ファーストリテイリング社長玉塚元一氏を単なる若大将社長と見なす疑問
2004年11月08日
ファーストリテイリングの社長・玉塚元一(たまつかげんいち)氏に関する記事が朝日新聞に掲載されました。このブログでは、ファーストリテイリングの社長就任の話を断った澤田貴司(さわだたかし)氏の話題ばかり取り上げてきました。本命であった澤田氏の代わりに、社長に就任したのが玉塚氏です。今回はバランスを考えて、玉塚氏のキャリアも分析してみることにしました。情報源は、『ハングリーな挑戦者 ユニクロの若大将』(朝日新聞 2004年11月6日 b-business 1面)です。
181センチの長身。精悍な顔立ち、豊かな髪、熱い胸板。ユニクロファッションを身につけ、カメラの前に立つ姿はまるでモデルだ。
証券会社の創業家に生まれ、小学校から慶応義塾に通った。中学校時代にラグビーを始め、大学4年の時には大学選手権決勝で同志社大学に惜敗した。フォワード第3列のフランカーだった。小学校のころこからのスキーは指導員並みの腕前だ。
卒業と同時に、名門企業、旭硝子に入り、20代で海外駐在を経験、30代には米国で経営学修士号(MBA)を取得した。絵に描いたような生い立ち、経歴。そして今、まだ、42歳。若大将社長である。ちょっと格好良すぎるぞ。
記事では、3年ぶりにファーストリテイリングを増収増益に復帰させた玉塚社長の活躍ぶりが続きます。その中で私が興味を持ったのは、徹底した現場主義で店舗回りを欠かさない、体力維持のためにジムでのトレーニングを日課としているという点です。これを読んで、同じく若手社長のローソン新浪剛史(にいなみたけし)社長が、インタビューで同じ内容を答えていたことを思い出しました。どうも両者にはかなり共通点があるようなので、そのキャリアを比較してみることにします。次に紹介するのが玉塚氏の略歴です。
- 1962年 東京生まれ
- 1985年 慶應義塾大学法学部卒業、旭硝子入社
- 1997年 ケースウェスタンリザーブ大学経営学専攻修了
- 1998年 サンダーバード大学国際経営大学院国際経営学専攻修了
- 1998年 日本IBM入社
- 1998年 ファーストリテイリング入社
- 2002年 ファーストリテイリング社長就任
- 2004年 42歳
こちらが、新浪氏の略歴です。
- 1959年 横浜生まれ
- 1981年 慶應義塾大学経済学部卒業、三菱商事入社
- 1991年 ハーバード大学経営大学院修了
- 2002年 ローソン社長就任
- 2004年 45歳
改めて並べてみると、結構似ているのではないでしょうか。年齢は3歳ほど違うのですが、社長就任は2002年と同じです。2人の共通点をまとめると、こうなります。
- 都会派(玉塚氏東京出身、新浪氏横浜出身)
- 慶應大学卒
- スポーツ系(玉塚氏ラグビー、新浪氏バスケット)
- 趣味はジムでのトレーニング
- 海外留学(米国MBA取得)
- 2002年社長就任
- 現場主義
こうして比較すると明らかなのですが、新浪氏の経歴は直線的でローソン社長に至るまで、全く寄り道がありません。ローソンへの転出も三菱商事グループ内の人事異動と解釈できます。ローソンで大成功すれば、将来的に親会社の三菱商事への復帰も可能な経歴です。突っ込める余地が全然ないので、私としてもあまり面白くありません。ハーバードへの留学も三菱商事からの社費留学です。
これに比べると、玉塚氏の経歴は若干入り組んでいて、ファーストリテイリング社長に登りつめるまでの間に、本人の意思によって適宜キャリアをチェンジしてきた姿がうかがえます。キャリア上の一番目の選択は、米国留学です。一般に外部に公開する経歴には会社の入社年次は公開されますが、退社年次に関しては触れられません。したがって、玉塚氏が留学したときの所属は明らかではありません。おそらく旭硝子を退社した上で自費で挑戦したものと推測されます。
さらに、2年間で2つの大学院の修士課程を履修していることも目をひきます。2つ目のサンダーバードの方に、1つ目のケースウェスタンで取得した単位を充当することができたので、このようなことが可能だったのではないでしょうか。サンダーバードは、短期間で学位が取得可能という点と、留学生比率が高くて国際色が濃いという点で有名なビジネススクールです。例えば、デルの日本法人社長の浜田宏社長も同大学の卒業生です。
朝日新聞の記事では、玉塚氏の学歴としてはケースウェスタンの方だけが掲載されています。サンダーバードの方を書かなかったのは、正式には取得学位がMBA(Master of Business Administration)ではなく、MIM(国際経営学修士課程 Master of International Management)だからではないでしょうか。以前の経歴紹介では、サンダーバードの方をメインにしていたような気がします。MBA取得を機にキャリアアップに成功して、ついに社長の椅子を掴んだ山田修氏も、サンダーバードMBA卒業生です。玉塚氏も堂々とサンダーバードMBAと呼んでも大きな問題はないのではないでしょうか。学歴詐称で議員辞職に追い込まれた、民主党の古賀潤一郎氏の例もあるので、外国で複数の大学で通った経歴のある人物は、あらぬ疑いをかけられないよう注意しているのかもしれません。
もう1つキャリア上での注目点は、日本IBMの在籍期間です。玉塚氏が留学終了後すぐ入社したのが日本IBMですが、ここにはわずか半年程度しか勤務していません。日本IBMに戻ったら、すぐにヘッドハンターからコンタクトがあって、ファーストリテイリングへの転職することになったのかもしれません。しかし、この時点では日本IBMでも、それほどの要職に就いていたとも思われないので、この程度のマイナーなキャリアは普通書きたくないと考えるはずです。これも上場企業のファーストリテイリングの社長になったので、何事も包み隠さず公開しているのでしょう。
以上の2点、すなわち「なぜ、2つも同じようなビジネススクールに通ったのか」、「なぜ、日本IBMを半年という短期間で辞めることになったのか」が、玉塚氏の経歴に関して私が興味を抱いたところです。両方ともそれなりの理由があるはずです。そこら辺の事情が明らかになると、同氏のキャリアプランの全体像がわかるような気がします。今回の朝日新聞の記事を読んだだけでは、「絵に書いたような若大将」というだけで、表層的な感じは否めません。現在の地位を築くまでの紆余曲折や葛藤に関心がある人間も、決して私だけではないと思います。もう少し突っ込んだ取材があれば、ただの「若大将」だけではない側面にも迫れたような気がして残念です。
★この記事が面白いと思った人は『人気ブログランキング』をクリックしてもらえるとハッピーです。
【本件に関係した投稿:ファーストリテイリング関係】
- ファーストリテイリング元副社長澤田貴司氏と前社長玉塚元一氏が共同事業
- 玉塚元一ファーストリテイリング前社長と元久存武富士前社長の転身先
- 柳井新体制で急成長を目指すファーストリテイリング社内に動揺は?
- ダイエー再建を逃したキアコン澤田貴司社長が狙う高級アイスクリーム店
- 後継者は育たなかったが、起業家を育てた柳井ファーストリテイリングの皮肉
- 雇われ社長には「一勝九敗」が通用しなかったファーストリテイリングのトップ交代
- 2人の企業再生家、キアコン澤田貴司氏と福助藤巻幸夫氏の共通点を勝手に探る
- 創業メンバーが離脱してもダイエー再建に闘志を燃やすキアコン澤田貴司社長
- カネボウ小城氏、キアコン澤田氏 No.2からトップへの選択は似て非なるもの
- キアコン澤田貴司氏の記事からローソン新浪剛史氏、グッドウィル折口雅博氏を連想
- 起業家を輩出する企業風土とは
【MBA社長山田修氏の著書】MBA取得をきっかけに切り拓くサクセスストリー
| MBA社長の実践「社会人勉強心得帖」 | |
![]() | 山田 修 プレジデント社 2003-01-11 売り上げランキング 9,909 Amazonで詳しく見る |
| MBA社長の「ロジカル・マネジメント」―私の方法 | |
![]() | 山田 修 講談社 2002-02-22 売り上げランキング 10,598 おすすめ平均 ![]() MBA取得者を雇うと何が期待できるかわかる本 wannabesには最適の本でしょうね 迷える日本の企業人の道しるべAmazonで詳しく見る |
| MBA、それからの10年―オレは国際派「企業テクノクラート」をめざす | |
![]() | 山田 修 日本実業出版社 1994-09 売り上げランキング 924,377 おすすめ平均 ![]() なんともいえず面白い・・・ MBAや外資系企業を目指す人に必読 非アングロサクソン経営への挑戦Amazonで詳しく見る |
【MBAキャリアに関する書籍】
| たかがMBAされどMBA ビジネス最前線11人の勇気ある仕事選び | |
![]() | MBAキャリア研究所 奥村 昭博 産学社 2004-04-21 売り上げランキング 2,979 おすすめ平均 ![]() なぜMBAをとったのか? キャリアについて悩んでいるビジネスマン向き ターニングポイントとしてのMBAAmazonで詳しく見る |
| MBA100人が選んだベスト経営書 | |
![]() | 東洋経済新報社 東経= 東洋経済新報社 2001-02 売り上げランキング 65,057 おすすめ平均 ![]() 実践的ガイドブック 何も分からないと買ってしまいがちですが 他の人がどんな本を読んでるか?Amazonで詳しく見る |
| MBA100人に聞いた 英語習得法 | |
![]() | グローバルタスクフォース 総合法令出版 2003-02-25 売り上げランキング 256,646 Amazonで詳しく見る |
【キャリアデザインに関する書籍】
| 会社が放り出したい人・1億積んでもほしい人 | |
![]() | 堀 紘一 PHP研究所 2004-10 売り上げランキング 229 おすすめ平均 ![]() 2極化時代へ突入Amazonで詳しく見る |
| 37歳までに仕事人生は決まる | |
![]() | 西山 昭彦 日本経済新聞社 2004-10 売り上げランキング 17,355 Amazonで詳しく見る |
| 思いどおりのキャリアをつくる5つの成功法則 | |
![]() | 泉 洋太郎 亜紀書房 2004-09 売り上げランキング 22,510 おすすめ平均 ![]() 会社を辞める前にAmazonで詳しく見る |
| スローキャリア | |
![]() | 高橋 俊介 PHP研究所 2004-07-24 売り上げランキング 4,904 おすすめ平均 ![]() 今後の著作に期待 企業側の立場として読めば良作 上昇志向の人こそ読むべき!Amazonで詳しく見る |



MBA取得者を雇うと何が期待できるかわかる本
wannabesには最適の本でしょうね
迷える日本の企業人の道しるべ











コメント
玉塚氏が、MBAを取得したのは、旭硝子時での会社派遣です。自費ではありません。留学に際し、帰国後5年間に会社を退社する場合には、留学費用の相当分返還の誓約書を、旭硝子は取っていたが、法的には疑義もあり(職業選択自由との兼ね合い)、実行されず、彼は踏み倒して行ったはずです。
IBMは、8日間で退社したと聞いてます。
Posted by: 匿名 | 2005年10月23日 15:10