iPod vs Walkman だけでは語れない携帯オーディオプレーヤー市場の行方
2004年09月15日
携帯オーディオプレーヤーのマーケットが順調に拡大しているようです。オリンピック特需を先食いした形で終わった、薄型テレビやDVDレコーダーの売上が既にピークを過ぎたと伝えられているのとは好対照です。したがって、最近は携帯オーディオプレーヤーに関する記事を目にする機会も多く、中でもアップルの iPod の他を圧倒する強さが注目です。今回は、このマーケット動向に関係した記事を紹介します。最初は、『iPodが後押しをする携帯オーディオプレーヤー市場景気』です。
BCN総研によれば、携帯オーディオプレーヤー市場は7月に大きく拡大し、8月の販売実績は半年前の2月に比べて約1.8倍になったという。この急激な変化には、アップルの「iPod mini」と「第4世代iPod」が大きく関係しているようだ
7月に発売されたアップルの「iPod mini」および「第4世代iPod」が需要増に大きく貢献したのに加え、他メーカーからも6月から7月にかけて新製品の投入が相次ぎ、その結果として市場全体が活気づいたと、同社は分析している。
メーカー別販売シェアでは、アップルが他社を圧倒しており、8月は40.0%に達した。2位以下は拮抗し、シェア争いが激化している。8月の製品別ランキングでは、第4世代iPodが1位、2位にランクインした。全体的な傾向としては、HDDやフラッシュメモリを内蔵した小型モデルが上位を占めているが、一方で、CD-R/RW再生対応のポータブルCDプレーヤーモデルなども変わらず需要があるようだ。
続いて、携帯オーディオプレーヤーに関した消費者調査の結果です。 情報源は、同じく itmedia 『ポータブルオーディオプレーヤー、好きなブランドはソニー、欲しい製品はiPod』。
C-NEWSのポータブルオーディオプレーヤーに関する意識調査によると、好ましいブランドイメージはソニー、具体的に欲しい製品はiPodという傾向が見られた。また、リオ・ジャパンの最軽量オーディオプレーヤー「Rio Carbon」は、ブランド認知度の低さがマーケティング上で大きな弱点となっているようだ。
ソニーに期待する消費者の声は、相変わらず強いものがあります。こと携帯オーディオプレーヤー・マーケットに限っては、ソニー神話はいまだ健在といえます。iPod に遅れを取ったとはいえ、ソニー側もブランド力を武器にした反攻策に転じるようです。 情報源は、2004年9月14日の日経流通新聞MJ1面『ソニー「ウォークマン」、ブランドで追走、MD含め、総合力の勝負(家電サバイバル)』
ソニーは7月10日、アイポッドと同じハードディスク(HD)内蔵の携帯音楽プレーヤー「ネットワークウォークマン」を発売した。アイポッドに遅れること2年8カ月。ソニーの戦略は金看板であるウォークマンブランドを前面に出し、繰り返しソニー製品を買ってくれる「ソニー信者」を取り込むことにある。現在でもMDウォークマンが国内全体で年間約300万台売れるため、ネットワークウォークマンだけでなく、バイオポケットなどソニーが展開している他ブランドも含めた携帯音楽プレーヤー全体での勝利が狙いだ。ソニーマーケティングの川野浩一マーケティングマネジャーは「これからは商品の幅の広さとブランド力が物を言ってくる」と話す。
ブランドと並ぶもう一つのカギは音楽のダウンロード販売。ネットワークウォークマンはグループ会社のソニー・ミュージックエンタテインメントなどが出資するレーベルゲート(東京・港)が運営する国内最大の音楽配信サイト「Mora(モーラ)」からパソコン経由で簡単に音楽が取り込める。1曲平均210円だが、昨年後半から一部の曲の無料ダウンロードサービスも始めた。 量販店調査では「モーラに対応しているのでソニー製品を選ぶ人は多い」などグループ力を評価する声が多かった。
日本のメディアの報道だけを読むと、「現状ではアップルの優勢は続きそうだか、 ブランド力に物を言わせたソニーの反撃が始まる」という流れになります。正確に携帯オーディオプレーヤー・マーケットの将来を予想しようとするのであれば、これだけの情報では十分とはいえません。日本の国内事情だけではなく、グローバルな視点からマーケットのトレンドを考えることが必要でしょう。特にハイテク製品に関しては、技術標準とサービスモデルの動向を予測することが大切です。そう考えると、ここでも鍵となるのはマイクロソフトのマーケティング戦略です。 次に、マイクロソフトとアップルという軸で、携帯オーディオプレーヤー・マーケットを分析した記事をご紹介します。情報源は、Wharton Business School の Combat in High C: Microsoft vs. Apple です。
マイクロソフトは Windows Media Player のベータ版と、Napster、Musicmatch、MusicNow、Wal-Mart Music Downloads にアクセスできる音楽サービスを開始することを発表した。このサービスでは、50万曲の中から1曲あたり99セントでダウンロードできる。しかも、70種以上の携帯オーディオプレーヤーと互換性があるフォーマットを採用する。これは、アップルの iTunes に正面から戦いを挑むもの。iTunes は、楽曲数では100万曲とマイクロソフトの2倍を誇るが、再生できるプレーヤーは自社の iPod のみ。
今回のマイクロソフトの参入がアップルの牙城を脅かすのではないかと見る専門家も多い。その理由として、アップルのビジネス戦略の脆弱性を2点指摘している。
1つは、アップルの音楽ビジネスの目的が、あくまでもハードウェアの iPod を売ることで、ソフトウェアの iTunes は、その手段に過ぎないという点にある。このため、アップルは iTunes のデータフォーマットを他社に公開しようとはしない。このままでは、1980年代に Macintosh で犯した失敗を再び繰り返す恐れがある。アップルが 自社のPCのOS の仕様を明かさないでいる間に、後発のマイクロソフトに業界標準の座を奪われてしまった。今回も iTuenes の独自仕様に固執し、他社にライセンスを供与しない戦略をとり続ければ、提携ベンダーの力を借りたマイクロソフトに逆転されてしまうことも十分に考えられる。
現状ではマイクロソフトの製品が品質が劣っていると考えて、甘く見たりすると、大きな間違いを犯すことになる。マイクロソフトの戦略は、「最初にターゲット製品を絞り込み、とりあえず不完全でも製品を出荷して時間を稼ぐ。その後莫大な研究開発費を投じて、3世代目あたりの製品で先行者から市場を奪う」ことが基本。この戦略は、表計算、ワープロ、ブラウザなど多くの消費者向け製品で成功したことが証明されている。
アップルが抱えている2つ目の戦略上のもろさは、ダウンロードサービスに特化している点にある。将来的には、1曲ごとにダウンロードしてハードウェアに取り込むよりも、ストリーミングサービスが主流になると予測する見方もある。 こうなれば、ストリーミングに対応できない iPod には不利な展開だ。 一方、ストリーミングサービスでの使用を前提にしたプロテクション機能を盛り込んだ Media Player の方が一歩先を走っている。
正直にいって、私は携帯オーディオプレーヤー関係の技術動向には、詳しくありません。したがって、この市場でも「アップルの垂直統合モデル」が「マイクロソフトの水平分業モデル」に屈して、PC市場の二の舞になるのか、予想もつきません。もし、マイクロソフトのビジネスモデルがこの市場でも有効であることが証明されれば、最終的には携帯プレーヤーでも「ハードウェアのコモディティ化」が進むはずです。そうなれば、デルあたりが参入してくるでしょう。
また、携帯電話の動向も忘れてはなりません。IP携帯電話が登場し、データ通信の定額制が当たり前になったりすると、ダウンロードにしろ、ストリーミングにしろ、何でも取り込めるスーパーデバイスが誕生する可能性があります。そうなると、微細加工技術に優れた日本企業に勝機が訪れるのかもしれません。
この投稿の結論は、単純に「iPod vs Walkman」という図式だけで、携帯オーディオプレーヤー・マーケットの将来を予想するのは難しいと思う、ということになります。
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