« 目標管理制度(MBO)の弊害は、嘘つきが増えること | メイン | 公認会計士試験に合格しても監査法人に就職できない悲劇 »

Topビジネススキル専門職大学院/資格 > 法科大学院は司法試験に合格できなくても有意義な選択といえるか

法科大学院は司法試験に合格できなくても有意義な選択といえるか

2004年07月28日

司法制度改革の一環として、華々しくスタートした日本版ロースクール(法科大学院)に関する広告特集が、今週発売の週刊東洋経済に掲載されました。内容そのものは、法科大学院とその受験予備校の宣伝が主体ですが、その冒頭のインタビュー記事に興味を惹かれました。

インタビューに登場した諸石氏は、司法試験合格後、法曹界ではなく一般企業の住友化学に入社しました。通常のサラリーマンとして18年間勤務した後、新設された法務部の課長職を命じられたことをきっかけに、司法修習所に入ることになります。弁護士登録後は、住友化学に復帰して企業内弁護士の草分けとして活躍、最終的には専務まで務めています。現在は、政府の各種委員として司法制度改革に取り組まれています。まず、そのインタビュー記事の抜粋を紹介します。

―― 司法制度改革の計画どおりに毎年3000人の法曹が輩出すれば、これまでのような仕事環境のままでは済まないでしょう。

(諸石)日本で法曹と言えば、それは裁判法曹でした。逆に言えば、裁判法曹だけだから2万人でもなんとか済んだのです。ところが米国の大法律事務所では訴訟部というのは10くらいある部門の1つにすぎません。司法のコントロールに対する需要は裁判以外のほうがずっと大きい。毎年3000人の法曹が巣立てば、否応なく裁判以外にでていかざるをえなくなって、つまりは本来の姿に近づきます。法曹の量が確保されれば、新しい法曹の仕事が次々と生まれてくるものなのです。

―― ただ、悩ましいのはロースクールに集った学生数の6000という数字です。新司法試験への合格率は7割という目算だったと思いますが、母数がこれだけ多くなると、相変わらずの狭き門ということになりますね。

(諸石)ロースクールを卒業して司法試験に合格しない人をどうするかというのは大きな問題ですね。まったくの無駄骨折りになったら、かなりの残酷物語です。そこで、私の経験を申し上げたいのですが、弁護士の「資格」で仕事をしたことは一度もありません。もちろん、信頼という無名の効果はあったかもしれませんが、少なくとも弁護士資格は仕事を進める上での要件ではなかった。企業が欲しいのは有能な法律家であって、法曹資格ではありません。ですから、司法試験に合格していなくても、法律的な問題点を発見し、判断し、表現する能力に優れていれば企業は歓迎するでしょう。ただし、資格がないだけに、本当の実力が問われることになります。

現在段階では、法曹養成機関としてのロースクールの側面がクローズアップされていますが、法律家の専門職大学院としてとらえるとイメージが掴めるのではないでしょうか。企業の技術系社員は既にほとんどがマスター・ドクターになっています。ほどなく事務系でも専門的な職域は院卒が普通の時代になるでしょう。理想を言えば、ロースクールを卒業するのが一義的な目的で、法曹資格取得は1つのオプションになるくらいが望ましい。それだけにロースクールには、しっかりしと高いレベルを保ってくれることを切実に期待しています。

この記事を読んで、法科大学院に期待すべき役割を考えてみました。基本的な役割は、インタビューの中にもあった、2つに分かれるはずです。

  1. 専門職大学院:あくまでも大学院レベル(Post graduate level)の法律の専門教育を提供する教育機関で、司法試験そのものとは無関係。
  2. 法曹養成機関:これまでの資格試験予備校とは一線を画するものの、究極の目的は司法試験に合格するための準備教育を提供することにある。

欧米のロースクールは、あくまでも1の教育機関の一部であり、課程修了者には、JD(Juris Doctor)の学位が与えられます。学位そのものは同じなので、やはりどこのロースクール出身かで、評価に雲泥の差が出ます。日本の法科大学院卒業者には、どのような学位が授与されるかはわかりませんが、この学位取得を目的に入学した人は、ほとんどいないのが実情ではないでしょうか。おそらく大多数の人間は、2の目的、すなわち「法科大学院にさえ入学できれば、ほぼ司法試験合格」と考えていたはずです。それが、予想合格率が5割程度になりそうなどといまさら言われても、話が違うとあわてているのが現状でしょう。

世間の受け止め方も、法曹養成機関と考えているように思います。したがって、法科大学院の評価も、結局は司法試験合格率で決まるのではないでしょうか。 当初の予想を上回る数の法科大学院が開校して、まさに「駅弁ロースクール」の様相を呈しています。しかし、最初の司法試験合格率が発表される3年後以降には、その真価が問われることは明らかです。 当然10年以内には、法科大学院の二極分化が起こり、中には廃校になるところも出てくるのではないでしょうか。そうなると、高い合格率を維持したい大学院側が、すべての卒業生に司法試験受験を許可しなくなるような悲惨な話もありえるかもしれません。

果たして、諸石氏の言うように、司法試験に不合格となった法科大学院卒業者に対して、日本の社会も一定の評価を与えることができることになるんでしょうか。私は結構悲観的で、あまり評価されないように思います。医学部を卒業して、医師試験に合格できなかった人間には、世間の目は冷たいですから。そう考えると、法科大学院への進学も、結構リスクの高い選択に思えてきました。本当に資格に頼らずに、実力をつけるのが目的であれば、欧米の名門ロースクールを目指した方が、リスクが低いのかもしれません。


★この記事が面白いと思った人は『人気ブログランキング』をクリックしてもらえるとハッピーです。


【本投稿に関係した投稿】

【本件に関係した本】

難関資格は働きながらとりなさい―社会人としての実務経験が役立ちます難関資格は働きながらとりなさい―社会人としての実務経験が役立ちます
佐藤 孝幸 (著)
弁護士、会計士などの難関資格は、働きながらの取得は困難とされている。しかし、本来実務家になるための資格ゆえに、仕事で得た経験やノウハウは実は合格のための下地となっていて、取得(独立)後にまで活かせる。本書は、働いている者にこそすすめたい難関資格取得の心構えや時間管理術、学習法などを解説。

  • このエントリーをdel.icio.usに追加
  • このエントリをニフティクリップに追加
  • このエントリをLivedoor クリップに追加
  • このエントリをFC2ブックマークに追加
  • このエントリーをバザールに追加
  • このエントリをSaafブックマークに追加
  • このエントリをChoixへ追加
  • newsing it!
  • このエントリーをCoRichへ追加
  • このエントリーをはてなブックマークする
  • このエントリーを含むはてなブックマーク
  • このblogをはてなアンテナに追加
  • このエントリーのはてなブックマーク数

関連するエントリー

ワード

このエントリーのダイレクトリンクURL:

このエントリーのトラックバックURL:

【注意】重複トラックバック防止プラグインにより、同一エントリーに対する同一のトラックバックは登録されない設定にしています。また2006年から、本エントリーへのリンクのないトラックバックも登録されない設定に変更しました。

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)



アクセス解析 アクセス解析 レンタルCGI