日本のビジネススクールは世界に通用するか
2004年07月08日
本日の日経産業新聞で、日本のビジネススクールのランキングが発表されました。このランキングは、社員を派遣した実績のある企業を対象にしたアンケート結果をもとに、日経新聞社が独自に集計したものです。今年の順位は次のようなものになりました。
- 慶應大学大学院経営管理研究科
- 一橋大学国際企業戦略研究科
- グロービス・マネジメント・スクール
- 一橋大学商学研究科
- 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科
詳しくは、以下の記事をご覧下さい。
ビジネススクール調査――1位、慶応大、授業や教授陣、評価を集める、新興勢も台頭。2004/07/07 日経産業新聞 1面
慶大、一橋大、グロービス。日経産業新聞が主要企業を対象に評価する国内のビジネススクールを聞く「ビジネススクール調査」を実施したところ、上位はこうした顔ぶれになった。慶応義塾大学はカリキュラムや教授陣の充実を評価する声が多かった。同志社大学など新設ビジネススクールの台頭も目立った。調査では実際に社員を派遣した実績などから、「評価するスクール」を一企業につき最大3校まで選んでもらった。その結果、慶大大学院経営管理研究科が全回答数の52.9%を占めて首位を維持した。
評価理由(複数回答)を個別にみると、慶大を評価する企業のうち76.5%が「カリキュラムが全体的に充実」「教授陣が優れている」の両方を選んだ。一九七八年開校の老舗のスクールでもあり、「ブランド力がある」との評価は全スクール中、最多だった。ランキング2位は一橋大大学院の国際企業戦略研究科(東京・千代田)。昼間のコースはすべて英語で実施しており、国際性などへの評価が目立つ。一橋大は商学研究科(東京都国立市)も4位に入り、総合力の高さをアピールした。
前回調査のランキング外から、一気に3位に躍進したグロービス・マネジメント・スクール。民間企業が運営するスクールとして唯一ランク入りした。講座は3ヶ月単位で受講できるほか、社会人が通いやすいよう開講時間を平日夜間と休日に絞っている。
大学でないため正式な学位は取得できないが「仕事と両立できる」(沖電気工業)ことを評価する企業が多い。社内教育向けの講師派遣も手がけており、企業や学生の事情に配慮した利用しやすさが評価を押し上げたもようだ。技術を理解して経営戦略を立案できる人材を育てる技術経営(MOT)教育にも注目が集まっている。評価が最も高いのは5位の早稲田大学大学院アジア太平洋研究科。
8位の同大大学院ビジネス研究科は今年4月に開校したばかり。MOTコースでは米国の大学などから講師を招いて海外の技術経営も学べるようにしている。調査は国内の主要企業約230社を対象に実施し、85社から回答を得た。調査期間は5月31日から6月11日。
日本にも、種々のビジネススクールができて、高度な経営学教育の機会が増えることは、基本的は大歓迎です。派遣企業側がこれらのビジネススクールを評価した理由の中には、国内スクールであれば、それほど費用と手間もかけずに済むので好都合というようなものもあるようです。まさに、「駅前留学」ならぬ、「駅前ビジネススクール」時代がやって来たのかもしれませんね。
続いて、日本のビジネススクールの国際的な位置づけを調べました。出典は、米国の BusinessWeek 誌が毎年実施している調査結果の中の、 Non-U.S. Schools カテゴリーの順位です。
- INSEAD (France and Singapore)
- London Business School (UK)
- Instituto de Estudios Superiores de la Empresa (IESE)
- IMD (Switzerland)
- Western Ontario (Ivey)
- Erasmus (Rotterdam)
- Toronto (Rotman)
残念ながら、日本のビジネススクールは、1つも入っていません。ほとんどの日本のビジネススクールは、最近新設されたばかりで卒業生もいないので、世界の伝統校の仲間入りを果たすのは、無理というものでしょう。しかし、日本のビジネススクールの先駆者である、KBS(Keio Business School) は、早くから HBS (Harvard Business School) のケースメソッドを導入していた歴史もあるので、それなりに評価されてもいいような気もします。私の推測では、日本語で授業を行っている限り、BusinessWeek のランキングに日本のビジネススクールが登場することは、ないんじゃないかと思います。
そうなると、日本のビジネススクールは、世界の一流のビジネススクールと同等の扱いを受けられないので、あまり意味がないと考えたくなるのも、当然かもしれません。そういう否定的な考えを打ち消すために、最後に日本のビジネススクールの卒業生の方を、少しだけ勇気づけるものをご紹介します。
世界各国のビジネススクールの卒業生のネットワーク組織として、Global Workplace というものがあります。うたい文句は、『世界18カ国の主要経営大学院が共同で運営する 世界最大35万人の合同公式MBA同窓生ネットワーク』となっています。本年2月現在で加盟しているビジネススクールは、次の通りです。
【US 22 Schools】
Tuck(米), Chicago GSB(米), Kellogg(米), Stanford(米),Stern NYU(米), Darden(米), Goizueta(米), Yale(米), Michigan(米), Wharton(米), MIT(米), UNC Chapel, Hill(米), Washington(米), Georgetown(米), Simon(米), Columbia(米), Cornell(米),UCLA(米), Carnegie Mellon(米),Wharton(米) Harvard (米), Duke (米)
【Europe 19 Schools】
London(英), Manchester(英), Cambridge(英),Cranfield(英), Oxford(英), Warwick(英), Imperial(英), Henley(英), HEC(仏), IESE(スペイン), IE(スペイン), ESADE(スペイン), Michael Smurfit(アイルランド), Nyenrode(蘭), Rotterdam(蘭), Helsinki(フィンランド), Norwagian SOM(ノルウェー) IMD (スイス), SDA Bocconi(伊)
【Rest of the World 13 Schools】
IAE(アルゼンチン), NUS(シンガポール), CUHK(香港),HKST(香港), Waseda(日), IUJ(日), KBS(日), Cape Town(南ア), AGSM(豪), Melbourne(豪), Auckland(NZ), Ivey(加),Tront(加), York(加)
この中に日本からも、早稲田大学、国際大学、慶應大学の3つのビジネススクールが含まれています。このネットワークの中では、一応 Harvard、Stanford と同等の扱いを受けていると考えられます。嬉しいことです。それでは、個人として Global Workplace に登録しておくと、どんなメリットがあるのかというと、基本的には Job Posting サービス程度と考えてください。希望に合った就職先があると、メールで知らせてくれます。このネットワークを利用して、日本での求人活動を行っている企業は極めて少ないので、実際のところはメールが来ることは滅多にありません。
その他、日本国内の独自の活動としては、Global Taskforce というところが、毎月第1金曜日に朝飯勉強会(Power Breakfast みたいなやつ)を開催して、卒業生の交流の場を提供しています。実際に参加したことがないので、その盛り上がりの程度はわかりません。
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【ランキング2位の一橋大学ビジネススクール関連の書籍】
一橋大学ビジネススクール「知的武装講座」伊丹 敬之 (著), 沼上 幹 (著), 伊藤 邦雄 (著), 小川 英治 (著)
一橋大学で経営学修士(MBA)コースを担当する4人の著者による講座。日本企業の経営課題、企業価値を創造する経営戦略、人と組織を活性化させるための戦略的課題、複雑化する金融・為替を理解する、の4テーマで構成。
競争戦略論 一橋ビジネスレビューブックス
青島 矢一 (著), 加藤 俊彦 (著)
本書は、2人の新進気鋭の経営学者が「一橋ビジネスレビュー」誌での連載をベースに経営戦略に関する論理を平易に解説しつつ、戦略論の見地から本邦企業の問題点を体系的に分析するとともにその解決策を提言した実用書であり、理論へのアレルギーの強い経営者や実務家はもちろん、断片的な理論の学習に終わってしまっているビジネススクールや関連学部の学生などにもぜひ読んでもらいたい1冊である。
【躍進著しいグロービス・マネジメント・スクール関連の書籍】
新版 MBAマネジメント・ブックグロービス・マネジメント・インスティテュート
MBA(経営学修士号)のコアコースで学ぶエッセンスを網羅。現実のビジネスに活用可能な形で経営理論の要点をわかりやすく解説。また経営分析の手法と戦略立案のフレームワークに重点をおく。1995年刊の新版。
MBA経営戦略グロービス・マネジメント・インスティテュート
実際の米ビジネススクールでのテキストや,ボストンコンサルティングなど著名コンサルティングファームの分析手法をベースにした概説書である。本場の米企業ではなく,身近な日本の著名企業を舞台にした豊富なケーススタディーにより,企業の経営戦略構築のやり方をわかりやすく解説している。


コメント
貴重な情報源ブログありがとうございました。
私は米国でMBAを取得しましたが、日本ではやはり慶応が最も充実していると思います。(私の米国MBA同級生も慶応で講師しています)
ビジネススクールに限らず、京大・東大などは各学部の大学院では留学生が多く所属しています。要するに異文化交流できるということです。
日本のビジネススクールの実態は私には分かりませんが、異文化交流、いわゆる日本のビジネススクールにおける留学生比率、あるいは留学生を受け入れる素地・考えがあるかについて評価基準・ランクも変わってくるのではと思いました。
どうも偉そうなことを言って申し訳無いです。ただせっかくビジネススクールで学ぶのなら、「異文化を知る」ことも大切と思ったためコメントした次第です。(ヨーロッパ系・ラテン系それぞれライフスタイルから価値観までまったく違うということをビジネススクールで一緒にミーティングしながら肌で感じることも貴重な経験という意味です)
では、失礼します。
Posted by: 小島愛一郎 | 2004年07月08日 09:32
コメントありがとうございます。
日本にあるビジネススクールで、留学生の受け入れに最も熱心
なところは、国際大学(IUJ)だと思います。同大学は、新潟の
山の中にあります。勉強に集中できるという意味では、誘惑も
少なく適しているんでしょうが、日本のビジネスの現場から離れ
過ぎているという点を、不満に思う留学生もいると聞いています。
日本も留学生誘致策を積極的に展開しないと、Japan Passing に
なってしまう恐れもあるように思います。
Posted by: AMBI | 2004年07月08日 22:14