オンライン・カウンセリングにはビジネスモデルのエッセンスが一杯
2004年08月06日
ここ最近、ビジネスパーソンのメンタルヘルスに関する話題を取り上げてきました。その問題に応えるニュー・ビジネスの話が、8月5日の日経流通新聞MJに掲載されましたのでご紹介します。
ピースマインド――海外在住の日本人の悩み解消(全開ニュービジネス) 2004年8月5日 日経流通新聞MJ 21面
「エステに行くつもりでカウンセリングも受けてほしい」。心のマッサージルームを標ぼうするピースマインド(東京・新宿、荻原国啓社長)には、職場のストレスや恋愛関係、不登校など様々な悩みが持ち込まれる。24時間、365日利用可能なオンラインカウンセリングを強みに、7月に海外在住の日本人のためのメンタルサポート拠点を開設した。「日本人のグローバル化を手助けしたい」と意気込む。マンハッタンのカウンセリングルームでの対面カウンセリングのほか、インターネット経由のIP電話を活用した電話カウンセリングサービスも予約制で始める。米国在住のカウンセラーだけでなく、日本のカウンセラーにも通話料を気にせずに相談できる仕組みだ。時差も活用し、できるだけ多くの対話時間を持てるように工夫する。
見逃しそうな囲み記事ですが、新しいビジネスモデルを開発する時のエッセンスが含まれてます。以下に、このビジネスモデルをマーケティングの視点から分析してみます。
・エステ感覚の気軽なカウンセリング
リストラへの不安、その結果残された社員への業務のしわ寄せ、成果主義の導入による短期的な目標達成へのプレッシャーなど、ビジネスパーソンが心の病気を患う要因は、増える一方です。こうした状況に対応して、企業側でも病気の早期発見と適切な処理をとるために、顧問医のカウンセリングを受けるように指導しています。
従業員側からすれば、守秘義務があるとはいえ、どうしても会社が用意した顧問医に相談するのは、今後の出世への影響が懸念されて、気が進まなくなるものです。そういった場合は、自分で精神科の開業医や大学病院の診療内科を探すことになります。しかし、軽度の自覚症状しかない場合は、いきなり医者の診断を受けるのは、敷居が高くて躊躇してしまうのではないでしょうか。
人間誰しも、心の変調を感じることがあるはずです。軽い心の変調に気づいた時に、気軽に相談できるサービスあれば、試しに利用したいと思っている人もかなりいるはずです。そういう潜在的なニーズに応えるために生まれたのが、同社の提供するオンライン・カウンセリングのコンセプトでしょう。
・海外在住者をターゲットに
ビジネスのグローバル化により、日本企業の海外駐在員への要求レベルも高度化しています。企業側はロー・コストオペレーションを追求するため、駐在員の数も最低限に押さえようとします。その結果、激務を強いられる駐在員の中にも心の病を抱えている人が、増え続けることになります。回りは現地採用者ばかりで、自分の悩みを打ち明けることができない職場環境もあるでしょう。単身赴任であれば、孤独感がなおさらつのります。家族を帯同した場合でも、家族が現地社会に適合できないなど、別の問題が生じてきます。このように考えれば、海外駐在のビジネスマンが心理カウンセリングを必要とする割合は、国内のビジネスマンの数倍にもなるのではないでしょうか。
・最新のIT技術を利用
メンタルケアのサービスは、対面でのカウンセリングが基本です。しかし、日本在住のカウンセラーの助言が必要になる可能性もあります。その場合は、料金の安いIP電話を利用すれば、基本サービスを補完することができます。
次の記事に見られるように、元々ピースマインド社は、対面サービスが主流であったメンタルケアの業界に、IT技術を導入するのに積極的な企業です。
ピースマインド、派遣社員に心のケア、JR東日本系800人に、ネット・対面式提供。
2004年6月1日 日経産業新聞 1面
メンタルヘルスサービスのピースマインドは、人材派遣のジェイアール東日本パーソネルサービスと「EAP(従業員支援プログラム)」の提供で契約した。JR東日本パーソネルと契約する約八百人の派遣スタッフに心のケアサービスを6月から提供する。人材派遣会社のEAP導入は国内初。全派遣スタッフ向けに、ホームページ経由でピースマインドのカウンセリングサービスや、ストレス度を自分で調べられるチェックサービスを包括したEAPを提供する。手軽なネット経由のストレスチェックを毎日受け、必要があればカウンセリングを受けることで症状の悪化を未然に防ぐ。
ネット経由のカウンセリングでは「仕事とキャリア」「恋愛」など十種類から自分に合った内容を選択して受けられる。必要に応じて電話や都内に計100カ所ある施設で対面式のカウンセリングが受けられる。
・アウトソーシングのビジネス・トレンドに注目
企業がコスト削減のために、定例業務を中心に外部の人材派遣会社を利用することが当たり前の時代になってきました。派遣労働は、企業への帰属意識が持てないことによる疎外感や、将来の雇用不安などを要因とした、ストレスが溜まりやすい就労形態です。しかし派遣社員が、派遣先企業が自社の社員対象に提供するカウンセリングサービスを受けることはできません。やはり、派遣社員のメンタルケアは、人材派遣企業側が考えるべき課題です。こうした状況を分析から、派遣会社の登録社員にも、カウンセリングサービスの需要があることに注目して、新しいビジネスを展開したわけでしょう。
ピースマインド社のビジネスモデルは、時代のニーズを的確に分析した結果、誕生したものです。 しかし、このビジネスモデルによって、同社が今後も成長を続けることができるかどうかは、むしろもっとベーシックなところにあるのではないでしょうか。それは、いかにして優秀なカウンセラーを確保して、サービスを通してユーザニーズをくみ上げていくかです。必ずしも正解があるわけではない、人間の心の問題を扱う以上、顧客満足度を維持・向上することは、簡単なことではないはずです。
同社のビジネスモデルは、既存のサービスではカバーできなかったニーズを狙った、隙間(ニッチ)ビジネスです。
このビジネスが発展を続け、それなりの規模にまで成長すれば、隣接業界からの参入も当然予想されます。そうした場合、ピースマインド社が生き残っていけるのか、同社の今後に注目したいところです。
最後に、冒頭の日経流通新聞に掲載されていた、同社の起業にいたるエピソードと、現在提供しているサービス内容に関する部分を、参考までに紹介しておきます。
設立は1998年。荻原社長が慶応大学経済学部の学生時代に、21歳で立ち上げた。学生ネットワークを生かし、人材コンサルタントや人材紹介業を、弟の荻原英人副社長や米メジャーリーグベースボール選手界公認の代理人である佐藤隆俊氏らと始めた。米国では野球選手を育てるのに、肉体以上に精神面の強化を重視する姿勢を見て「日本でもカウンセリングがごく普通になるようにしたい」(荻原社長)と事業を転換。
全国約300人のカウンセラーを組織、カウンセラーは自宅などから電話相談やインターネットのメール相談に応じる。特定非営利活動法人(NPO法人)でメールカウンセリングのための教育も実施。2001年から直営カウンセリングルームを渋谷のホテルや横浜の百貨店内など、気軽に利用しやすい所に設置した。
主な利用者は30代の働き盛りの男女で、年間約4万人が直接カウンセリングを受けるほか、企業のEAP(従業員支援プログラム)も受託、全国250万人が利用する。心理、カップル・家族、キャリアカウンセリングなど、メニューもあり、対談式は30分で6300円。電話やメールも相談内容によるが「同じ程度」と明朗会計を強調する。
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