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IT業界のビジネスリーダーは、他業界へ転出してもその手腕を発揮できるか

2004年10月20日

週刊ダイヤモンドに、スクウェア・エニックス社長の和田洋一氏のインタービュー記事が掲載されました。和田氏は東京大学法学部卒業後、野村證券入社。その後、2000年にスクウェアに転じて、2001年に同社社長に就任し、2003年からはエニックスと合併後の新会社を率いています。情報源は、『人生は理不尽だ。やるべきときにやらないと後悔する』週刊ダイヤモンド 2004年10月23日号 p.178 です。

野村證券に入社してからは、MOF(旧大蔵省)担当、外務省出向、事業法人部、主計部など典型的なエリートコースを歩む。でも、「どうしてこんなつまんないことばかりやっているのだろうと思っていた。40になったら絶対に経営者になってやろうと誓っていた」。そして40歳でスクウェアに招かれた。

生意気に聞こえて、じつは違うのだ。少年期に背負った人生の理不尽に負けそうになりながら、それと必死に闘っている。合併発足したスクウェア・エニックスは好調で、手腕は抜群。

歴史の浅い業界・会社には、どうしてもトップとして組織を束ねることができる人材が不足します。必然的な解決策としては、歴史の長い業界から人材を供給してもらうことになります。和田氏の野村證券からエニックスへの転職は、このケースの典型的なパターンと呼べるものでしょう。しかし、業種を超えたトップ人材の動きは日本企業に限った話ではありません。IBMを立て直したルイス・ガースナー氏は、マッキンゼー、アメリカン・エクスプレス、RJRナビスコを経て、創業以来の経営危機に陥っていたIBMの会長に就任しました。この他、古くはペプシコからアップルの社長に転じたジョン・スカリー氏もそうした事例の1つです。

異業種のトップに就いた人間が新会社で成功できるかどうかには、一定の法則はありません。先の例ではガースナーはIBMの再建に成功しました。一方、スカリー氏はアップルで顕著な功績をあげることなく、結局志半ばで同社から追われています。その後、アップルは満足な後継者を見つけることができずに、最終的には創業者スティーブ・ジョブスの暫定CEO復帰という形で収まり、現在に至っています。

冒頭のスクウェア・エニックスの話に戻れば、これと対照的な動きがあったのが、同じゲーム業界のセガです。一時経営危機に瀕していたセガが、再建を託したのはリクルート出身の香山哲氏でした。その後、親会社CSKによるセガ持ち株の売却、多くの合併交渉の頓挫等を経た後、本年やっとパチンコ機器大手のサミーとセガは、経営統合しました。難産のすえ誕生した持ち株会社セガサミーホールディングスの完全子会社にとなった新生セガの社長には、小口久雄氏が就任しました。小口氏はセガ一筋にゲーム開発業務に携わってきたヒットメーカーで、完全な内部昇格者です。なお、今回の経営統合に伴い一時はCEOの地位にあった香山氏はセガを退任することになりました。

期せずして合併会社となったゲーム大手2社のトップは、社外出身者と社内登用者に分かれることになりました。今後両トップの手腕によって、両社の舵取りがどのうように行われていくのかが注目されます。

歴史の浅いIT業界の会社は、他業界からトップ人材を受け容れる側に回るのが普通です。しかし、今年にはこの逆の流れとなるトップ人事がありました。それは、原田永幸アップルコンピュータ元社長の日本マクドナルドホールディングスのCEO就任です。ファーストフードは必ずしも歴史の長い業界とはいえませんが、日本マクドナルドは創業者の故藤田田氏の長期政権が続いたため、組織的に膠着するという問題を抱えていました。そこで、日本でアップルのブランドを確立することに成功した原田氏を、出身業界にこだわらずに招聘したわけです。

原田氏のITビジネスからフードビジネスへのキャリア・チェンジに関しては、マスコミでも関心を集めることになりました。マスコミの疑問点は、同氏のマネジメント手腕が異業種でも発揮できるかどうかに集中しています。これに対して原田氏はマネジメントの核心は、業種を問わないと自信をもって回答していています。昨日、発表されたマクドナルドの決算数字そのものには、同社の業績が上向くような兆候は現れていません。新CEOのリーダーシップによって、マクドナルドのマーケティングがどう変化していくか、これもまた注目です。

原田氏の例は、IT業界から他業界からへのトップ転出の先駆けとなるものです。 また、改めて考えてみれば、最近話題となっているライブドアと楽天のプロ野球ビジネスへの参入も、ある面ではIT業界のビジネスリーダーがまったく異なるビジネスモデルを持つ興業ビジネスに挑戦するものです。ライブドア、楽天どちらがプロ野球機構によって選ばれるのか、あるいは両社とも不適格とされるのか、現在では結論は出ていません。もし、どちらかの会社がプロ野球球団を保有することが認められれば、堀江貴文氏か、三木谷浩史氏かが、本格的に異業種ビジネスの経営に取り組むことになるわけです。IT業界のビジネスリーダーは、果たして他のビジネス分野でも通用するのでしょうか。IT業界のマネジメントの質が問われる今回のチャレンジは、IT業界全体のマネジメントの成熟度を図る試金石と捉えてもいいのではないでしょうか。


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