フィリップ・コトラー教授が語る最新マーケティング戦略@日経ビジネス
2004年06月27日
日経ビジネス6月28日号の特別編集版として、『フィリップ・コトラー教授が語る最新マーケティング』が配本されました。別冊付録というものは、企業の広告ばかりで、読むべきに内容に乏しいことが多いのが普通です。しかし、今回はコトラーの記事以外にも、欧州企業の逆襲、中国企業攻略法、MIT教授のレスター・サローへのインタビューなどもあり、意外と読みごたえのある内容になっています。
このブログでも、再三にわたり現代マーケティングの始祖として、コトラーを取り上げてきました。コトラーのマーケティングに対する情熱は、年齢にもかかわらず、衰える兆しはないようです。最近では、『コトラーのマーケティング思考法』が出版されました。それでも、氏の数ある著作の中で、その真髄が『マーケティング・マネジメント』にあることは変わらないのではないでしょうか。しかし、大著であること、日本の事例が少ないなどの理由により、しり込みする人が多いのも事実です。そのような人のために、日本のマーケティング研究の第一人者である多田正行氏が、コトラーの著作のエッセンスをまとめた本を著しました(『コトラーのマーケティング戦略 最強の顧客満足経営をキーワードで読み解く』)。手始めにこちらを読んでみるのも、いいかもしれません。
それでは、以下に、日経ビジネスの記事の一部を要約します。
経営者を先頭に、全社一丸で活動を
1930年代に、消費財大手のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)がブランド管理という手法を開発した時は、マーケティング活動はもっと単純でした。当時は、ブランド管理マネジャーが全責任を負って、活動内容を決めていたからです。しかし、時を追ってこの考えは変わってきました。マーケティングは、もっと様々な企業活動の融合であると考えられるようになったからです。いまやマーケティングは、企業のCEOが先頭に立って進めるべきものになったのです。
マーケティングと財務の対話が大切
マーケティングは、生産や消費予想を立てることではありません。肝心なのは、顧客満足を高めるためには自社に何が欠けているのかを分析し、そこから製品やサービスを加えるという発想です。お客の視点からビジネス・チャンスを見つけなくてはなりません。財務担当者の仕事は、支出に対する効果や、そこから得られる収益について確認することです。変わる企業経営とマーケティング手法
現在、企業経営とマーケティングを巡って、2つの構造変化が起きています。この影響でCEOが、よりマーケティングへの理解を深めることを求められるようになってきているのです。
1つは、会社を支えるステークホルダーと呼ばれる株主や利害関係者の存在が強くなっていること。2つ目は、顧客がその会社の製品にどれだけ愛着を持っているかを見る、カスタマー・ロイヤルティー(顧客忠誠心)が重視されていることです。社員や取引先、物流業者といった幅広い利害関係者に親しまれる会社こそが、株主にも支持される時代になっています。例え、短期的に利益を落とすことになっても、お客の信頼と忠誠心を高めなければなりません。そこで、大切な指標になるのが、ブランド価値や知的財産などの自社の無形資産をどこまで高められるかということです。
無形資産こそ会社の誇れる価値
自社の無益資産の価値を分析することは、大きな意味があります。お客が会社に何を求めているかがそこから分かるからす。ブランド価値が高いということは、顧客の期待が高いということに他なりません。正しい企業戦略で、さらにその満足度を高めていかなくてはなりません。どの事業にどれだけ資金を注いで、利益を得るか。ROI(Return On Investment = 事業投資に対する収益還元)という指標を利用するべきです。予想数字を出すためには、認知度を上げたいのか、顧客数を増やしたいのか、キャンペーンの目的を絞ることが必要です。もし、ROIの予想に近い結果が出たとしたら、それはマーケティング担当者の狙いが正しいことの証明で、その後のブランド展開の進路が明確になります。
インテル・グローブCEOの不満
マーケティング担当者が、忘れていけないのは、ROIがコストと利益といった財務指標だけでなく、マーケティング効果をも考えていることです。つまり、顧客が宣伝でどんな印象を持ったか、顧客満足度は高まったか、市場シェアや顧客忠誠度は良くなったか、どれだけの新規顧客が増えたたかなどを知らなければなりません。こうした視点は、案外と忘れられています。米インテルの取締役会でのエピソードをご紹介します。2時間かけて財務状況を議論したのですが、当時のCEOだった、アンディ・グローブ氏は、「私は文句がある。誰もお客に対して自分の会社がどんな活動をしているか話さない。顧客にメリットを与えていなければ、例え今年の業績が良くても、来年は落ち込むだろう。もっとマーケティングの視点から会社の事業を考えよう」と最後に指摘したのです。
グローブ氏の言葉のように、マーケティングは様々な角度から短期的な効用ではなく、長期的な成長を見通して考えることが大切です。社名を支える新ブランド群
市場環境の変化に合わせて、企業は形態を変えたり、新分野に事業を広げています。その際に有効なのが、社名と異なる商品専門の新ブランドを使うことです。会社の本業と離れた新分野に出る際や、一度失敗した事業への再参入など、社名と違う新ブランドを打ち出していく例は、増えると思います。一方で、企業の統一イメージを高めるためにCEOを前面に打ち出す方法もあります。経営者を象徴にするのは、革新性や成長性を訴えるのに今も有効です。しかし、気をつけなくてはならないのは、不祥事が起きると、企業イメージが失墜するリスクがある点です。米国でカリスマ主婦として有名だったマーサ・スチュアート氏に不正株式取引の疑惑が出ると、彼女の会社の株は急落してしまいました。
コトラーが指摘している、CEOと企業イメージの関係については、創業者と企業イメージ:武富士の再生は可能か(メルマガ9号)をご覧下さい。また、特定の実在する人物に依存したマーケティング手法のリスクについては、Celebrity Marketing 最新事情:ミスターからQちゃんまで(メルマガ7号)をお読み下さい。なお、コトラーが教鞭をとる、ノースウェスタン大学ケロッグ・スクールの情報は、マーケティングの殿堂:日本では女性陣が健闘で少し紹介しています。
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【関係ある本】
コトラーのマーケティング戦略最強の顧客満足経営をキーワードで読み解く
多田 正行 (著)
マーケティングの本質を簡単明瞭に解き明かしていくコトラー。彼による最強の顧客満足経営の本質を、明快なキーワードで読み解く。 本書は、コトラーの顧客経験を重視した発想、戦略論の定説への鋭い批判と建設的な問題提起等を明快なキーワードで読み解いていく。日本企業の具体的事例をまじえた分かりやすい解説と実践的内容で「コトラーのマーケティング学の真髄」を紹介していく一冊。
コトラーのマーケティング思考法はてしなく市場の細分化を推し進めた結果、およそ考えつくかぎりの製品が出回っている今日。これ以上、どこに「満たされていないニーズ」があるというのだろう?そこで登場したのが、水平思考で発想する「ラテラル・マーケティング」だ。ラテラル・マーケティングとは、市場をひたすら垂直方向に細分化していく従来の手法を補完し、これまで存在しなかった新しいカテゴリーや市場を創出する手法である。本書は、ラテラル・マーケティングの枠組みと理論を示し、企業に新たな突破口を示す。


