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ライブドアの近鉄球団買収提案と米国スポーツ・ビジネス最新事情

2004年07月01日

ライブドアによるプロ野球の近鉄球団の買収提案が、マスメディアをにぎわしています。論調としては、興味本位の取り上げられ方が主で、あまり真剣な提案として扱われてはいないようではあります。この提案が、ライブドアの堀江貴文社長の思惑通りに、我国の旧態依然とした、プロ野球ビジネスに一石を投じることができるのでしょうか。第1ラウンド終了時点としては、完全に無視されたライブドア側の敗色濃厚というところですね。

タイミングよく、米国のプロ・スポーツ・マーケティングの現状を説明する、ペンシルバニア大学ウォートン・ビジネスクールの記事が発表されました。米国でもスポーツ・ビジネスは大きな転換期を迎えつつあります。特にスポーツチームとメディアとの間の放映権料を巡る綱引きでは、かつてないほど緊張感が高まっているようです。以下に、ウォートンの記事の要旨をまとめました。
In the Sports Business, the Biggest Battles Are Fought Off the Field

米国でもスポーツ・ビジネスが、簡単に儲かって、安定した成長を期待できる時代は終わりを迎えつつある。その理由は、1990年代に経済的な成長をもたらした、スポーツ・ビジネスの基本構造に大きな変化が起こっているからだ。

1990年代には、4番目の全国ネットワーク局として、放送業界に参入したフォックス・ネットワークが、プロフットボールの放映権獲得のために、数十億ドルを投じた。そのかいあって、フォックスも全国キー局としてCBS、NBC、ABCの大手と肩を並べる地位を築くことに成功した。当初の目的を達成した以上、フォックスにとっては、スポーツ番組を武器に認知度アップを狙う必要もなくなった。したがって、以前のように気前よく放映権料を支払う理由もないわけである。また、NBCの方も、高騰したプロポーツ番組の放映権料に嫌気がさして、スポーツ中継の軸足をオリンピックに移そうとしている。もはやスポーツ番組も、リーグ側の完全な売り手市場ではなくなったようだ。

このような市場環境の変化に伴い、スポーツチームのオーナーとメディアの蜜月関係にも、明らかに亀裂が生じ始めている。かつては、確かにスポーツをプロモーションすることは、両者の共通した目的であった。しかし、現在は双方が熱狂的なファンを自らの陣営に取り込もうとして、争いが起こる場合の方が多い。広告収入を巡っても、両者は同じスポンサー企業を取り合う競合関係にある。

ここ1、2年は、スポーツチーム側の攻勢が目立つ。 バスケットボール(NBA)とアメリカン・フットボール(NFL)は、既にケーブルテレビでの24時間放送を開始している。アイスホッケーとメジャーリーグも、1年以内に自前チャンネルによる放送に乗り出す予定だ。もはや既存のメディアからの放送権料に頼るという図式は過去のものとなった。リーグ側は、独自放送局の運営費用を、公式スポンサーからのスポンサー収入を増額することで賄おうとしている。各リーグとも、ビール、スポーツシューズ、自動車などの15から25社の公式スポンサーを抱えている。こうした独立チャンネルが今後も増え続ければ、企業の広告宣伝予算の取り合いが激化し、結果として既存メディア側の取り分が減ることになる。

メジャーリーグのメディア会社関係者は、広告主を巡ってスポーツ専門放送局ESPNやその他の放送局とは、争うつもりはないと述べている。そうはいうものの、リーグ側が新たな収入源を作り出そうとしていることには、変わりない。例えば、Web サイトや、携帯電話へのコンテンツの有料配信。150余りのべスト・ゲーム集から1試合あたり2.99ドルで、ダウンロードできるサービスもスタートしている。リーグ側では、デジタルメディアを活用すれば、これまで接触できなかった顧客層へもサービスが提供できるようになると、大きな期待を寄せている。

メジャーリーグが積極なマーケティングを展開するのは、よそは皆大儲けしているのに、自分だけが取り残されてしまうのではないかという、危機意識の裏返しともとれる。当然、リーグ側も応分の分け前にあずかってしかるべきと考えているわけだ。オーナー側が球団の持つ商品価値に気づいてしまった以上、その権利意識はますます強固なものになるだろう。そのマーケティング戦略の根底には、スポーツ・ビジネス全体のパイを拡大して、150年の伝統を誇るベースボールの再活性化を図る壮大な野望があるのは明らかだ。

私もライブドアの堀江社長の記者会見をテレビで見ました。残念ながら、今回の提案に至った理由の明解な説明はありまでした。また、球団を保有することによる、マーケティング・シナジー、ビジネス戦略も明かされません。ここら辺の説明が十分ではないため、どうも本気には思えないような印象を与えてしまったのではないでしょうか。

もし、この記事にもあるようなビジネス・プランを提示していれば、印象もグッと違ったものになっていたはずです。例えば、『livedoor のポータル・サイトを利用して、バッファローズの試合映像をキラー・コンテンツとして配信することができる、そうすれば、新しいファン層の開拓が期待できる、最終的には日本球界全体の活性化に役立つと確信する。』というような説明もできたのではないでしょうか。今回の記者会見を見る限りでは、次代を担う本物の経営者という感もなく、ただの成り上がり者の雰囲気を残すだけで、評価を落としただけのようです。

もちろん、ジャイアンツやベースターズのオーナーが、既存メディア企業であることを配慮して、あまり具体的な話をして過度に刺激したくなかったという言い訳もあるでしょう。その割には、記者会見の服装、態度を含めて、十分に既成勢力を刺激している面はあったので、一貫性には欠けます。本当は若手経営者が、老害のために沈滞している日本プロ野球界に、颯爽と新風を吹き込む姿を想像していたのですが、残念です。長老をたらしこむ手管にかけては、ソフトバンクの孫正義氏には、遠く及びませんね。

個人的には、Yahoo がフランチャイズ球場の命名権を持つ Yahoo BB スタジアムで、ライブドア・バッファローズとブルーウェーブが対戦する姿を、見たいような気もします。


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【本稿に関係した本】

スポーツマーケティングスポーツマーケティング
原田 宗彦 (著), 松岡 宏高 (著), 藤本 淳也 (著)
営利・非営利にかかわらず、スポーツ事業にはビジネスという認識が不可欠である。伝統的な企業活動として行われているマーケティングを下敷きにして、様々なスポーツ消費の場面に即したマーケティング活動を解き明かし、チームやクラブの経営に携わろうとする人に、必須の経営知識を提供する。
100億稼ぐ仕事術100億稼ぐ仕事術
堀江 貴文 (著)
M&Aによる積極的な事業展開などで話題を集めるライブドア堀江社長が、自ら仕事術を公開している。7年半で年商100億の会社を築き上げた1972年生まれの若きリーダーは、どんな環境でいかに仕事をしているのか。「ヒト」「ジカン」「ジョウホウ」「カネ」「ツール」の5章からなり、テーマはクライアントを増やす営業のコツ、会議や打ち合わせの時間短縮方法、仕事の効率アップや時間管理術、データ管理や情報収集術、コスト管理法など幅広い。
稼ぐが勝ち ゼロから100億、ボクのやり方 稼ぐが勝ち ゼロから100億、ボクのやり方
堀江 貴文 (著)
堀江貴文が自身の最新の仕事術・経営哲学をすべて見せる。 ●「中流民」は実質「下層民」●「成り上がり」の手本がなくなった●二〇代は搾取されている●最大の歪みは給与体系●「貯金をしなさい」は間違っている●アルバイトはすぐにやめよ●若いうちに悟ってはいけない●子どものゲーム離れの真実……

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