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目標管理制度(MBO)の弊害は、嘘つきが増えること

2004年07月27日

日本企業でも定着しつつある成果主義が、必ずしも当初期待されていた効果をあげていないことを、このブログでも何度かとりあげてきました。成果主義に密接に関係したマネジメント・システムが、目標管理制度(Management By Objectives: MBO)です。目標管理制度とは、簡単に言えば、個人や組織の具体的な数値目標を設定して、その達成度合いにより、賃金をはじめとする各種の処遇に反映させる仕組みで、欧米企業を中心に幅広く導入されています。

今回は、この目標管理制度が、米国企業では従業員の不正行為を招く温床となっていることを指摘する記事を紹介します。情報源は、ウォートン・ビジネススクールの Goal setting and Cheating: Why They Often Go Together in the Workplace です。次にその内容の一部を要約します。

生産性の向上や成果主義の徹底のために、目標管理制度を活用している企業の多くは、その有効性を認めているが、そのマイナス面に気づいている企業は少ない。実際には、設定された目標が未達成に終わった場合でも、目標を達成したと嘘の報告をする従業員が多い。虚偽の傾向は、ごくわずかの差で目標に満たなかった時ほど、強くなる。その理由は、嘘をつくことの罪の意識が希薄になるからだ。また、目標が達成された時だけに、報酬が与えられるような制度になっていると、虚偽の割合は飛躍的に増えるようになる。

役員は、投資家に約束した決算額を守ろうとして、帳簿を改ざんする。セールスマンは、架空の売上を計上したり、売上を水増しする。製造部門は、未完成品を出荷し、サービスセンターは、不必要な修理を行う。これらは、どれも目標を達成するために行われる不正の一部だ。

1990年代の初めには、シアーズ・ローバックの自動車整備部門で行われていた修理項目の実に90%が、不要な修理であったことが、カリフォルニア政府の調査により明らかになっている。
教育機関も例外ではない。目標に定めた合格率をクリアーするために、成績の悪い生徒を対象から除くことも、大学ではよく見られることだ。

特に虚偽報告が頻繁に見られるのは、コンサルティング会社や法律事務所など、目標とされる労働時間を満たすことが、昇進やボーナスに直接影響する場合だ。これらの業界では、顧客への請求時間を水増しすることは、ごく普通に行われている。その原因は、労働時間が各人の自己申告に任されていて、客観的に把握することが不可能に近いことにある。

それでは、このような不正行為を防止するためには、どのような対策が必要なのだろうか。1つは、目標を達成できた場合と、できなかった場合とで与えられる報酬に、極端な格差をつけないことだ。例えば、30台の車を売ったセールスマンにハワイ旅行がもらえるとしよう。この場合、29台を売ったセールスマンに、何も報酬を与えないようになっていれば、残りの1台分をごまかそうとする者が現れる可能性は高い。29台でも相応の報酬がもらえるようにすれば、、そのような不正の確率は格段に低くなるはずだ。
もう1つの対策は、管理者が不正を許さない、厳しい倫理観を従業員に教育することだ。

この記事は、目標管理制度の運用上の問題を述べたものです。確かに、このような不正行為を生む可能性は否定できないとは思いますが、実際にグローバルにオペレーションしている大企業では、目標管理制度そのものが複雑化していて、あまり不正を働く余地もないような気がします。
例えば、私が勤務していた外資系企業(Fortune Ranking の極めて上位に位置する多国籍企業)では、次のような目標がありました。

  1. 世界全体の事業部目標(私の場合はマーケティング)
  2. 日本法人の販売目標
  3. 私個人の目標(マネージャとして、プレイヤーとしての両方)

所属する部門により、その割合は違うのですが、私の場合は、自分の給与に反映するのは、世界全体(3割)、日本法人(2割)、個人(5割)程度であったように記憶しています。理論的には、自分個人の頑張りにより、世界全体と日本法人の目標の達成具合にも影響を及ぼすことになります。しかし、実際には企業規模が巨大であるために、世界全体と日本法人の目標の進捗状況には、ほとんど無関心でした。

そこで、皆自分の給与の残り半分の部分を左右する、個人目標の達成具合をいかに旨く説明するかに注力することになります。そこは外資系企業ですので、皆節操もなく自分の貢献度をアピールするので、結果として給与そのものには、あまり差が出なくなってしまいます。それで途中でどうでもよくなってしまい、あまり積極的に自己主張する気もなくなってきました。それでも、給与とは別に決まるストック・オプションは、個人の貢献分だけで決まることもあり、その分だけでも頑張らねばと心に決めていました。そのうち自社株の市場価格が自分が行使できる価格を下回ることが続き、そっちもどうでもよくなってしまいました。 結局すべて、どうでもよくなって辞めることになったわけです。


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