日経ビジネス「ライブドアの虚像と実像」を読めば、ライブドアを理解できるか?
2004年09月07日
近鉄球団買収提案以来、マスコミを賑わすことが急に多くなったライブドアです。Tシャツ姿で一躍有名になった、堀江貴文社長のマスコミ各社の取りあげ方も、ベンチャー企業の若手社長としてもてはやしたり、キワモノ扱いしたり、「社長もいろいろ」というトーンが強いものです。堀江社長が表層的にしか語られないのは、ライブドアという会社のビジネスモデルが、一部の熱狂的な株式投資家以外には、理解されていないからでしょう。業界関係者の間でも、同社の評価には、いまだ定まったものはないように思います。
今週発売の『日経ビジネス』が、ビジネス雑誌としては(おそらく)初めてライブドアのビジネスの実像に迫る記事を掲載しました。特に今回は、堀江社長以外のライブドア社の幹部の発言にも触れられており、同社の実情を知ることができます。その記事の中から、関係者の発言の部分を中心にご紹介します。
堀江は、中核事業は何かと聞かれるたびに、いつも声を荒げて、こう答える。「中核事業なんて作る必要はない。中核は何か言ってしまうと危険だ。その事業をやらなくなったら変な会社と思われてしまうから、言わない方がいい。評価の歯車が狂うと株価を下げられてしまう。イメージが大事だ。」
そもそも堀江が周囲に語った起業の理由は、「宇宙に行ける会社を作ること」。その実現のために、いかに会社を成長させていくか。堀江は手段を選ばない。「奇抜な手を使わないとジャンプアップできない」。
株式の100分割に関して、ライブドアの経営企画管理本部担当、執行役員副社長の熊谷史人は、「通信料金請求代行業のインボイスが21分割を発表し、負けたくなかった。歴史に残ることをやりたかった」と振り返る。
執行役員上級副社長の羽田寛によれば、買収目的は「1つ目は利益の上積み、2つ目は顧客獲得、3つ目は金融事業の拡大」。買収金額は安ければ安いほどいい。
「2003年春くらいから、結局はヤフーのようなポータルサイトに利用者を持っていかれると気づいた」と、ポータルサイト運営を担当する執行役員上級副社長の伊地知晋一は振り返る。個人顧客を集めるには、ヤフーのようなポータルサイトを作り、囲い込む方が効率がいい。そのためには、ヤフーを真似て、ラブドアのサイトに個人向けのサービスを取り揃える。堀江は「ヤフー自体が他のサービスを真似て取り込んできた。ヤフーと同じことをやるのが成功への近道」と言う。ライブドアのサイトがヤフーと似たデザインなのは偶然ではない。
資金と技術は何とかなるが、圧倒的に足りないのは知名度だった。堀江は知恵を絞るよう幹部らに指示。その後、株主を増やして中核となる顧客を増やすと言い出した。時価総額を急増させた株式の大幅分割も、その目的にかなう。堀江は「ヤフーを超えるため、まず株主数で勝つために100分割した」と強調する。実際にライブドアの株主数は12万人を超え、ヤフーの5万1000人を上回った。
もっと知名度を上げる方法はないか。そこに舞い込んだのが、プロ野球球団の買収案件だった。球団買収の提案書には、球団株式を発行して私設取引所での株式取引を可能にしたり、ファン投票などでの株主優待、選手への報酬にストックオプションを付与するといった構想を盛り込んだ。要するに、株券を活用して、野球に独自のギャンブル性を持ち込む計画だ。
ライブドアの個人株主第2位である榎本大輔は「戦略がないのが戦略という会社。でも堀江は結果的に時流に乗っている」という。最高財務責任者の宮内は言う。「マスコミは話をすぐ盛り上げるでしょう。社内では、絶対いつか叩ける時が来るから、次に何をすべきか材料をださないといけないなと言っていますよ」。
この記事を読んで、ライブドアという会社が理解できました。正確に言えば、この会社を理解しようとしても無駄であることが理解できました。社長自らが事業ドメイン(領域)を規定することを否定し、「いつか宇宙に行けるようになる」以外には、明確なビジョンや戦略もありません。いくら理解しようと努力しても無理でしょう。しかし、株価の上昇と、株主数の増加といった目標はあります。これは、ひところソフトバンクの孫正義氏が掲げていた「時価総額経営」に通じるところがあります。株式交換を多用して次々と企業買収を繰り返して、事業を拡大していく手法もソフトバンクそのままです。
事業領域に制限を設けずに、自社の投資基準に合致さえすれば、買収を決断するというやり方は、ある意味ではスピード感のある経営方法です。反社会的な事業でない限りは、投資リターンが期待値を上回れば、株主利益にも沿うものでもあります。この一見無軌道とも思える経営方法が、同社の強さの秘密なのかもしれません。こだわりがないといえば、他社のビジネスモデルをそのまま踏襲することにも、何のためらいも見せていません。堀江社長自身が、ポータルサイトとしてのヤフーのビジネスモデルを真似していることを、公言しているくらいですから。
世間の注目を急に集めだしたとはいえ、現在のライブドアはヤフーやソフトバンクのフォロワーでしかない存在でしょう。ヤフーやソフトバンクを脅かすチャレンジャーになるには、やはりオリジナルのビジネスアイデアが必要です。もし構想通り、プロ野球ビジネスに参入できれば、そのチャンスは広がる可能性もあります。毀誉褒貶相半ばするところもある、孫正義氏のビジネス手法ですが、同氏が旧態依然とした業界に風穴を開けてきたことは、事実として評価されるべきだと思います。ナスダック・ジャパンの開設が東証マザーズを誕生させ、新興市場の活性化をもたらしました。また、イートレード証券もわが国のオンライン証券会社の先駆けとなり、取引手数料の劇的な低下を実現しました。わが国がブロードバンド大国となったのも、Yahoo BB が登場したからです。
ライブドアの堀江社長にも、既成の業界慣行に挑戦するような、ひと暴れを期待します。極論すれば、結果として消費者の利益に貢献するこができれば、ライブドアという会社そのものは、時代のアダ花のように消え去ってもいいと思います。それなりの貢献が残せれば、数十年後には、堀江氏が念願する宇宙旅行の夢が実現できるようになっているのではないでしょうか。
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