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日経産業新聞「企業とビジネスマンの資格意識調査」をどう読むか(その1)

2004年10月05日

本日の日経産業新聞に企業とビジネスマンの資格に対する意識調査の結果が、 掲載されました。ビジネスマン対象の調査は、インフォプラント社の協力でインターネットによるアンケート方式で9月中旬に実施し、1,500人が回答したものです。一方、企業調査は日本経済新聞社が実施し、144社が回答しています。ビジネス系の資格に関する調査としては、かなり大規模に実施されたものといえるでしょう。ビジネスマンに対する質問も「実際に保有している資格」「今後取得したい資格」「資格取得の目的」「期待する資格取得支援策」など、多岐にわたる内容になっています。また、ほぼ同じ内容が企業側にも質問されていて、回答結果を比較することができるので、面白い分析材料を提供してくれそうです。設問ごとに傾向を分析したいと思うので、複数回に分割して投稿します。まず最初は、全体傾向と保有状況に関してご紹介します。情報源は「資格取得、7割意欲、ビジネスマン・企業、本紙意識調査――昇進・昇格で優遇も」(日経産業新聞 2004年10月5日 1面)です。

個人にまず何らかの資格の有無を聞いたところ、資格を持たない人は全体の54%。「持っている」と答えた人にその資格を複数回答であげてもらったところ、多かったのは簿記検定(17%)、初級システムアドミニストレータ(10%)、宅地建物取扱主任者(5%)、「TOEIC」730点以上(4%)、ファイナンシャル・プランナー(3%)だった。

資格取得に対する意欲では、今後取得に取り組みたいと答えた人の割合が69%で、取得意欲の乏しい人(31%)の2倍強となった。終身雇用や定期昇給といった従来の日本型人事・賃金制度が崩壊するなか、自分を守るスキルの向上とそれを形で示せる資格の取得に強い関心を持つ状況がうかがえる。

「持っていることを評価する資格」に対する企業側の回答(複数回答可)は、 次の順番になっています。なお、本紙ではグラフでしか表記されていないので、 6位以降の回答の%表示は、グラフから見た概算値になります。

  1. 社会保険労務士(47%)
  2. 税理士(47%)
  3. TOEIC730点以上(43%)
  4. 公認会計士(43%)
  5. 中小企業診断士(41%) <以上40%超の回答>
  6. 宅地建物取引主任者
  7. 簿記検定
  8. 弁護士
  9. 司法書士 <以上30%超の回答>
  10. 初級システムアドミニストレータ
  11. 行政書士
  12. MBA <以上20%超の回答>
  13. 米国公認会計士
  14. ビジネス実務法務検定
  15. フィナンシャルプランナー <以上10%超の回答>
  16. 証券アナリスト
  17. 知的財産検定
  18. DCプランナー
  19. シニアリスクコンサルタント司法書士 <以上1%超の回答>

実際にビジネスマンが保有する資格と、企業が社員に保有してほしいと期待する資格には、かなりのギャップがあることがわかります。同紙では、この調査結果を次のように分析しています。

企業として社員のどんな資格を評価するかという質問(複数回答)では、税理士と社会保険労務士という回答がともに47%で首位。TOEIC730点以上(43%)、公認会計士(同)、中小企業診断士(41%)と続いた。

回答した個人のうち税理士と社会保険労務士の資格を持つのはそれぞれ、0.4%、1%。企業の評価と個人の資格の現状には大きなギャップがある。企業側は税務に強い税理士、社会保険や年金、人事・労務に関する専門資格者である社会保険労務士などを社内に抱えることで、税制や年金制度、賃金体系が複雑化する中で実務面での対応がしやすいなどの利点を感じているようだ。

企業側が評価するものには、1位の社会保険労務士以下、いわゆる士業と呼ばれる専門資格が並んでいて、極めて専門性の高いものを希望しています。企業側が希望する上位10までの資格の中で、実際にビジネスマンが保有しているものは、TOEIC730点以上、宅地建物取引主任者、簿記検定の3つしかありません。 これらの資格は、どちらかと言えばそれほど専門性の高い資格ではありません。 むしろ、業種、職種を問わずに現在のビジネスマンに共通して要求される、英語、法務知識、会計知識に関する基礎的な資格です。

逆に言えば、これら3つの資格は、確固たるキャリアプランがないビジネスマンでも、持っていればそれなりに役立つ資格といえます。取得に要する時間、費用額を考えても、そんなに負担が大きいものではありません。一方、社会保険労務士、税理士等の資格を取得するには、専門学校に通う時間や費用がかかります。その面では、ハッキリしたキャリアプランがないと取得する決断もできない、いわば投資判断に近いものです。この投資判断の中身をよく考えると、将来的なプランを持っている人は、企業内での資格を活用するよりは、将来的な独立開業を目指して専門資格を取得しようと考える人が大半のはずです。つまり、資格を取得して独立できる環境が整えば、企業内に留まる積極的な理由は見当たりません。

一方では、今年4月の法科大学院に引き続き、来年には会計大学院が開校します。これらの専門職大学院を卒業しても、少なからずの割合の人が、一般企業に就職する道を選ばざるをえなくなりそうな状況もあります(『法科大学院は司法試験に合格できなくても有意義な選択といえるか』『「公認会計士試験合格=監査法人就職」の"常識"に別れを告げるべき時』)。 こうした流れを受けて、一般企業でも専門職を正当に処遇する人事システムが設計される可能性もあるでしょう。そうなると、専門士業側も一般企業への就職を積極的に考えるようになり、需給ギャップが解消する方向に向かうことになります。


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