ビジネスの科学的な意思決定を助けるのがマーケティングリサーチの役割
2004年09月17日
ビジネスの本質を見極めようとする時に、英語ではよく art or science という対比が使われることがあります。例えば、Account Management: Art Or Science? のように用いられます。 これは、そのビジネスに要求されるのは、「一瞬の閃きによる芸術的な勘(art)」の要素と、「科学的な理論(science)」の要素の、どちらが強いかという問いかけです。答えは、たいていの場合「両方とも必要」ということになります。ビジネス戦略系の書籍の中には、過去の成功要因を論理的に細かく分析したものがあります。ケーススタディはマーケティングの分野においても、最も有効な研究手法です。しかし、事例研究はある程度時間が経過した後で冷静になって初めてできることです。実際のビジネスの現場で意思決定を迫られている当事者には、すべての関連データを分析して、100%確実な理論を構築する時間的な猶予は与えられません。最終的な意思決定は、どうしても当事者の勘に頼ることになります。そういう側面を表現する言葉として、ビジネスは科学であり、芸術であると呼ばれるわけです。
ビジネスの意思決定のために必要な材料を収集するのが、マーケティング・リサーチです。このブログでも、過去に取りあげたこともある、インターネットを利用したマーケティング・リサーチの最大手、マクロミル社の杉本哲哉社長のインタビュー記事が、本日の新聞に掲載されました。情報源は『マクロミル社長杉本哲哉氏――スピンアウト型(アンダー49の経営者像)』(2004年9月17日 日経産業新聞 26面)です。
2000年、32歳でインターネットを使った市場調査会社マクロミルを設立。情報技術(IT)バブル崩壊の逆風をはねのけて今年1月、東証マザーズに上場した。杉本哲哉社長(37歳)は相次ぎ登場している若手トップの中でも元気のいい経営者の一人だ。
独自開発のコンピューターシステムで消費者の好みなどの集計を全自動化。料金は質問数が10、サンプル数が100最小構成で5万円と安く、結果は調査開始後、最短で24時間以内に顧客企業に納める。迅速かつ低コストを武器に、2004年6月期は売上高が前の期の2.4倍の20億7,700万円に拡大、売上高営業利益率は30.7%と調査サービス業界で群を抜く。
起業する前はリクルートに勤務。ITの世界に引き込まれたのは、2年ほどの求人情報誌の営業を経て移った財務部で、受け持った仕事への不満がきっかけだった。既存雑誌の衣替えや新媒体・新サービスを考える新規事業開発室に移り、ヒントを得ようと市場調査会社を利用した。だが、時間がかかるうえ、料金もかさんで手軽に使えないサービスばかり。不都合きわまりなかった。「調査サービス各社の鼻をあかしたい」との思いがこみ上げて独立・起業、「高くて遅い」の対極を行く事業モデルでこの業界に乗り込んだ。
マクロミルを「マブチモーターのような企業に育てたい」。マブチモーターは直流小型モーターで世界シェアの五割強を握る。「得意分野に集中し、それ以外は見向きもしない」。迅速・低価格に徹するという。 求人情報誌の営業では東京・北区の企業から広告を取る仕事を担当、下請けなど中小企業回りに精を出した。調査サービスもまだ顧客になっていない企業が山ほどある。小口の依頼を大事にし、こつこつ数字を積み上げていくつもりだ。社内では「とにかく足で稼げ。新ビジネスを始めたいなどと言っている暇はない」とハッパをかける。
IT関係の起業話というと、どしても独自技術を引っさげて華々しく登場する姿を想像しがちです。しかし、こういった技術シーズ発想型のベンチャー企業は、創業後にマーケット・ニーズにどう結びつけるかで苦労します。中には、ユニークな技術を持ちながらも、ビジネスとして失敗に終わるところも少なくありません。一方、これと反対なのがマーケット・ニーズ発想型の起業です。こちらの方は、潜在的な需要のあるマーケットに対して、既存の技術を応用することから発想するので、創業後にマーケットが全くないことが分かるといった、悲劇は起こりません。マクロミル社の杉本社長の場合も、ユーザとしての不満をベースに新サービスを開発しています。ですので創業当初から、ある程度の需要が見込める自信があったのではないでしょうか。
杉本社長が目指すビジネスモデルの理想は、単品経営のローコスト・オペレーションにあります。目標は、マーケット・リサーチ分野での吉野家として「うまい、やすい、はやい」の定評を早急に確立することにあると言ってもいいでしょう。また、余計な新規事業開発には見向きもしないという、経営姿勢にも堅実さが表れています。この姿勢を貫いているうちは、かつての浮ついたベンチャー起業家に見られたような、IPO後に急失速するという失態を招くおそれは、まずないでしょう。
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