ライブドアを噛ませ犬にした楽天のプロ野球参入の裏に見える読売の影
2004年09月24日
日本プロ野球選手会と日本プロ野球機構(NPB)の交渉が妥結して、今週末に予定されていたストライキが回避されました。今後の焦点は、同じ仙台市をフランチャイズとして新規参入を表明している、ライブドアと楽天のどちらが選ばれるかでしょう。テレビで放映されていた、一般のプロ野球ファンに聞いた反応では、最初に手を挙げたライブドアを押す声が強かったようです。しかし、プロ野球機構側はJ1のサッカーチーム・ヴィッセル神戸の運営実績があり、ビジネス基盤の信頼性が高そうに見える楽天の方を好感視するのではないか、というのが大方の観測です。この唐突にも映る楽天の追っかけ参入の裏には、意外な事実があったようです。情報源は、今週発売の日経ビジネス『ナベツネからミキタニへ プロ野球、前代未聞のスト突入で盟主交代?』(2004年9月27日号 p.8)です。
楽天の新規参入表明はまさに絶妙のタイミングだった。近鉄・オリックスの経営統合に端を発した今回の問題で突然、近鉄の買収を含めて新規参入を表明したのはベンチャー企業のライブドアだった。しかし、一部のファンには支持されたものの社長の堀江貴文のパフォーマンス的な行動と、何よりライブドアの経営実態の分かりにくさが醸し出す一種の懸念を同社自身が拭い切れていない。
実を言えば三木谷の新規参入表明の裏側には、ある有力球団の強い意向が隠されていたのである。8月半ばの中間決算発表の席上で、「プロ野球への参入は今のところ全く考えていない」ときっぱり否定していた三木谷だけに、楽天グループの社員でさえ今回の唐突な参入表明の背景に「何があったのか」と首をかしげていた。それほど急な展開だった。
楽天の新規参入が明らかとなった9月15日の前日、三木谷は読売巨人軍のある幹部の訪問を受けていた。「このままストに入るとプロ野球にとって、とてつもないダメージになる。何としても食い止めないとプロ野球そのものがダメになってしまう」巨人の幹部は三木谷を前にしてこう切々と訴えた。「そもそも今回のことは1リーグ制にしたい"ナベツネ"さんの仕掛けじゃないんですか」三木谷の疑問はもっともなことだった。ナベツネこと巨人前オーナー、渡邉恒雄が今回の騒動の黒幕だったことは今や周知の事実だったからだ。それに対して、巨人幹部はこう明言するのだった。「渡邉さんはあくまでも前オーナーであって、我々とは全く考え方も違うし、危機感も違う」。そして、「球界を救うためにも(新規参入に)名乗りをあげてほしい」と続けるのだった。
楽天と読売球団の事前協議は何となくありそうな話です。楽天の三木谷浩史社長の個人的な資産運用会社クリムゾングループが、ヴィッセル神戸を経営権を取得する以前は、楽天は東京ヴェルディ1969とオフィシャル・スポンサーでした。その頃から三木谷氏と読売グループとの関係は緊密であったのではないでしょうか。そのヴィッセル神戸の取得も、同社が民事再生手続きを申請したのを待って救済する形で乗り出したものです。今回のプロ野球への参入も、読売側から請われて登場するという格好です。猪突猛進ではなく、ある程度機が熟してから行動を起こすというしたたかな計算が感じられます。ここらあたりが、ライブドアの堀江貴文社長との違いではないでしょうか。
同じベンチャー起業家とはいえ、三木谷社長と堀江社長との間には、旧勢力との付き合い方において大きな違いがあります。三木谷氏の方は、旧勢力とも適当に折り合いをつけながら成長してきたように思います。一方、堀江氏は最初から対決姿勢を崩さす、ある程度の摩擦も覚悟の上というスタイルです。大向こうウケを狙うのであれば、確かに堀江氏のほうが見栄えがします。しかし、ベンチャー企業も大企業として安定した成長路線を目指すのであれば、旧勢力をうまく利用することも必要でしょう。意外と知られていないのですが、成功した起業家は皆「老人をたらしこむ」手管に優れていることです。ソフトバンクの孫正義氏も、オリックスの宮内義彦氏とはじっこんの間柄で、旧日本債券信用銀行が破綻した受け皿として、あおぞら銀行を設立したときは両社が共同で出資してます。また、インターネット証券のマネックスを立ち上げるときは、松本大氏がソニーの出井会長をたらしこんだ話も有名です。堀江氏も、もう一皮むけてこのような手管を覚えた方が、ライブドアもさらに業容を拡大する機会が増えてくるのではないでしょうか。
最終的に来年度の新規参入球団が楽天に決定したとしても、今回の騒動はライブドアにも、知名度UPという大きな恩恵をもたらすことになります。その場合、2006年度の参入を目指してライブドアが再挑戦するかどうかに注目していきましょう。
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コメント
いやー 勉強になります。
孫さんは人たらし、特に財界の年寄りたらしで有名ですしね。
堀江さんももうちょっとオトナになってほしいかな。
ただ今回の野球界の動きは、堀江氏と古田氏あっての賜物。ドンキホーテで終わって欲しくないです。
三木谷さんのほうが年を取られているだけあって、冷静ですね。
Posted by: dotcom | 2004年09月24日 21:09