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世界一を目指すトヨタの社員に対するヘッドハンターの評価は低い

2004年11月10日

トヨタ自動車の新型高級セダン「マーク X(エックス)」が発表されました。これは、看板車種の1つである「マーク Ⅱ」の後継車で、今回の全面改良を機に名称を変更してイメージの一新を狙ったものです。本日の日本経済新聞13面の記事には、「マークという名称を残し従来の客層の取り込みを狙いながら、若者などこれまでにない顧客層を意識し未知なる可能性を意味する『X』を組み合わせた」という張富士夫社長の談話が掲載されています。

私は、これまでのローマ数字の2が一挙に10に繰り上がって、「マークテン」と呼ぶのだとばかり思っていたのですが、X は数字ではなく英語だったんですね。Pentium 4 の後継プロセッサを、Pentium V(ヴイ)と呼ばせるようなものでしょう。マーク X は、意地悪な読み方をすれば「バツ印」「ペケ印」とも取れるブランドネームです。なお、「フェアレディZ」を持つ日産のほうでは、「Zはアルファベットの最後の文字で、究極と未知の世界に挑む日産のシンボル」と主張しています。自動車メーカーの都合で、勝手に「X」と「Z」の意味を解釈されても困るという感じもします。

今回はトヨタに関する最近の掲載記事をまとめて紹介します。最初は同社の世界戦略に関する話題です。情報源は、『850万台の世界販売計画 トヨタの世界制覇宣言』(週刊東洋経済 2004年11月13日号 p.18)です。

「2006年には、850万台程度(の世界販売)を目標に頑張りたい」。04年9月中間期決算で過去最高業績を再び更新したトヨタ自動車。11月1日夕、都内で開かれた経営説明会で奥田硯会長は、世界販売台数を03年の678万台から、わずか3年で172万台(25%)引き上げる意欲的な計画を明らかにした。世界首位・米GMの世界販売は03年で約810万台。世界の自動車メーカーの中で、トヨタはすでに純利益1兆円超という突出した収益を誇っており、2年後には、トヨタが名実ともに世界の頂点を極めている公算が高い。

これまでトヨタは、ビッグスリーからシェアを奪っている米国をはじめ、内外の関係者・ユーザーから反発を買うことをおそれ、ひたすら「不言実行」に努めてきた。そのトヨタが、対外的に具体的な数字を挙げて中期の販売目標を示したのは、かつてない出来事。しかも、事実上の世界制覇宣言を行ったわけだから、これは大きな変化である。

いよいよ販売数量ベースでの世界No.1の地位が、トヨタの射程距離に入ったという威勢のいい話です。続いては、トヨタは販売数量だけでなく、品質でも世界最高基準を達成した結果、いまや他社の目標になっているという内容です。情報源は、『現代自が挑む「トヨタ品質」 日本で先行販売のSUV、目標を上回る滑り出し』(日経ビジネス 2004年11月8日号 p.16)です。

自動車販売実績で世界7位の韓国の現代自動車が、「品質」をアピールし、激戦の日本市場に食い込もうとしている。鄭夢九会長自ら「トヨタ自動車の品質に勝ちたい」と目標を明示。米調査会社JDパワー・アンド・アソシエイツによる米国での購入時の初期品質調査で、2004年は前年より順位を8つ上げ、1位のトヨタに次ぐ2位につけた。2001年の本格参入以来、苦戦が続いていた日本でも、新車販売にその成果が出始めている。

北米やアジア地域に比べれば、遅れが指摘されていたEC地域での展開でも、着々と地歩を固めつつあります。情報源は、『英国トヨタ、個人/法人、ドライバー向けのWebサイトにBroadVision採用』です。

英国トヨタ自動車のドライバー向けポータル「GetMeThere.co.uk」は、BroadVision社がシステムインテグレーターであるIS Solutionsと共同運営しているサイトで、無料で利用できるサービスだ。このポータルは、旅行プランサービスなど、一般のドライバーに利用価値の高い情報を提供することにより、トヨタの認知度向上に貢献しているという。また、法人顧客向けのエクストラネットは、パーソナライゼーション機能を備えており、例えば、従業員に車を支給する顧客企業のニーズに合った情報提供をサポートできる。まず、ユーザーはサイトにログオンすると、トヨタの車種の中から自分の職種や資格に応じて、支給対象となる車の情報を得ることができる。この際、車体の色などのオプションを選択して、選んだ車に関する情報を印刷したり、家族や友人に送信したり、車両担当マネジャーに送ることもできる。

カンバン方式を代表とするトヨタのビジネス戦略は全世界で注目の的で、同社をテーマにしたビジネス書も多数出版されています。世界第1位の自動車メーカーを目指すトヨタの社員は、皆さん優秀な社員ばかりなのでしょう。さぞかし他社からも引く手あまたで、ヘッドハンター達の恰好のターゲットになりそうだと、うらやましがるのが普通の発想でしょう。ところが、実際は少し様子が違うようです。日本のヘッドハンターの第一任者である、縄文アソシエイツの古田英明社長が「ヘッドハンティングをする価値のある会社を挙げるならどこですか」という質問を受けて、次のように答えています。情報源は、『恨みで転職はするな 編集長インタビュー 古田英明 縄文アソシエイツ社長』(日経ビジネス 2004年11月1日号 p.50-53)です。

例えば、価値のない会社はトヨタ自動車。ある方が、「トヨタでは全体のことを考えるのは副社長以上だから」と言っていましたよ。そういう仕組みが作り出した強さはありますし、トヨタでも人材は育っているのでしょう。でもやっぱりトヨタの人材として育っているということでしょうか。

このコメントは、トヨタではあまりにもシステムが完成され過ぎているので、ごく一部の人材を除けば、全体的な事業戦略を考える必要がないということを述べたものです。会社として高い業績を上げたとしても、それは社員個々人の能力というよりは、組織全体の効率の高さの影響と考えられるので、ヘッドハンターとしては優秀な人材を見つけ出しにくいという事情も反映しているのではないでしょうか。また、トヨタの中で優秀な人材でも、他社ではどの程度通用するのか未知数な部分が大きいと考えているようにも理解できるコメントです。

一般には「トヨタ式」というのに対して「ホンダ流」と呼ばれることが多いようです。トヨタ式は、なんとなく社員を型にはめる没個性的なニュアンスが感じられます。一方、ホンダ流には、ベースとなる精神、価値観を共有した上で実践方法は社員個々人の自由裁量に任せるというような、伸びやかな雰囲気があります。

以上は外部から見たトヨタ社員の印象にすぎません。本当は生き生きと自由闊達に働いているのかもしれません。完璧なシステムの中で働いているので、社員の能力が正当に評価してもらえないと嘆いているトヨタマンは、実在するのでしょうか。そもそも、世界1位の会社で働いている人は、内部での評価がグローバル・スタンダードになるので、外部からの評価を気にする必要もないという考えも可能です。また、世界1位の会社の社員は転職願望もないので、ヘッドハンターがどんな風に評価しようとも馬耳東風と受け流す余裕があるのかもしれません。


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