成果主義の影響はマイナス:職場の士気低下やうつ病をもたらす場合も
2004年07月06日
日本企業の人事システムとして導入が進んでいる成果主義について、疑問の声があがっていることを、このブログでも紹介してきました。この度、現場のビジネスマンに対するアンケート調査の結果が、日経BP社より発表されました(成果主義によって職場の士気低下、うつにも)。その一部を紹介します。
78.7%が成果主義を導入済み
成果主義を「導入済み」であるのは78.7%にも上りました。成果主義がこの10年で急速に浸透したことがうかがえます。「職場の士気低下」が「士気向上」を上回る
成果主義が職場の人間関係に与えた影響を伺ったところ、職場の士気が「向上」したと回答した方が21.8%だったのに対して、「低下」したと答えた方は36.7%。成果主義へのマイナス評価が、プラス評価を大きく上回りました。「低下」したの回答は、「特に影響はない」(35.2%)の回答も上回っています。
ちなみに年代別で見ると、60代以上に限って、「士気の向上」(48.4%)が「低下」(16.8%)を大幅に上回りました。経営者や役員の多いこの年齢層と、50代以下の現場世代との認識ギャップが明らかになりました。
また「パワーハラスメント(職場での上下関係を利用した嫌がらせ)の増加」を挙げた人は、全体の17.1%。この数字も、決して軽視はできない大きさではないでしょうか。約4割が「自分または周囲にうつになった人がいる」
回答者本人、あるいは周囲に、成果主義が主な原因でうつになったとみられる人がいるかを聞きました。「自分」がなったと答えた方は12%、「自分以外(上司、同僚、部下、他部署の人、友人・知人など)」が29.6%。「いない」と答えた方は61.4%でした。
自由回答欄には、「暴言を受け、心の病いに苦しんでいます」「心労が重なり病気療養中」など、痛切な記述がありました。成果主義の導入が、働く人々の精神面に深刻な圧力を及ぼしている事態が浮き彫りになりました。
問題は「人間関係」と「仕事の内容」
回答者や周囲の人がうつになった原因について聞きました。
うつになった本人の答えで多かったのは、「特定の人との人間関係」が44.7%。その後に「自分のやりたい仕事と会社から指示された仕事のずれ」(43.5%)、「業績が正当に評価されていないと本人が思ったため」(38.0%)と続きます。
周囲の人がうつになった原因についても、上位二つは同じでした。ただし「業績不振や業務での失敗」を挙げた人が37.7%、「精神力が劣っていたから」も31%の高率となっています。うつになった人への周囲の評価には厳しいものがあると感じました。
- 調査期間:2004年6月22日(火曜日)~6月28日(月曜日)
- 回収件数:2618件
- 調査告知方法:nikkeibp.jpトップページのバナー、nikkeibp.jpメール
- 性別:男性:90.3%、女性:7.6%、無回答:2.0%
- 年齢:29歳以下:8.8%、30代:34.1%、40代:34.2%、50代:17.6%、60歳 以上:5.2%、無回答:0.1%
- 調査主体:nikkeibp.jp編集、日経BPコンサルティング 調査第一部
私自身も「虚妄の成果主義」の著者である、東京大学高橋伸夫教授に代表される意見などから、頭では成果主義の矛盾点を十分理解していたつもりです。 しかしながら、今回改めて現場のビジネスマン(ウーマン)のアンケート結果に触れてみて、問題の深刻さを再認識しました。特に慄然とさせられたのは、 うつ病の発生率の高さです。景気が回復基調にあるにもかかわらず、中高年の自殺件数は減少する兆しがありません。これは、これまでの通説であった企業業績不振に伴う「リストラを苦にした自殺」だけではなく、業績好調でも「成果主義を苦にした自殺」がありえることを示唆するものではないでしょうか。
もう1つこの調査結果で注目すべきは、成果主義の導入により士気が向上したとの回答が、経営層が多いと思われる60歳代以上に集中していることです。成果主義の評価における、経営層とそれ以外の従業員との間のギャップの大きさを如実に表した結果といえます。問題は、こと成果主義の評価に限定されるものではないはずです。経営層と従業員と間に存在する現状認識の差異と、それを引き起こす階層間のコミュニケーション・ギャップは、通常のビジネス上の意思決定にも大きな悪影響を及ぼしていることは、間違いないと思うからです。
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【本投稿に関係した投稿】
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虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメ: 高橋 伸夫 (著)揺れるトップ、悩める人事、落ち込む一般社員におくる、学問的立場から初の「成果主義」粉砕の書。経営学・経営組織論を専門とする東大教授が、企業現場でのエピソードもまじえつつ、「成果主義」の無惨で愚かしい正体を解き明かす。
内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 城 繁幸 (著)富士通が「成果主義」の導入に踏み切ったのは、1993年。以来、この制度を導入する企業はどんどん増え、いまでは、日本企業のほぼ7割がこの制度を導入している。しかし、「成果主義」が、結果的には富士通をボロボロにしてしまった。元・富士通人事部社員だった筆者が、その現場で見たものは、「社員のやる気が引き出され、働いた者が公平に評価されることによって、企業はますます発展する」といううたい文句とは、あまりにもかけ離れた世界だった。果たして「成果主義」は社員になにをもたらすのか? 富士通の「成果主義」による崩壊は、決して他人事ではない。

