コカコーラ社の自販機CMのターゲットは一般消費者ではないと推測する
2004年08月24日
今年の夏は、暑さに負けて去年の倍以上のソフトドリンクを飲んでいます。私の場合は、普段は非炭酸の茶系飲料しか飲まないのですが、今年に限っては、炭酸系の飲料にも手が出てしまいました。この分だと、さぞかしソフトドリンク業界も、売り上げが上がってウハウハ状態になっているのではないでしょうか。今週発売の週刊ダイヤモンドの記事を読んでも、実際にかなりの売り上げが増えていることが分かります。
昨年の売上を落とした企業の多くが、今年は逆に気炎を上げている。本来7~8月に本格的に売れる盛夏商品が、今年は前倒しで売れに売れたのだ。
たとえばドトールコーヒーでは、アイスコーヒーの7月の売り上げが、前年同期比50%も増えた。また、セブンーイレブン・ジャパンも、7~8月のソフトドリンク、かき氷、冷凍食品などの売り上げが、昨年と比べて約約50~100%と絶好調。
やはり、飲料業界がこの猛暑の恩恵を受けているのは事実です。店頭販売に限らず、街角の自動販売機の売り上げもうなぎ上りでしょう。自販機といえば、最近気になっているCMがあります。そのCMに関する記事『日本コカコーラ「ラブミー!ベンダー!!」』が、8月24日付けの日経流通新聞MJの3面に掲載されました。
真夏のオフィス街で男性がのどの渇きを訴えて倒れる。彼を助けようとする通りすがりの女性は自動販売機を発見、冷たいドリンクを与えてハッピーエンド――。筋立ては単純だが、自販機に「ベンダー!」と叫びかける鶴田真由が印象的だ。
日本コカコーラのCMだが、商品名は一切出ない。日常の中で自販機が必要とされる瞬間を誇張することで、消費者にその存在を再認識してもらう狙い。あえて耳慣れない「ベンダー」という呼び方を強調した。
流通関係者から「まさか自販機の宣伝をするとは」と驚きの声が上がるなど手応えには満足。今後も自販機への親しみやすさを高めるような企画を打ち出す方針とか。
これを読んで何となくこのCMの狙いが分かりました。これは、一般消費者よりも、流通業者(コカコーラの場合はボトラー)を対象にしているようです。その理由の1つは、自販機に対してベンダーという業界用語を使っている点にあります。自販機は英語では Vending Machine、飲料業界ではベンダーと呼ばれています。しかし、ベンダーの意味するところは、業界によって違います。IT業界では、ベンダーは販売業者を意味します。ハードウェア・ベンダー、ソフトウェア・ベンダーなどと使います。もっと広義に解釈して、仕入れ業者の指す場合もあります。「ベンダー・マージンを下げるように交渉せよ」と言ったりします。
そう考えると、一般消費者が、いまさら「ベンダー=自販機」ということを理解したとしても、何らマーケティング上の意味があるとは思えません。これは、コカコーラ社が最大の販売チャネルである、自販機を重要視していることを伝える、ボトラー向けのメッセージだと思います。最近はチャネル別の売上でも、ソフトドリンクの販売は、コンビ二が増加傾向にあります。大ヒットになった、花王の「ヘルシア緑茶」は、コンビニ専用商品です。
このヘルシア緑茶のヒットが象徴するように、最近のソフトドリンクメーカーの成功は、コンビニで売れる茶系飲料、機能性飲料の商品開発力にかかっています。コカコーラ社の最近の商品戦略も、この線に沿ったものです。大豆ペプチド飲料の「パワーエイド」、ウーロン茶の「shinoa」、食物繊維配合の混合茶「颯爽」などは、コンビニ・マーケットをターゲットにした商品です。率直に言って、この手の商品は、自販機ではあまり売れません。
このようなコンビニ重視の商品政策は、ボトラー各社にとっては余り嬉しくないものです。ボトラーは、何としても利益率の高い自販機の売上を伸ばしたいのです。そのため、各社は自販機の設置、自販機へ製品を充填するルートセールスマンに対して多大な投資をしてきました。逆に言えば、コカコーラ社の競合優位は、日本全国に構築した自販機網にあったわけです。主要販売チャネルの自販機からコンビニへのシフトが加速すると、この自販機網が遊休資産化して、収益を圧迫することになります。
今回のCMは、自販機離れを思わせるコカコーラ社の商品政策に対して、不満と危機感を抱いている全国のボトラー各社に対する、依然として自販機チャネルを重要視するとのコカコーラ社からのメッセージです。そうは言っても、自販機からコンビニへシフトした、消費者の購買パターンの変化を、いまさら止めようとしても無理な話です。 このCMを見て、コンビニより自販機で買おうと思い直す消費者も皆無でしょう。24時間営業のコンビニが少なかった時代には、確かに自販機はいつでも商品が 買える唯一のチャネルでした。しかし、いまや消費者は、本質的には意味のないことですが、長期間保存可能な飲料にさえ新鮮な商品を求めます。そうすると、いつ充填された商品かわからない自販機より、鮮度管理に厳しいコンビニに分があることは間違いありません。
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