ダイエー再建スポンサーにイオンが選ばれた場合の政治的影響は推測不能
2004年11月10日
11月9日の日経新聞3面で、50社程度の企業がダイエー再建のスポンサー企業として、名乗りを上げていることが明らかになりました。スポンサー候補の中には、イトーヨーカ堂とイオンの名前も挙がっています。ダイエーと同じ総合スーパーの「勝ち組」の両雄が参加の意志を示すのは、当然といえば当然でしょう。今回は、このダイエー、イトーヨーカ堂、イオンの創業者の息子の話題から始めます。
ダイエー創業者中内功氏の長男は中内潤氏です。中内潤氏は一時はダイエー本社の副社長にまで登り詰めたのですが、ダイエーの業績悪化により平取締役まで降格され、中内色を一掃するために最後にはその地位も奪われました。今では少なくとも目立った活動は何もやっていないようです。まさに「負け組」一族の典型ともいえる末路をたどったことになります。
この中内潤氏と、慶応大学商学部時代同じゼミの同期生だったのが、イトーヨーカ堂の創業者、伊藤雅俊氏の長男・伊藤裕久氏です。後継者と目されていた伊藤氏は、専務の地位にあった49歳の時に、突然ヨーカ堂を退社しています。退任の理由は、米国でITを勉強したいという本人の希望と伝えられていますが、実際に現在どのような活動をしているかは知られていません。噂では、「創業者の息子」というプレッシャーに耐えかねたからではないかとも言われています。 「勝ち組」のヨーカ堂の跡取り息子も、決して楽な人生ではなかったようです。
家業の岡田屋呉服店を、総合スーパーグループ・イオンとして発展させたのが岡田卓也氏です。その長男が現在の社長である岡田元也氏で、こちらの方は波乱なく後継者が育ったことになります。面白いのは、次男の岡田克也氏が民主党の代表であることです。岡田克也氏は東大法学部卒業後、通商産業省に入ってから政治家になりました。岡田克也氏の場合は、偉大な父親を持つプレッシャーとは無縁だったのでしょう。しかし、父親に負けないよう自己を律して清廉潔白な人生を送ってきた影響で、堅物過ぎて扱いにくいという風評も聞かれます。現在ところでは、中内家、伊藤家と比べれば、岡田家は家内安泰というところでしょう。
ここから少し政治がらみの話になります。ダイエーが最終的に産業再生機構の手に委ねられるまでには、紆余曲折がありました。簡単に言えば、「金融庁が推進する再生機構活用派」と「経済産業省をバックとした自主再建派」との争いです。結局は銀行がらみの圧力を使った再生機構活用派の勝利という形で、この「政治問題」は決着を見ました。ダイエー再建にイオンが正式に名乗りを上げたことによって、また別の形で「政治問題」が再燃しそうな気配があります。情報源は、『ダイエー争奪、三つどもえ――イオン、基盤拡大、一気に関東攻め』(2004年10月15日 日経流通新聞MJ 1面)です。
関東の営業基盤が弱いイオンにとってダイエーの店舗は魅力に映る。ヨーカ堂や西友・ウォルマート連合に比べ、競合している店舗は少なく、ダイエーの店舗とイオングループの店舗は補完関係を築ける。仮にイオンがダイエーを支援した場合、単純計算で単体の売上高が3兆円を超え、業界2位であるヨーカ堂の2倍の規模になる。「競争政策上、断トツ1位の企業グループを再生機構が作ることになっていいのか」(自民党中堅代議士)といった声もある。
再生機構を担当する村上誠一郎・産業再生担当相は民主党の岡田克也代表の義兄というのも引っ掛かる。経済合理性や透明性の確保に努めてもイオン寄りと見られかねないからだ。9月27日、村上氏の再生担当相就任の報を聞いたイオン関係者は「ダイエー案件はもう来ない」と天を仰いだ。
村上氏も曾祖父の代からの代議士一家の出身で、所属は自民党です。ここまでの話を簡単にまとめると次のようなことになります。
- ダイエーのスポンサー企業を決定するのは、与党自民党の村上氏
- 村上氏は、野党民主党の岡田氏と姻戚関係にある
- 岡田氏は、経産省(当時は通産省)出身である
- 経産省は、ダイエーの再生機構入りには反対であった
果たしてダイエーのスポンサー企業にイオンが指名されると、喜ぶのは誰でしょうか。イオンは喜ぶはずです。民主党の岡田代表は喜ぶのでしょうか。利害相反とかの難しい問題に巻き込まれそうなので、民主党としては迷惑かもしれません。民主党が迷惑だと、自民党は嬉しいのかもしれません。その逆もあるのかもしれません。経産省も負けたままで黙っているつもりでしょうか。経産省にとっては、ダイエーが外資の再生ファンドの手に渡るよりは、国内のイオンが再生する方が色々とクチを出せる機会が増えて嬉しいでしょう。ダイエー再建に何らかの関わりをもって、名誉挽回のチャンスを虎視眈々と狙っているに違いありません。それとも、一度経産省を袖にして機構入りしたダイエーには、もう関わりたくないのかもしれません。
思惑が入り乱れて、よくわからなくなってしまいました。一般市民としては、ダイエー再建のスポンサーが「政治問題化」することなく、純粋な経済合理性から選ばれるのを願うばかりです。なお、創業者の2代目特集としては、いま話題の堤一族も触れるべきとは思ったのですが、今回はダイエー再建をテーマにしたのでやめにしました。
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