iMac G5 の雑誌広告はシンプルでクールだが、マーケティング戦略的には?
2004年11月09日
今週号のAERAを開いてすぐ目に入ってきたのが、iMac G5 の広告でした。 表紙裏(専門的には表2・表2対向)にある鮮やかなブルーをバックにした見開き広告です。メインコピーには「iPod のクリエイターから、新作の発表です。The new iMac G5」とあります。色調は違うのですが、構成はほぼ下のバナーと同じものと考えてください。
これ以外には、「iPod はあなたが持っている音楽をすべてポケットの中に。新しい iMac G5 はコンピュータをまるごと17インチあるいは20インチ超薄型ディスプレイの中に収めました。¥157,290~。」というサブコピーが下にあるだけのシンプルな広告です。コンセプトは iPod と iMac G5 の関連性にあります。キーメッセージは、iPod を知っている人間に対して、同じメーカーからクールなデザインのPCが新発売されたことを紹介することです。また、iPod ユーザの中でPCは Windows を使っている人間に対して、ブランド・スイッチを促すことを狙ったものかもしれません。いずれにせよ、このコンセプトを考案した前提として、以下のロジックを展開したことが推察できます。
- iPod の人気はアップルがデザインしたから
- PCの選択理由の中で、ブランドとデザインが占める割合も大きい
- したがって新しい iMac が iPod と同じアップルがデザインしたと訴求する効果は高い
果たして、この前提となったロジックが本当に有効かどうかを検証してみます。参考にしたのは、nikkei.bp の記事「アップルが好き」だからiPod miniを買うわけではない――NS総研調査です。「iPod/iPod mini」のユーザを対象に購入動機を聞いた調査結果として、次の点が明らかになっています。
iPodシリーズの「購入の決め手」を両機種別にみると、iPodは「HDD容量」(67.6%)、「アップルが好き」(24.5%)、「携帯性」(18%)、「価格」(15.1%)の順。これに対して、iPod miniでは「価格」(44.9%)、「携帯性」(38.8%)、「HDD容量」(32.7%)、「アップルが好き」(10.2%)の順となり、機能性と価格のバランスが決め手だったことがうかがわれるという。
また、所有者の購入価格の中央値(探索的データ解析で算出)は、iPod/iPod miniでは3万5000円、その他の音楽プレーヤーは2万9800円で、アップルの音楽プレーヤーが他の製品より約5000円程度高いにもかかわらず、圧倒的な人気を持つことがわかった
この調査結果を読む限り、iPod/iPod mini が人気を集めている理由は、あくまでも製品の基本要素である機能と価格のバランス、いわゆるコストパフォーマンスにあるようです。ブランドとしてのアップルの優位性が、大きな役割を果たしているわけではありません。そうすると、この広告コンセプトの1番目の前提条件「iPod の人気はアップルがデザインしたから」が成立しないことになり、雑誌広告の訴求方法に疑問が生じできます。
もちろん、iPod 人気によってアップルブランドの認知度と高感度がアップしたことは否定しません。しかし、PCの選択基準としては携帯オーディオプレイヤー以上に製品の基本機能が重要視されるはずです。特に家庭内で使うデスクトップPCは自分以外の人間が使う機会も少ないので、他人の目を意識してブランドを選ぶ人も少ないでしょう。したがって、ブランドよりも基本的な製品特性としての競合優位性にフォーカスした広告コンセプトを採用すべきだと思います。
改めて考えれば、iMac G5 の斬新さは、PCの筐体をなくして薄型液晶ディスプレイと一体化させたオールインワン・デザインにあります。であるとすれば、今回の広告のように iPod との関連性を訴えるよりも、もっとストレートにその特徴を前面に打ち出した方が効果的なのではないでしょうか。 私自身は、PCは単なる道具だと思っているので、選択基準としてデザインはほとんど重視しません。しかし、中にはデザインを中心にPCを選択する人もいるはずです。その層をターゲットにするには、雑誌広告でも下のコンセプトのような広告の方が訴求力が高いと思います。
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