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RFIDはリテール・マーケティングに革命をもたらすか?

2004年06月21日

日本でも、次世代のマーケティング・テクノロジとして、RFID(ICタグと呼ばれる場合も)の話題が、頻繁に紙面をにぎわすようになりました。
米国では、ウォールマートが本格的な実証実験を開始したことを、日経RFIDテクノロジが報告していいます。(米ウォルマートが無線ICタグ利用を拡大,2006年1月に納入業者トップ300社と

米ウォルマート・ストアーズは6月17日、2005年1月から本格導入する無線ICタグの適用をさらに広げる計画を発表した。2005年1月の導入は納入業者トップ100社と始めるが、これを2006年1月にトップ300社に広げる。

ウォルマートは2004年4月、納入業者8社と21品目を対象に無線ICタグの先行導入を開始した。場所は、テキサス州北部の物流センターと7カ所の店舗である。このテキサスを拠点に2005年1月には、納入業者トップ100社と自発的にタグ導入を表明した37社が参加する予定である。

果たして、今回の実験の具体的な目的は何なのでしょうか?これに加わる納入業者には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
この実験の背景を詳しく述べた、ウォートン・ビジネススクールの最新のマーケティング記事 Will RFID Spark the Next Revolution in Retailing? をご紹介します。

以下に本記事の概要を記します。

米国でRFIDの導入に最も積極的なウォールマートは、上位100社の製品納入業者に対して、全ての梱包パッケージと搬送用パレットのRFIDをつけることを、義務付けた。

本年4月30日には、先行する大手メーカー8社と、ダラス地区で実証実験をすでに開始していることも発表した。参加している8社は、ジレット、HP、ジョンソン&ジョンソン、キンバリー・クラーク(クリネックス・ティシュの製造元)、ネッスル、ピュリナ・ペットケア、P&G、ユニリーバ。
これらの8社からの21品目がウォールマートの物流センターに集められ、7箇所のスーパーセンターと呼ばれる、店舗に出荷されている。
5月18日の段階では、全て順調に推移していることが報告された。

2005年当初までにウォールマートが実現したいと考えているシナリオは、次のようなもの。

  1. 納入業者から物流センターへの出荷状況が、瞬時に把握できる。
  2. 物流センターでは、梱包パッケージのRFIDから製品内容が読み取れるので、開梱して検品する手間がなくなる。
  3. 店舗では、リアルタイムで入出庫状況が把握できるので、実物在庫の棚卸の必要がなくなる。
  4. 商品が売り切れになると、自動的に補充のメッセージを発して、バックヤードから迅速な補充ができるようになる。
  5. さらに、流通センターの在庫量が一定レベルを下回ると、自動的に情報が納入業者へ送られる。

このように将来性が期待されるRFIDだが、本格普及に向けて解決すべき課題もある。

1番目は、コストの問題。
現状では、1タグあたりのコストは、20セントから1ドル。本格普及のためには、これが5セント程度まで下がることが必要。しかし、コストと普及度合いは、鶏と卵の関係といえる。タグが安くなれば普及速度が速まるし、逆に普及が進めばタグももっと安くなる。
RFIDタグのコストが、新しいシステムの導入費用全体の80%程度を占めるので、タグのコストは極めて重要な問題と考えるべきである。

2番目は、製品仕様が未定であること。
今回ウォールマートが商品供給先に義務づけているのは、"Class 0"(タグ出荷時のみのプログラム書き換えが可能)、もしくは、"Class 1"(これに加えて、店舗側でも書き換え可能)のRFID。
さらにRFIDには、記憶容量を増強した仕様の"Class 2"もある。
このような現状を反映して、ウォールマートが指定する仕様がすぐに陳腐化する危険性をおそれて、今回の実験への参加を見送る納入業者も少なくないようだ。

RFIDそのものは、データ収集のツールにすぎない。重要なのは、収集した情報からいかに必要なものだけを抽出するかの、データ管理の方だ。そして、データが、サプライチェーン・マネジメント・システム(SCM)の中に一体的に組み入れられてこそ、その真価が発揮されるものだ。

結論としては、今回のウォールマートの実験への参加を要請されている会社は、短期的にはあまり大きな期待をせずに参加すべきだろう。RFIDのコストは、ウォールマートとのビジネス継続のための費用と割り切るべきだ。この実験はウォールマートにとっては大きなメリットになるかもしれないが、参加するメーカーにとってのメリットになるとは考えにくい。

もし、参加する場合でも、先頭ランナーになると、色々と面倒な問題を抱え込むことになる。RFIDの信号は液体や金属を通らない、冷凍食品にはRFIDを付けるのが難しい、などの現在の技術では解決できない問題もある。ウォールマートの方は、あくまでも今回の実験で、解読率100%を目指している。したがって、これらの問題を解決する役割は、先頭を走る納入業者となる。もっとも賢いのは、2番手あたりに位置して、問題の解決を先行する他社に任せるやり方だろう。とはいえ、RFIDが将来的な発展性の高い技術であることは、間違いないことなので、早めに参加しておくことにより学習できるものも大きいはずだ。

この記事を読む限り、鳴り物入りでスタートしたウォールマートの実験も、自社内のサプライチェーン・マネージメントが構築できる、一部の大手企業を除いては、その恩恵にあずかれるわけではないようです。米国で流通主導で、こういう実験ができるのは、流通チャネルがシンプルだからでしょう。

日本でも様々なところで、実証実験が計画されています。短期的なメリットは、必ずしも期待できないようなところもありますので、米国同様に様子見を決め込んでいるところもあるのではないでしょうか。率直に言って、現時点で確実に儲かるのは、RFIDの製造メーカーと関連システムメーカーしかないはずです。 しかし、ウォールマートのような米国の小売業者へ納入している、日本のメーカーも、RFIDをつけなければビジネスが維持できなくなる日が、くるのかもしれません。そう考えると、少なくとも技術動向を常にウォッチしていくことは、マーケティング戦略上当然必要でしょう。


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【関係ありそうな過去の投稿】

【関係ありそうな本】RFID=ICタグって何という方へ

ICタグのすべてICタグのすべて
井上 能行 (著)
米国のウォルマートが2005年1月からの導入を発表するなど、本格的な普及が始まったICタグについて、そのしくみや技術の内容のみならず、具体的な利用法などを、各企業による実用化実験の状況も交えながら、わかりやすくかみくだいて解説した格好の入門書。


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