公認会計士試験に合格しても監査法人に就職できない悲劇
2004年07月29日
昨日、法科大学院を卒業しても、かなりの割合の卒業生が司法試験に合格できずに、一般企業に就職してその知識を活かして行く道を歩むことになりそう、という内容を投稿しました。司法試験と並んで難関資格と称される、公認会計士試験の方も、最近は状況に大きな変化が見られるようです。公認会計士試験合格者の中でも、これまで当然とされていた監査法人に就職できずに一般企業への就職を選ばざるをえなくなった人が増えています。
まず、最近の厳しい公認会計士試験合格者の状況を述べた Yomiuri Weekly の記事の一部を抜粋してご紹介します。
これまで公認会計士二次試験の合格者たちのほとんどは、合格発表と同時に監査法人への就職が決まっていた。ところが、今年は100人以上が就職できていないという空前の「就職難」が表面化しているのだ。その背景には、昨年10月の合格者が前年よりも114人多く、過去最多の1262人だったという事情がある。合格者数は今年も増加し、就職浪人はさらに大量に出る見通しだ。
公認会計士第二次試験合格者は年々、増加してきた。だが、近い将来、その増加ペースに、より拍車がかかっていく。2002年12月に金融庁が「2018年ごろまでに公認会計士総数が5万人規模になることを見込む」との構想を発表しているからだ。公認会計士総数は今年6月現在で約1万5500人に過ぎない。また、この構想によれば、二次試験合格者は、今よりさらに増え、年間2000~3000人規模となる。監査法人の顧客となる企業の数がどんどん増えでもしない限り、就職浪人問題が今後ますます深刻化するのは明らかだ。
公認会計士第二次試験に合格しても、即座に公認会計士になれるわけではない。合格者は「会計士補」となり、2年以上の実務経験のあと、最終試験にパスして初めて「公認会計士」となる。二次試験に合格しても、監査法人に就職できず、一般企業に就職した場合、実務経験を十分に積めるかのかどうか。下手をすれば、「公認会計士」になる道が閉ざされるのではないかという不安があるのだ。
東京情報大学総合情報学部で会計学を担当し、公認会計士資格を持つ小島義輝教授は、公認会計士「5万人時代」について、「今は世間が、公認会計士を単純に会計監査人としか見ていません。人数が急増すれば、若くて優秀な有資格者は、インターンシップを過ごす場所として監査法人をとらえます。そして監査よりも魅力的なポジションへと雄飛します」と言う。
さらに司法試験との対比から、「司法試験合格者全員が判事になるわけではなく、検事、弁護士、法学者などがいなければ法曹はなりたちません。それと同じで、監査人だけで経済社会は回りません。事業法人、金融機関、投資顧問会社、コンサルティング機関、官公庁、大学、研究機関などが公認会計士を求めているのです」と指摘している。
株主への説明責任や企業統治の透明性の確立、国際的な会計基準への対応などの課題を考えると、一般企業でも、公認会計士レベルの専門知識を持った人間が必要とされてくるのは明らかです。これまで監査法人に取り込まれていた、公認会計士が一般企業にも就職して、わが国の企業全体の会計システムのレベルがアップすることは、望ましい方向性であることは間違いありません。
しかし、当の公認会計士試験合格者が、本音でどう考えているかは別の話です。 やはり、一般企業に就職することを目的に、難関資格の公認会計士試験の勉強をしてきた人間は、ごく少数ではないでしょうか。正直に言えば、試験さえ合格すれば、ある程度の収入と難関資格保持者としての名声が約束されると思っていたはずです。企業内公認会計士が、普通のサラリーマンとは違って、どの程度の処遇を受けられるかはよく知らないので、何ともいえないところはありますが。
それにしても、昔のように資格試験にさえ合格すれば、その後は安泰な一生が送れるような甘い時代ではなくなっています。国家資格さえあれば、「先生」とちやほやされることもなくなるのでしょう。最終的に問われるのは、本人の実力ということになるので、明確なビジョンをもって挑戦すべき資格を選択しなければなりません。とりあえずのつもりで取った資格が、本人のキャリアにはあまり役に立たずに、一生後悔するような悲劇は避けたいものです。
こういう状況が進むと、一般企業の法務部や経理部にも、「先生」がゴロゴロいるような時代がくるのも、意外と近いのかもしれませんね。
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