デル・プリンタ市場参入は予想を上回る滑り出し
2004年07月17日
以前、デルのプリンタ市場参入に関して否定的なコメントを書いてしました。(デル・プリンタ市場参入の業界インパクトはゼロ?)ところがどっこい、予想以上に売れているそうです。どうやら、世界のデルの卓越したマーケティング戦略を見くびっていたようです。深く反省したいと思います。その辺の事情を最新の日経ビジネスの記事から、抜粋します。
デルのプリンター、CMなしでも好ダッシュ
「一括サポート」で寡占に風穴
日経ビジネス 2004年7月19日号 P.22
6月3日にパソコン直販大手のデルが発売した個人向けインクジェットプリンター「922」(1万3800円)が、事前の予想を大きく上回る勢いで売れている。「実は、我々自身も、個人向けのプリンターがここまで人気になるとは思っていなかった」と同社の仲西和彦 S&P CoC プロダクトグループ部長はうれしい悲鳴を上げる。デルは初年度の販売予定台数などを明かしていないが、昨年春に一足早くプリンター市場に参入した北米では、今年1~3月のインクジェットプリンターのシェアが、トップのヒューレット・パッカード(HP)に次ぐ18%にまで拡大した。日本での売れ行きは、この北米での勢いすらしのぐという。
デルは、パソコンの販売とサポートを通じて、インクジェットプリンターのユーザーに強い不満があることを察知していた。そこで、デルは「パソコンとプリンターのサポートの一元化に大きなニーズがある」と判断し、プリンターの投入に踏み切った。デルのパソコンと一緒にプリンターを買えば、サポートは1つの窓口で受けられる。またプリンターを使うためのソフトウェアは出荷時にパソコンに組み込まれるので、両方をつなぐだけですぐに使える。
デルのパソコンは現在、国内市場で約10%のシェアを持つ。一方、インクジェットプリンターの国内総出荷台数はパソコンの約半分。「事前予想の2倍近い」(仲西部長)売れ行きがこのまま続けば、プリンター市場でもデルのシェアが1年以内に2ケタに達する可能性は十分ある。
この記事から分かるように、デルの今回のプリンター市場参入戦略の基本は、次の2点に集約されます。
- ターゲットを自社のパソコン・ユーザに絞り込む
- 安さだけでなく、使い勝手のよさを訴求する
自社のユーザを対象に新製品を案内すれば済む話なので、不特定多数を相手にする他社のように、莫大な広告宣伝費を投入する必要がありません。デル・ユーザのニーズにあわせて製品仕様も、極めてシンプルな構成となっています。したがって、フォトエディターや年賀状ソフトの体験版のような色々なソフトも同梱されていないようです。私自身の経験からいっても、この種のソフトは使う機会もなく、むしろ邪魔なだけでしたので、現実的な問題はないと思います。
デルのパソコンにつなげれば、面倒な設定なしですぐ使えることも、競合他社に対する、大きな優位性になります。他社製品を買った時のように、ドライバーをインストールするなどの初期設定が苦手な人には、好都合でしょう。また、ユーザ・サポートという点からも、コストを最小限に抑えることができます。他のプリンター専業メーカーは、Windows から Mac まで、すべてのパソコン・メーカーのプラットフォームをサポートしなければならないので、数倍のコストがかかります。
以上のように分析すれば、デルの考えるダイレクトモデルによるローコスト・オペレーションが、プリンターのマーケティング戦略でも、十分に実現されていることが理解できます。その分、製品価格も廉価に設定できるので、コスト・パフォーマンスを第一に考えるデル・ユーザのニーズにマッチしたわけでしょう。女性タレントを起用したテレビCMでのイメージ戦略中心の日本メーカーも、うかうかしていると、足元をすくわれることになるのかもしれません。これを機会に他社も、もう一度本当のユーザ・ニーズとは何かを考え直してもらいたいものです。
★この記事が面白いと思った人は『人気ブログランキング』をクリックしてもらえるとハッピーです。
【関係ある過去の投稿】
デル・プリンタ市場参入の業界インパクトはゼロ?
【関係ある書籍】
デルの革命 ~ 「ダイレクト」戦略で産業を変える設立わずか15年で、全米第1位のPCメーカーとなったデルコンピュータ。その驚異的成長の秘密を解くカギは、顧客・サプライヤー・社員との結びつきを重視したユニークな経営戦略にある。世界の注目を集める天才経営者が自ら語る、ネットワーク経済下の「ビジネスの未来像」。


