中田宏・横浜市長が捕鯨問題で一人気を吐く
2004年07月07日
曽我ひとみさん一家のインドネシアでの再会決定や、タイ人の中学生・吉田ミビサさんの処遇を見直すなど、ここのところ外交がらみで、嬉しいニュースが続いています。明らかに参院選をひかえての、政府自民党の人気取り策の一環だとは思いますが、いいことには違いないので、評価したいと思います。ところが、選挙の票に結びつかない話になると、積極的な姿勢をまったく見せなくなるのは、政治家の大きな問題です。
政治家の関心が極めて低いのものの1つが、商業捕鯨再開問題です。そんな中で、中田宏・横浜市長が、ひとり気を吐いてくれました。
なかだ・ひろし 64年生まれ、青山学院大卒。松下政経塾入塾、92年の日本新党の旗揚げに参画。93年から衆院議員3期。2002年から横浜市長。ごみ問題にも熱心で横浜市ではごみ排出量30%削減プランを推進。
横浜市長中田宏氏――「捕鯨」堂々と大義を語れ(インタビュー領空侵犯)
2004/07/05 日本経済新聞 朝刊 5面
――国際捕鯨委員会(IWC)の年次会合が、今年はイタリアのソレントで先月末に開幕しました。商業捕鯨の再開を強く主張して、論理なきごり押しの反捕鯨運動を厳しく批判していますね。
中田 「私は学校給食でクジラ肉を食べた世代ですが、クジラ肉は好物ではありませんし、ことさら郷愁を感じているわけでもありません。なのに捕鯨問題について口を開くと、そんなにクジラの竜田揚げがお好きですかなどと、筋違いの反応が返ってきます」
「捕鯨問題の本質に目覚めたのは、日本新党の国会議員として、十年ほど前にIWC総会に出席した時です。反捕鯨国による非民主的な会議運営を目の当たりにして驚きました。数にものを言わせるその強引な手法は、日本の国会の比ではありません」
――捕鯨問題の本質とはいったい何でしょう。
中田 「捕鯨問題は単なるクジラ問題ではないのです。膨大な海洋生物資源を、人類が持続可能な形で将来にわたって利用していけるかどうかが問われているのです。海洋生態系の頂点、食物連鎖の最上位にいるクジラが、年間に捕食する魚やイカ、オキアミなどは、全世界の漁業の年間総水揚げ高に匹敵する四億トン近いと推定されています」
「サンマ、イワシ、スケトウダラ、イカ……。人間にとって貴重な漁業資源がこれからどうなるか。サンクチュアリ(捕鯨禁止海域)をさらに拡大し、商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)をさらに続けてゆけば、漁獲量の激減は必至です。米英など反捕鯨国の政治的な思惑で、人類全体の食糧資源が枯渇する事態は避けねばなりません」
――さすがにクジラは頭がいいといった非科学的な俗説は近ごろあまり聞かれませんが、反捕鯨国では今でもクジラは環境保護の象徴で、日本は悪玉にされがちです。
中田 「捕鯨問題が単なるクジラ問題ではない第二のポイントは、国際政治の正義と大義、議論の科学性と論理性を否定する動きが反捕鯨運動だということです。IWCの議論でも、反捕鯨国の研究者も含めた科学委員会では、科学的なデータをもとに議論され、合理的な結論がでています」
「シロナガスクジラなどまだ個体数が回復していないクジラは厳重に保護し、百年前の十倍にも増えてしまったミンククジラなどは、厳密な資源管理のもとで捕獲する。このまっとうな科学委員会の結論を、総会では捕鯨とは無関係な国まで抱き込んだ数の力で葬るのです」
中田 「外務省は全くの及び腰ですが、捕鯨問題では日本は世界に向かって堂々と理を説き、奮闘しています。日本が国際舞台で主導的に正義を語り、実現するにふさわしい課題ではないでしょうか」
最近は捕鯨問題が国民の注目を集める機会が、ほとんどなくなってしまったようです。商業捕鯨禁止により、昔のように安い鯨肉が食べられなくなって、かなりの歳月がたちました。このまま行けば、早晩日本の伝統的な食文化の1つが、風化するのではないかと心配です。確かにBSE問題で、安い米国産の牛肉が輸入できなくなった問題の方が、社会的・経済的影響が大きいのは事実でしょう。
しかし、こと食文化という点では、鯨肉も牛肉と同じくらい重要ではないでしょうか。もっと分かりやすく言えば、吉野家の牛丼が食べられなくなって寂しいように、鯨の大和煮の缶詰が食べられなくなっても寂しいのです。ここは、政治家にも捕鯨問題の解決に真剣に取り組んでもらいたいところです。
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