ソフトバンク孫氏のビジネス戦略、次に一手はいかに?
2004年06月11日
ソフトバンクがリップルウッド・ホールディングスが保有する日本テレコムの株式を取得することが発表されました。これにより、日本テレコムが筆頭株主である、イー・アクセスの立場も微妙なものになります。ソフトバンクとイー・アクセスは、ADSL事業では競争相手です。両社の争いは熾烈を極め、かつてソフトバンクBBがイー・アクセスを、損害賠償請求で訴えた事件もありました。結局は、ソフトバンク側が訴えを取り下げるという、結末に終わりましたが(ソフトバンクBB、イー・アクセス取締役に対する訴訟を取下げ)。
今後の2社の関係について語る、両社長のインタービュー記事が、相次いで掲載されました。かなり温度差の感じられる内容となっていて面白いものです。まずは、買収側のソフトバンク孫正義社長のコメントからご紹介します。
『100年に一度のチャンス、今は楽しくてしょうがない』
2004年6月12日 週刊ダイヤモンド 16-7ページ
(質問)今回の買収で、イー・アクセスの実質筆頭株主になったが、同社とは過去にADSLに絡んで訴訟になった経緯があるが?
(孫)これをきっかけに仲よくできるとといいなと思う。また、お互い切磋琢磨すべきところはする。それは是々非々でやっていきたい。
(質問)第三世代携帯電話でソフトバンクとイー・アクセスが組むと、新規参入の可能性が高くなるとの下馬評があるが?
(孫)あまり具体的なことはコメントできない。
買収した方の孫社長は、両社のコラボレーションの可能性について、ある程度の期待は見せているようです。
一方、買収される側のイー・アクセスの千本倖生社長の考えは、どうでしょうか?
『イー・アクセス千本社長に聞く――ソフトバンクが事実上の筆頭株主に』
2004年06月11日 日経産業新聞 5面
(質問)事実上の筆頭株主が移動するが、経営への影響は?
(千本)「日本テレコムの筆頭株主は、現段階では米リップルウッド・ホールディングスだ。ソフトバンクが実際に株式を取得するまでは分からない。予定日の十一月まで、まだ半年も残っている」
(質問ソフトバンクとの今後の関係は?
(千本)株式を取得すれば大事な株主となるが、他の株主も同様だ。連携は是々非々だが、移動体通信とADSL事業については基本的に戦うことになる。お互いにメリットを出し合える分野があれば協調したいが、ADSL事業でいえば九割は競争することになるだろう。
(質問)第三世代移動通信の周波数獲得のため、ソフトバンクと戦略的に連携する考えは?
(千本)そんな戦略は考えていない。次世代の移動体通信は、今後の事業展開の重要な柱だ。時間もかけ準備にも奔走してきた。国内の携帯電話市場は約七兆円をほぼ三社で分け合う寡占状態だ。参入の余地は必ずある。
千本社長のトーンは、にべもないという感じです。明らかに今回親会社がソフトバンクに買収されたことに当惑している様子がうかがわれます。正確にいえば、当惑というよりも、迷惑というところでしょう。感覚からすれば、ライバル企業から敵対的買収をしかけられた心境というところではないでしょうか。
しかし、ソフトバンクの狙いは、あくまでも日本テレコムの顧客にあります。その背景を週刊東洋経済の記事の中で、孫社長が明言しています。
『1000万顧客が最大の価値』
2004年6月12日 週刊東洋経済 18-9ページ
いちばんの狙いは法人と個人で600万人の顧客ベース。ヤフーBBと併せて1000万となる。クリティカルマス(臨界量)はそろった。それだけの面を取れば、いろいろな付加サービスを乗せられる。もう少ししたら、「なるほどこんなことがやりたかったんだな」と具体的に実感してもらえる。
要するに孫さんにしてみれば、イー・アクセスは、おまけでついてきただけかもしれません。現在のADSL事業を考えても、ヤフーBBとイー・アクセスは異なる接続方式を採用しているため、単純なシナジー効果は、あまり期待できないことは間違いありません。また、ビジネス路線の方向性に関しても、パラソル隊で超積極的拡大策をとるヤフーと、堅実成長を志向するイー・アクセスとは、水と油の違いがあります。簡単には、融合できません。
それでは、もしイー・アクセスにあまり価値がないと、孫さんが判断したらどうなるのでしょうか。米国流合理的マネージメントにしたがえば、つぶしてしまうことも選択肢の1つでしょう。このまま、放っておいて競争相手の手に渡るのは、絶対避けたいはずです。米国では、競争相手をつぶすことを目的に、買収をしかけることもあるくらいですから(オラクルによるピープルソフトの買収)。
今後、孫氏がどんなビジネス戦略を打ち出してくるか、まだまだ興味の種はつきません。
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【関係ありそうな投稿】
【関係ある本】ソフトバンクのビジネス戦略に関する最新刊
ソフトバンクの3年後を読む!―孫正義は何を見据えているか
八木 勤 (著)
孫正義が描くビションとは? ソフトバンクの近未来戦略の全貌にせまる!日本、そして世界のブロードバンド事業の雄となったソフトバンクとは一体どんな企業なのか、今後どのような戦略で発展させようとしているかを、創業者である孫正義社長を中心とした関係者への綿密な取材をベースに、著者の「デジタル産業革命」という論点から、考察を加えてまとめた。2004年3月期の決算数字など、最新の情報が満載されており、業界関係者はもとより、今後のビジネスの潮流を学ぶという意味でも、すべての産業人に役立つ、刺激的な内容。
【関係ありそうな本】単なる語呂合わせ
孫子とビジネス戦略―成功し続けるリーダー、企業は何を考えているのか守屋 淳 (著)
「戦わずして勝つ」「敗けない戦略」の極意とは。
多くの経営者たちの愛読書となり、数々の成功の礎となってきた孫子。
「血の流れない戦争」とも評されるビジネス場面に焦点を当て、孫子の戦略・効用を事例で紹介。


コメント
はじめまして、こんにちは、
「孫子とビジネス戦略」を読み終わって、ぐぐっていたらここに来ました。ちなみに、本書において孫さんと孫子(いや、言葉遊びみたいですが...)がどれくらい関係深いかちゃんと語られています。「孫の二乗の兵法」というのも本書で初めて知りました。
Posted by: ひでき | 2005年10月10日 16:57