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企業統治(コーポレートガバナンス)は創業者共通の課題

2004年08月04日

8月2日の日経新聞朝刊7面に、相次ぐ米国企業トップの不祥事の対策として生まれた、企業改革法の記事が掲載されています。企業改革法とは、インサイダー取引や、相場操作などの証券詐欺に対して厳罰を科すもので、今年で施行から2年が経過しました。この結果、米国の企業統治(コーポレートガバナンス)改革は、急速に進んでいるようです。

不祥事で訴追された米国企業の幹部とその不正内容は、次のようなものです。

  • エンロン(エネルギー) ケネス・レイ会長兼CEO 
    10億ドルの利益水増しなど簿外取引で会計操作。2001年12月破綻。
  • ワールドコム(通信) バーナード・エバースCEO 
    110億ドルの利益水増し。米最大の負債総額410億ドルで2002年7月破綻。
  • アデルフィア・コミュニケーションズ(通信) ジョン・リガス会長兼CEO
    利益水増しと会社資金の不正流用。2002年6月破綻。

これらの3つに事件に共通するのは、不正事件を犯した経営トップが、いずれも創業者であるということです。なぜ創業者には、こういう事件が多いのかを分析した記事を、ウォートン・ビジネススクールの A Growing Corporate Club: The Founding Felon に見つけました。次にその内容の一部を要約します。

  • 創業者は、事業を軌道に乗せることに忙殺されて、企業倫理のトレーニングを受ける余裕がなかった。
  • 創業者は、自分の持てるすべての時間とお金を事業につぎ込んできたので、公私の区別ができなくなっている。
  • 創業者は、古くからの友人を幹部に登用するので、どうしても厳格な社内規律が生まれにくい。
  • 創業者は、株式公開後も筆頭株主として絶大な影響力があるので、一般の企業のように株主がその暴走を抑制することができない。

このような理由により、創業者の影響力が強い企業ほど、企業倫理が守られにくい傾向があるようです。これは特に米国企業に限定された話ではなく、世界共通な問題でしょう。例えば、次々と不祥事が暴露され、最後は創業者の刑事事件にまで至った武富士にも、そのような不祥事を生む企業風土があったものと考えられます。

創業者がトップにある企業は、企業統治と言う観点からは、必ずしも望ましいものではないようです。 だからといって、創業者がトップに残っている企業には、必ずしも悪い話ばかりしかないわけではありません。財務上の経営効率は、一般企業よりも高いスコアを示す調査結果があります。これは、創業者の起業家精神とコミットメント、ビジョンが従業員全体に共有されやすいからです。また、中には企業統治の面でも、一般企業よりも優れている企業もあります。しかし、創業者の子息が権力を握るようになると、このスコアは一転悪化することになります。面白いことに、この「2代目の危機」を乗り越えることに成功した企業は、またスコアは上昇に転じます。

創業者がトップにある企業は、いかにその専横を防ぐかが今後の課題です。 そこで、重要になるのが外部の第三者機関による監督です。日本でも、最近話題になりつつある、委員会等設置会社という形態も、外部の人間による企業統治を強化するために導入されたものです。

次に、週刊ダイヤモンドに掲載された、キッコーマン会長の茂木友三郎氏のインタビューをご紹介します。代々創業家の茂木一族が社長を務めてきたキッコーマンは、この度創業家以外から社長を選出しました。この人選は、社外取締役2名と茂木氏で構成する指名委員会が決定したものです。茂木氏は1961年に、当時は今ほど一般的ではなかったMBAをコロンビア大学で取得しています。そういった経歴から推測すると、もともと米国流の企業経営方式の導入に、積極的なのではないでしょうか。

週刊ダイヤモンド20040807週刊ダイヤモンド 2004年8月7日号
編集長インタビュー 茂木友三郎
次期社長を決めるのはトップ一人ではなく、機能する指名委員会であるべきだ

――最近、企業不祥事がたて続けに起きていますが、コーポレートガバナンス(企業統治)の観点で、いちばん気をつけなければならないことはどんなことですか。
(茂木)日本企業は、コーポレートガバナンスが効いていないために不祥事が発生していると思います。
――たとえばどんなことですか。
(茂木)日本企業は競争秩序がない、とよくいわれます。米国の会社が安売りすると、利益が減って株主のためにならんじゃないか、と怒られますよね。
一方で、日本では小売業も卸売業もメーカーも、皆が安売りに走っちゃう。歯止めがないわけですよ。仮に、コーポレートガバナンスが効いていたら、適正利益が出る水準に落ち着くはずです。でも、効いていないから、競争秩序がないままに、空中戦で戦う。そんな市場環境だから、違法な手段を使って利益を捻出しようと、不祥事に発展している例もあるのではないでしょうか。
――打開策はないのでしょうか。
(茂木)コーポレートガバナンスを効かせるために、社外取締役の存在は有効です。委員会等設置会社に移行するかどうかはともかくとしてね。
――社外取締役は役に立たない、という意見もありますよね。
(茂木)確かに、細かいことを聞いたってわかりませんよね。でも、社外取締役は、いわば監査役なんですね。取締役会に緊張感を与える存在です。私は十分に役に立っていると思いますよ。
懸念しているのは、社外取締役の引き受け手がなかなかいないんじゃないかということです。私は6社の社外取締役、アドバイザリーボード・メンバーを引き受けていますが、勉強になりますよ。

創業者の犯罪と言えば、先月インサイダー取引がらみで訴追されていたマーサ・スチュワートに、禁固(house arrest)5ヶ月の実刑判決が下りました。たまたま私も、判決後初めて本人がテレビ出演した CNN の Larry King Live を見ました。米国内では、この判決に対して、結構世間の同情も集まっているらしく、本人も意外と元気な様子でした。時間に上限が設定されているのですが、仕事も続けることができるようです。

そうはいっても、疑惑発覚以降彼女の会社マーサ・スチュワート・リビング・オム二メディア(MSO)の業績の下降は止まりません。同社の月刊誌の広告収入は、第1四半期で54%落ち込み、過去18ヶ月で発行部数も22%減っています。もともと、『カリスマ主婦』としての彼女のイメージで売っていた雑誌ですので、当然の結果でしょう。なお、彼女のエッセイのページは、『今月のクッキー(Cookie of the Month)』に変更されてしまいました。
日本の店舗『マーサ・スチュワート有楽町店』も閉店します。8月8日まで、ファイナルバーゲンをやっていますので、ご興味のある方はどうぞ。

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コーポレート・ガバナンス改革コーポレート・ガバナンス改革
中谷 巌 (著)
この本は、多摩大学ルネッサンスセンターで行われた公開講座を再現したもの。オリックスの宮内会長や弁護士の久保利氏をはじめ、日本におけるコーポレート・ガバナンス界の第一人者が、それぞれが異なった専門性と立場からコーポレート・ガバナンスを論じている。
マーサ・スチュワートの栄光と影マーサ・スチュワートの栄光と影
その野望だけを胸に、貧しい移民の子から 「カリスマ主婦」 として自らの名前で世界的なブランドを立ち上げ、タイム・ワーナー社やKマート社とビジネスを展開し、タイム誌 「アメリカで最も影響力を持つ25人」、フォーチュン誌 「もっともパワフルな女性50人」 などにも選ばれるまでに富も名声も極めた女性マーサ・スチュワート。成功への階段を駆け上る彼女は、本当にすべてを手に入れたのだろうか? マーサ・スチュワートの半生に迫る。
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