楽天が直面する地元経済界の大きな期待とオールド・ビジネスモデルへの挑戦
2004年11月05日
仙台の新球団の「楽天ゴールデンイーグルス」に対する地元経済界の期待が盛り上がっているようです。三木谷浩史社長にとっても、期待が大きければそれだけチャレンジも大きなものになるはずです。情報源は、『楽天イーグルス、試される「仙台密着」――地元経済界、期待と不安』(日経産業新聞 2004年11月4日号 24面)です。
降ってわいた球団進出に、地元経済界は商機をうかがう。客単価350円の低価格が売り物の大衆食堂の全国展開を急ぐ半田屋(仙台市)の半田英俊社長は「ユニホームに自社のロゴを入れたい」と意気込む。球場の看板広告では中央企業も交えた場所取り合戦がすでに始まっている。東北経済産業局によると、球団進出の経済効果は年間二百八億円。公共事業依存型の経済構造からの脱却が遅れ景気回復がもたつく東北経済にとって大きなチャンスだ。
「身の丈にあったドーム球場を」。ドーム建設構想を打ち上げたのが生活雑貨製造卸大手のアイリスオーヤマの大山健太郎社長。地元企業と球団の共同出資方式を採用、ドームとしては小ぶりな3万人収容とし建設費を200億円以下に抑えて収益性を確保する案だ。楽天は現球場と比べ年間使用料金が10倍以上に膨らむドーム構想に慎重だが、地元経済界の中核である東北電力や七十七銀行も大山案をたたき台とする建設協議会に参加。県や市も利子補給など財政支援の方針を打ち出した。「仙台の春秋の気候も考えると、ドームが欠かせない。集客力を高め球団の長期定着につなげたい」(大山社長)。
ただ球場整備などの協議の具体化とともに立場の違いも目立ってきた。10月下旬には楽天とライブドアが球場の命名権供与や球場周辺改修の県負担の拡大を求め、県の不興を買う一幕もあった。
この記事を読むと、経済効果を期待する地元との調整に、結構労力を割かれることになりそうな予感がします。楽天は球団の経営諮問委員会に、中央財界の大物を登場させました。これはプロ野球機構にアピールするには、経営者の資質を裏付ける材料として効果があったはずです。地元からすると、東京の金持ち企業グループが地元に金を落としてくれるに違いないと理解したのではないでしょうか。問題の球場の改修事業の発注先も鹿島建設に決定したようです。そうなると、下請け業者にどれくらい地元の建設業者が入るかも注目されるでしょう。要するに、感覚としては公共事業の地元への経済効果を試算するのに近いものです。
楽天にとっては、ネットビジネスでの投資スタンスが、球団経営のようにリアルな設備投資を伴うビジネスでも通用するのか、という点でも挑戦になります。 ネットビジネスと旧来型のビジネスとの違いを詳しく述べた記事が、今週発売の東洋経済に掲載されています。情報源は、『ネットビジネスとオールドビジネスの違いはどこに?』(週刊東洋経済 2004年11月6日号 p.47-48)です。
ネット企業は設備投資型のビジネスではないので、固定資産が少なく、流動資産が膨らむ。流動資産比率はヤフーで68.1%、楽天で87.5%と、流通(セブン・イレブン・ジャパン、44.7%)、メーカー(松下電器産業、50.7%)と比較しても圧倒的に高率だ。
ネット企業は損益分岐点が低く、分岐点を上回った後の利益の伸びが大きいため、「ヘビーな流動資産になる」(コンサルタント小宮一慶氏)傾向にある。ヤフーで見れば、04年9月中間期の経常利益率は53.6%、利益剰余金が683億円と総資産の63%も占める。儲かったカネは行き場がなく、現金で積みあがっているのだ。
実際、ネットインフラ等を展開するグローバルメディアオンラインの熊谷正寿社長は次のように話す。「オールドエコノミーの会社は市場から資金を調達して工場に投資して利益を生み出す。しかし、ネット企業はそうした投資がないので、カネを買収に向けているのだと思う。時間を買う、スピードを買う、ということ」。
固定費も変動費も低い、それでいて売上が爆発的に拡大しているビジネス──それがネットビジネスだとすれば、これほど魅力的で参入障壁が低いビジネスもない。だから彼らは、ブランド力を求めるのだ。ブランドイメージを上げ、唯一の参入障壁として集客を高める。ライブドアや楽天など、ここに来てネット企業が相次いでプロ野球参入を図っているのもその文脈で見るとわかりやすい。自らの強み(損益構造)を維持する狙いだ。
ところが、既存のオールドビジネスを買収するということは、従来型のビジネスをポートフォリオに組み入れるということ。当然、バランスシートも崩れ、損益分岐点も上昇する。「朝起きたら頭の中は99%危機感」(三木谷浩史・楽天社長)。勝ち残ったネット企業の悩みは深い。
よくネッショップの成功例として楽天と比較されるのが、アマゾンです。しかし、設備投資という点では両社のビジネスモデルは大きく異なります。アマゾンの方は、自社で在庫を抱えますし、配送センターも自前なので多額な設備投資が伴います。楽天の方は、モール内の各店舗が商品を仕入れて配送もするので、楽天自身の設備投資負担はありません。それでは、ネットビジネスのインフラとなるデータセンターは自社で所有しているのかというと、そういうこともありません。楽天はサービス開始当初から、今秋株式を上場したデータセンター会社・メディアエクスチェンジ社(MEX)のハウジングサービスを利用しています。MEX社が上場する際の目論見書でも、楽天が同社の最大のユーザ(売上の3割を占める)と記載されているくらいです。したがって楽天が保有している資産は、データセンターに置いているシステムとソフトウェアだけになります。
野球興行というビジネスが、従来のネットビジネスのモデルと異なることは、三木谷社長は、百も承知でしょう。また、複雑な地元企業との利害調整でも、堀江社長にはない「オトナの交渉力」を発揮して、乗り切ってもらうことに期待しましょう。
【追記】将来の楽天とメディアエクスチェンジ社との関係は、未確認情報です。したがって「楽天イーグルスのネット配信開始 → MEX買い」と勝手に連想してもらっても、当方は一切責任を負えません。以前ヤフー掲示板にリンクされて、短期売買中心の人から一時的に大挙してアクセスされた経験がありますので、老婆心ながらが付け加えておきます。
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