとんど当たらなかった。いまは地道にアンケートに回答するのを日課にしている。特にマクロミルは、最低換金ポイントが少なくてすむので、私のような小銭ハンター向きだ。
【宣伝会議 2004年6月号 p.160】
