内側から見た富士通の城繁幸氏は作家に転身して本当の成果主義に挑戦するのか
2004年10月14日
週刊ダイヤモンドの2004年10月16日号に、『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』の著者である城繁幸(じょうしげゆき)氏のインタービュー記事が掲載されました。情報源は、『管理職たりえない管理職は評価者になってはいけない』です。
─── 出版後、富士通サイドから抗議はあったか。
ない。富士通本社の人事部長は、「コイツを訴えてやる!」と息巻いていたそうだが、今のところ公式な抗議はなにもない。だが、非公式にはある。本社人事部のスタッフからは「いったい、なんだこれは!」という怒りの電話が自宅にかかってきた。
対照的に、私が勤務していた川崎工場の面々は、私の顔や本名を知っている人も知らない人も「よくぞ書いた」と激励してくれた。─── 発売2ヶ月で、発行部数21万部。反響の大きさをどう受けとめているか。
正直言って、驚いている。最初は、富士通の成果主義をベンチマークの対象にしていた日立製作所や東芝などの同業他社ぐらいしか反応しないのではないか、と考えていた。ところが、富士通関係者や同業他社どころか、学生、経営学者、コンサルタント、主婦まで、じつに多くの人たちが出版社と私のホームページに感想を送ってくれた。
この記事を読んで思ったことは2つあります。
1つ目は、なぜ『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』という本が、こんなにも売れているのかという疑問です。成果主義を否定した本は、この本が初めてというわけではありません。最初に成果主義に反対する流れを作ったのは、今春に発売された高橋伸夫氏の『虚妄の成果主義』です。東京大学教授が著した同書は、欧米型成果主義の抱える矛盾点を、数多くの実例を交えながら鋭く論破したものです。発売当初から各種の書評でも取りあげられ、最近出版された人事労務関係の書籍の中では、最大の注目を集めたものといえます。
しかし、城氏の『内側から見た富士通』の売れ行きには、『虚妄の成果主義』を圧倒する勢いがあります。その理由は本書が、実際に成果主義が不毛に運用されている現場に身をおいた当事者の肉声が発した内部告発本だからです。自らの体験を披瀝する迫力の方が冷静な学者の分析に勝るのは、ある意味当然の結果でしょう。もちろん、前者の方が値段が安くて読みやすいという理由もあります。
私が関心を持った2つ目は、城氏の今後のキャリアプランに関することです。週刊ダイヤモンドの記事では、現在「日本型成果主義の可能性」をテーマに、次回作に取り組んでいることが紹介されています。このほか、同氏は文芸春秋11月号でも、「富士通の秋草会長への公開質問状」と題する記事を執筆しています。将来は本格的に作家としての道を目指すのでしょうか。
内部告発本を書いて作家に転進した先輩として真っ先に思い浮かぶのは、横田濱夫氏です。横田氏は横浜銀行在職中の1992年に、『はみ出し銀行マンの勤番日記』というタイトルで、軽妙なタッチの告発本を執筆しました。その結果、予想通り勤務先の逆鱗に触れ、左遷の憂き目に会うことになります。今度は左遷された事情も、『はみ出し銀行マンの左遷日記』で暴露して、結局銀行を退職します。その後は、本格的に作家業に転身し、横田濱夫の『はみ出し銀行マンシリーズ』で数多くの著作を執筆しています。現在では金融・労務関係を中心に幅広く活躍中です(同氏のサイト『はみ出し銀行マンの秘密会議室』)。最近の著作は、トレードマークの『はみ出し銀行マン』シリーズを離れて、一般財テク関係の内容が中心になっています。
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。率直に言って、一般の財テクをテーマを拡大した横田氏の最近の書籍は、以前の作品ほどには売れていないようです。同氏の全著作をアマゾンの売上順に並べてみれば、明らかです。上位10位までに入るのは、2000年までに書いた『はみ出し銀行マン』シリーズだけです。2001年以降に書いた書籍は、自らの体験というよりも、取材した内容をベースに書いたものが中心です。つまり、読者が横田氏に期待していたのは、あくまでも銀行勤務という、原体験に基づく娯楽性なのだと思います。元銀行マンの内輪話という得意の土俵を離れては、一般の作家と同じように競争するしかありません。今後は横田氏の作家としての真価が問われることになりますので、これまでのように簡単にはいかないのではないでしょうか。
横田氏の例から思いをめぐらしたのが、城氏の今後です。富士通の成果主義の原体験だけで、当面の間は注目を集めることはできると思います。その後、どのようなキャリアを積んでいくことになるのでしょうか。もし、作家を目指すのであれば、著作の販売部数が評価を決める、文字通りの『成果主義』の世界に踏み込むことになります。欺瞞の成果主義を指摘した人間が、本当の成果主義を体験することになるわけです。なお、城氏の個人ブログ Joe's Labo を読んだ限りでは、その内容に職業作家に必要とされるキラメクような才能までは、感じとることはできませんでした。しかし、ただのブログから職業作家としての才能を判断しようすること自体が、全く意味のないことも明白です。ちなみに、城氏の著作に対する感想が寄せられているのは、富士通の楽しい職場みんなのF2 です。こちらの方が、生々しい内容が盛りだくさんです。
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【本件に関係した投稿】
- 目標管理制度(MBO)の弊害は、嘘つきが増えること
- 成果主義の影響はマイナス:職場の士気低下やうつ病をもたらす場合も
- 成果主義の影響はマイナス:職場の士気低下やうつ病をもたらす場合も
- 成果主義は虚妄か?「UP or OUT」
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コメント
ここまで「成果主義」に注目されているのに驚きました。
「内側から見た富士通」には先をこされた感じがありますが、僕もOBとして成果主義をまとめました。
去年書いた記事は「虚妄の成果主義」の出版のきっかけに関係あるかも知れません。参考にしてください。
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2003/6/26 雑誌「PRESIDENT」7/14号にささげる真実
http://www.netpub.tsuzuki.yokohama.jp/j/column/col1.html
2003/11/30 日本で「成果主義」を導入した会社は衰退する!
http://www.netpub.tsuzuki.yokohama.jp/j/column/col6.html
2004/9/2 内側から見た富士通(感想)
http://www.netpub.tsuzuki.yokohama.jp/j/column/colg.html
2004/9/7 「評価」という言葉の持つ危なさ
http://www.netpub.tsuzuki.yokohama.jp/j/column/coli.html
2004/9/22 「成果主義」の嘘を読み解く
http://www.netpub.tsuzuki.yokohama.jp/j/column/colj.html
2004/10/8 「成果主義」の嘘を読み解く2
http://www.netpub.tsuzuki.yokohama.jp/j/column/colk.html
2004/10/8 「成果主義」の嘘を読み解く3
http://www.netpub.tsuzuki.yokohama.jp/j/column/coll.html
2004/10/8 「成果主義」の嘘を読み解く4
http://www.netpub.tsuzuki.yokohama.jp/j/column/colm.html
2004/10/8 「成果主義」の嘘を読み解く5
http://www.netpub.tsuzuki.yokohama.jp/j/column/coln.html
2004/10/11 見えてきた「成果主義」崩壊のメカニズム
http://www.netpub.tsuzuki.yokohama.jp/j/column/colo.html
2004/10/12 見えてきた「成果主義」崩壊のメカニズム2
http://www.netpub.tsuzuki.yokohama.jp/j/column/colp.html
2004/10/12 ブラックリストによる差別
http://www.netpub.tsuzuki.yokohama.jp/j/column/colq.html
2004/10/15 めざめよ、経営者
http://www.netpub.tsuzuki.yokohama.jp/j/column/colr.html
2004/10/17 成果主義は経営者の試験だったのか!
http://www.netpub.tsuzuki.yokohama.jp/j/column/cols.html
Posted by: Netpub-Project | 2004年10月17日 16:12