フリーター全面否定を超えて(ソフト産業の担い手として期待)
2004年06月09日
今週発売の東洋経済に、現在問題となりつつあるフリーターを、日本の非ITソフト産業の担い手として、積極的に活用すべきと提案する記事がありました。 筆者は、マネジメント・コンサルティング会社、ボストンコンサルティンググループ(BCG)のヴァイス・プレジデントの御立尚資(みたちたかし)氏です。
以下に、筆者の論点を要約します。
日本製のアニメ、ゲーム、トレンディドラマなどは、われわれが想像する以上に日本の高感度UPに貢献している。
日本でもこのような文化的影響力拡大の重要性が、認識されるようになり、ソフト産業強化策も打たれ始めた。しかし、現在の主流である、著作権保護の強化策だけでは、映画、アニメ、音楽、キャラクターといった、非ITソフト産業を振興していくには、不十分。
これからの日本の非ITソフト産業強化の重点は、著作権保護から、ソフトを想像し、商業的に成功させる人的資源の強化、拡大にシフトしていかねばならない。そのための必要条件となるのが、豊かなホームマーケットと目の肥えた消費者の存在。生まれた時からモノが十分にある時代を過ごしてきた、ライフスタイルを持つ団塊ジュニアの存在は、この条件を満足する。
十分条件は、とがったクリエーター(作り手)と優れたプロデューサーを輩出すること。 残念ながら、現在の日本の社会システムや企業の人事システムでは、多数のクリエーターを育てることには、適してはいない。 プロデューサー、特に日本のコンテンツを海外に展開できるような能力を持った、プロデューサーも絶対数が不足している。そこで、注目すべきは、現在400万人を超えるともいわれている、フリーターの存在。 日本社会では、このフリーターをネガティブにとらえる風潮が強いが、彼らこそ、日本の非ITソフト産業の未来を担う貴重な人材になる可能性は高い。
クリエーティブな人材を増やし、強化するには、「よいフリーター」と「悪いフリーター」を峻別し、社会全体が「よいフリーター」をポジティブに認識した上で、様々な不利益を解消していくことが必要。好きなことをやりたいというフリーターに、目標達成に向けた強力な意志を持たせるカギは、「あこがれ」を作り出すことである。
例えば、企業、非営利団体、ネットコミュニティなどで、優秀なクリエーターを認知して表彰する「アワード」も有効な手段の一つ。
さらに、企業の人事報酬システムの変革も不可欠。雇用形態にかかわらず、貢献に応じた十分な報償が得られる仕組みを導入する必要がある。国際的な視野を持った人材の育成のためには、プロデューサー候補に語学と海外マーケティングを教える教育機関の設立や、海外留学フェローシップ制度の導入などが有効となる。もともと感性とビジネス感覚に優れた、プロデューサー型人材は、海外体験の機会さえ与えれば、自分自身で「海外勘」を磨くことができるはずだ。
最近はマスコミでも、若者が正社員として就労しない/できない、いわゆるフリーターの問題を取り上げられることが多くなりました。これまでは、若者自身の将来的な不安など、その論調は基本的にフリーターの存在を否定的にとらえるものが主流でした。その中で、フリーターを全面的に否定せずに、むしろその長所を活かしていこうという提言をのべる、この東洋経済の記事は、極めてユニークな発想に基づくものです。
筆者の御立氏は、クリエイティビティの溢れた若者は、単に既存の社会システムに適合できない/しない結果として、フリーターとなっているのに過ぎないと考えます。むしろ、社会システムの方が歩み寄りを見せれば、彼らの長所を非ITソフト産業の振興に活用できる可能性は高いとの主張です。
確かに豊かな時代に育った若者の感性を活かすには、ソフト産業が格好の舞台になることもあるでしょう。しかし、すべてのフリーターが、才能に恵まれているわけではありませんし、その素養を実際に開花させるためには、ある程度の努力も必要でしょう。
また、才能がなければ、努力だけでは成功できないのが、ソフト産業の現実です。重要なのは、本当に才能とやる気もあるのに、埋もれている若者をどうやって発掘していくかではないでしょうか。その点を、筆者は「よいフリーター」、「悪いフリーター」と、あまりに簡単に扱っているように感じます。 いかにして「よいフリーター」を選別していくかの、方法論にも触れて欲しいところです。
とはいえ、本記事のフリーターを前向きのとらえようとする姿勢は、注目に値することは間違いありません。
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週刊東洋経済 2004年6月12日号
就職がこわい
