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日経産業新聞「企業とビジネスマンの資格意識調査」をどう読むか(その2)

2004年10月06日

前回の投稿(日経産業新聞「企業とビジネスマンの資格意識調査」をどう読むか(その1))の続きです。今回はビジネスマンが今後取り組みたい資格、企業側が社員に取得させたい資格に関する分析です。情報源は「資格取得、7割意欲、ビジネスマン・企業、本紙意識調査――昇進・昇格で優遇も」(日経産業新聞 2004年10月5日 25面)です。ビジネスマンが取得したいと考えている資格は、次の通りです。

  1. TOEIC730点以上(22%)
  2. フィナンシャルプランナー(19%)
  3. 初級システムアドミニストレータ(17%)
  4. 社会保険労務士(14%)
  5. 宅地建物取引主任者(13%)
  6. 中小企業診断士
  7. 簿記検定

次は、会社側が社員に取得させたいと考えている資格です。

  1. TOEIC730点以上(67%)
  2. 社会保険労務士(50%)
  3. 税理士(42%)
  4. 中小企業診断士(42%)
  5. 簿記検定(38%)

この調査結果に対して、日経産業新聞は以下の分析を加えています。

トップは両者とも、英語能力を示すTOEIC。このほか企業で2位の社労士は個人でも4位だ。企業3位の中小企業診断士は個人6位、企業5位の簿記検定は個人7位、個人3位の初級シスアドは企業でも8位。上位8項目に着目すれば、5つが共通する。

企業側も、業務への効果を考え、簿記検定や初級シスアドなどの資格を期待する。ビジネスマンも実務に役立つ点を意識し、社労士や中小診断士など取得が難しい資格でも、積極的に挑戦しようとする意欲がみられる。これから取得したい資格では、個人と企業の意識の差は大きくない。

一方、取得が極めて難しい弁護士、公認会計士、MBA(経営学修士)は個人の取得意欲は2~4%と大きく落ち込む。企業もそこまでの難関資格は求めておらず、上位5つには入らなかった。

企業と個人の意識差が開く一つはファイナンシャル・プランナー。個人で2位にもかかわらず、企業では15位。金融関係や不動産など特定業種では取得を義務づける企業もあるが、一般的には広がりはなかった。

比較的新しい資格への関心も低かった。
今年導入された商標や著作権など知的財産に関する知識や実務能力を示す「知的財産検定」、年金制度全般の情報提供などを手がける企業年金コンサルタントの「DCプランナー」、企業の抱えるリスクの顕在化を未然に防ぐアドバイザーである「シニアリスクコンサルタント」などだ。内容ではなく、認知度の低さが、関心の低さにつながったようだ。

確かに上記の分析には、異論はありません。 社会保険労務士、税理士、中小企業診断士の専門資格が、社員に取得させたい資格の上位5位に含まれていることは、少し意外な感じがしました。もちろん全社員にこのような資格取得を要求しているわけではないでしょう。ただし、配属先での実務上のニーズとマッチすれば、資格取得に対する企業側の積極的 な支援も期待できるのではないでしょうか。

さらに、前回ご紹介した「企業側が社員が持っていると評価する資格」を再度掲載します。この結果と、「社員に取得させたい資格」を比べると、面白いことがわかってきます。

  1. 社会保険労務士(47%)
  2. 税理士(47%)
  3. TOEIC730点以上(43%)
  4. 公認会計士(43%)
  5. 中小企業診断士(41%) <以上40%超の回答>
  6. 宅地建物取引主任者
  7. 簿記検定
  8. 弁護士
  9. 司法書士 <以上30%超の回答>
  10. 初級システムアドミニストレータ
  11. 行政書士
  12. MBA <以上20%超の回答>
  13. 米国公認会計士
  14. ビジネス実務法務検定
  15. フィナンシャルプランナー <以上10%超の回答>
  16. 証券アナリスト
  17. 知的財産検定
  18. DCプランナー
  19. シニアリスクコンサルタント司法書士 <以上1%超の回答>

弁護士、公認会計士クラスの難関資格保持者に対する需要はあるものの、企業として自社の社員にこれらの資格を取得させようとまでは、考えていないことは明らかです。その理由の1つは、どんなに支援体制を充実させたとしても、必ずしも合格できるわけではないからです。長い年月と費用をかけても、成功の確率が低い投資になるわけですので、企業側の判断も当然でしょう。合格できなかった場合、その後の社内キャリアプランをどうするかの問題もあります。そうすると、必要な時に有資格者を外部から採用した方が安全という結論になります。

また、首尾よく合格した場合でも、社員に辞められてしまうという可能性も否定できません。社費留学したMBAの退職率の高さを考えれば、同様の結果が当然予想されます。MBAの場合は、学位取得後一定年数を経過しないで自己都合により退職した場合は、学費等の返還を求める誓約書を社員に書かせる企業もあります。憲法で職業の自由が認められているので、どうしても辞めたい社員を拘束することは、法的には不可能です。したがって、このような学費の返納の義務を課すという形で、逃げられるのを防止しようと考えることになります。

欧米のMBAを取得した人間が、起業家精神に目覚めて独立開業する話も、珍しいことではありません。それでも、MBA取得者の大半は、何らかの組織に属してその知識を活かそうと考えているのではないでしょうか。その動機からして、独立志向の強い士業の資格とは異なるものです。したがって、弁護士や公認会計士を自社で育成して、そのまま引き止めておこうという発想は、無理があります。それよりは、大手弁護士事務所や監査法人に就職できなかった人材を採用した方が、企業としては簡単な方法になるわけです。


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