デル社内公募もグローバル化(外資系企業で社内公募制度が盛んな理由)
2004年09月20日
ビジネスマンのキャリアは自分で切り拓く時代です。従業員の自己選択意識の浸透とあいまって、社内公募制度を採用している日本企業も、もはや珍しいことではありません。一歩先を行く外資系企業では、応募先を海外拠点にまで広げる動きが始まっています。情報源は『デル、社内公募もグローバル、人材探しに国境なし――成功事例共有にも効果』(2004年9月17日 日経産業新聞 26面)です。
空きポストに手を挙げて異動する社内公募制度。コンピューターのデルでは海外を対象に含めている。外資ならではといえるが、グローバル化への対応を迫られる日本企業でも同様の試みが相次ぐ可能性はある。最適な人材配置、社員のキャリア開発などでどれほど効果があるのか、昨年4月に始まったデルの新制度に関心が集まっている。
「要求を強く言ってくる人が多く、うまくまとめるにはエネルギーが必要だった」。こう振り返るのは、社内公募でシンガポールに赴任、今年5月に帰国した秦修さん。「結局は仲良くやっていくことができ、今でも仕事上のやり取りをするのに役立っている」と話す。
この「グローバル・キャリアデベロップメント制度」には、日本法人だけでなく、アジア太平洋地区の11カ国の現地法人が参加。空きポスト情報をイントラネット上に公開し、地区内の全社員から公募する。通常の赴任期間は1~2年。家庭の事情などで期間を短縮することもある。最低条件は勤続1年以上で、評価が平均以上、海外で仕事するのに十分な語学力と専門スキルを持つこと。直属の上司の了解を取れば、あとは受け入れ先の判断で異動するかどうかが決まる。常時10から20の空きポスト情報が提示され、これまで募集したポスト数は累計で約300に達した。日本から同制度を活用して海外に赴任した例はまだ3件だが、「秦さんなどの例を見ても十分に効果はある。これから積極的に広げたい」(人事本部の坂口繁子ディレクター)としている。
昨年2月からの実績では、グローバル・キャリアデベロップメント制度を含めて、海外に赴任した社員は十人。「将来は各部門から最低1人ずつ、年間30人ぐらいは送りたい」と坂口ディレクター。社内公募の対象も欧米に拡大する方向で検討している。
個人のキャリア開発を重要視する社員が増えているのに伴い、社内公募や社員が希望の職種を申告できるFA(フリーエージェント)制度を導入する企業が増えている。これまでほとんどの日本企業は異動先を国内に限ってきたが、グローバルに競争する時代にあって日本企業も外資も抱える課題は同じ。異動先を海外まで広げるデルの試みは、日本企業にとって一つの参考事例といえる。
この記事を読んでも、個人的にはデルの社内公募制度がずば抜けて先進的だとは感じられません。おそらく、これが記事になった背景には、デルの人事システムというよりは、同社の存在そのものがいまや優良企業として、注目されるようになったことがあるのではないでしょうか。私が勤務していた外資系企業でも、同様な社内公募制度(ジョブ・ポスティング、ジョブ・プレイスメント)がありました。外資系企業が、このような制度に積極的なのは単に社員の自己実現意欲に応えるというだけでなく、別の理由もあるように思います。 必ずしもすべての外資系企業に当てはまるとは思いませんが、私の経験から考えてみたいと思います。
その理由の一番目は、人材を補充する必要が生じた場合、必ず社内公募としてポストをオープンにすることがルール化されていることです。社内公募をかけて一定期間(例えば1ヶ月間)が経過して社内に適任者がいないことがわかった後からでしか、社外から募集をすることができません。これは、極力総人員数を抑えたいことと、社内資源(社員も資源の一つです)の最適配分を考えているからです。外部採用が凍結(Freeze)されると、社内公募だけで何ヶ月もポストを埋める努力をしなければなりません。
私が以前勤務していた会社では、このルールはほぼ守られていたようです。したがって、社内に適任者がいないような場合の新設の部署でも、例外なくポスティングされていました。公募する側も最初から社内補充の可能性はゼロだと思いながらも、手続きに従うためだけの理由で公開することになります。こういう場合は、かえって社内から公募があったりすると面倒なことになるので、募集スペックがおそろしく高く設定されることになります。また、当初から社内に意中の候補がいる場合でも、人事の透明性を確保するために公募はかけざるをえません。その場合は、事前に候補者と打ち合わせをしておいて、公募ポストが公開されるとすぐに候補者が応募するといった形をとります。
また、外資系企業の場合、年度途中で退社があって欠員が生じた場合は、それを補充する権利(ヘッドカウントを維持する権利)が与えられます。しかし、その権利は当該決算期末まで確保されたものでしかありません。何もしないでいると、翌年度にはその権利は失効してしまうことが普通です。戦力ダウンとなった当該部署としては是非とも既得権は守りたいものです。実際には、社内公募してもなかなか適任者が見つからない場合や、そのポストでの補充は不要な場合もあります。翌年度にもその権利を持ち越したいとの強い意思表示をするには、社内公募を続けアピールする必要があります。中には1年近くも募集し続けている干からびたポストもあります。一応ヘッドカウントの権利が確保されていれば、同部署内の他のポストに増員分として振り分けることもできますので、権利を主張し続ける必要があるわけです。そのため外資系企業では、常に一定数のポストが公開されていることになります。
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