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ソフトバンクのダイエー球団の買収金額の当否を論じることの無意味さ

2004年11月11日

ソフトバンクのダイエー球団買収が現実味を帯びてきました。今回は、産業再生機構がダイエー本体のスポンサー企業を確定するのを待ったりするような、まどろっこしい方法ではありません。球場を保有する米国の投資ファンドのコロニー・キャピタルから直接買う方法を選んだようです。考えてみれば、孫正義氏は日本テレコムをリップルウッドから買収したように、投資ファンドには独自のチャンネルを持っている人なので、孫氏らしい手法ともいえます。

気になるのは、ソフトバンクの球団買収金額です。私個人としては、孫氏は一度買うと決めたらどんなに高くても買う人だと思っています。なにしろ、リップルウッドが2,600億円で買った日本テレコムを、3,400億円で買ったくらいですから。今回も、他人が高すぎると文句をつけようが、買うと決めたものは買うでしょう。そこら辺が、底値買いを信条とするライブドアの堀江貴文社長が、提示された西武球団の買収金額が高すぎると言っているのと違うところです。

西武側の200億円の売値に対して、堀江氏は100億円以下でなければ話にならないと拒絶したと伝えられています。我々がモノを買おうとした場合、売り手と買い手の金額に2倍の開きがあることは、普通ありません。通常の商取引と同列の感覚で球団買収を理解しようとしても無駄です。こんなに両者の希望価格に乖離がある理由は、そもそもプロ野球球団の適正な買収金額なんて、誰も計算できないからでしょう。

大まかにいって、投資物件の価格を計算するには次の3つの方法があります。正常な投資物件であれば、どの方法を採ったにしろ積算価格はある程度のレンジに収斂されるはずです。
1.原価法
2.収益還元法
3.取引事例法

「原価法」とは、物件を一から作ったらいくらかかるかを計算する方法です。 工場なんかでは、土地、建物、機械などの金額を全部合計して求めます。「収益還元法」とは、予想される収益から逆に適正な物件価格を計算する方法です。例えば、毎年10億円の利益が期待できて、5年間で投資金額を回収すると計画します。そうすると、買収金額は50億円が適正となり、6年目以降からは毎年10億円の黒字が見込めることになります。「取引事例法」とは、文字通り最近の類似物件の取引価格を参考にして計算する方法です。

各々の方法でプロ野球球団の適正買収価格を計算することを考えてみます。球団はソフトな資産ですので、個々のパーツ毎に分解した原価を計算することは困難です。したがって原価法は適用できません。元々単独では経常的に赤字が続いている球団経営に対して、黒字転換を前提とした収益還元法を使うこともできません。楽天やライブドアが黒字になる経営計画をプロ野球機構に提出していたので、計算できるはずだと考える人もいるでしょう。私は、あんなものはかなりいい加減だと思っています。そもそも肝心の獲得できる選手の名前も決まっていないのに、計算した興行計画には信憑性がありません。主演キャストが決まっていない映画の興行計画のようなものです。両社が提出した計画は、映画の例で言えばとりあえずのシナリオと配給プランを提示した程度の大雑把なものでしかありません。

取引事例法では、TBSが横浜ベイスターズを取得した金額を元に計算できそうです。具体的には、ダイエーはパリーグだからマイナス20%、ベイスターズより成績が上なのでプラス10%とかの、修正を加える作業が伴います。そもそもベンチマークとなるベイスターズの金額が適正かどうかもわからないですし、それに加減する評価ポイントも極めて恣意的なものになります。所詮1件しかない取引事例からの計算も、妥当性に欠くのではないでしょうか。

乱暴な言い方にはなりますが、どっにせよ適正価格は計算できないので、孫氏がソフトバンクの事業ポートフォリオ全体を考えて、投資効果があると判断したら「気合で」買うしかないという結論になります。肝心の事業構成も将来のことは孫氏本人しかわからない部分も多くて、部外者は推測するしかありません。例えば、携帯電話事業に参入したソフトバンクが、プロ野球球団をどのように活用できるのでしょうか。自社への直接効果はわからなくても、ドコモに球団を横取りされるリスクは避けたい、という考え方があるのかもしれません。

しかし、ソフトバンクグループがどのような買収方法使うにせよ、期待する経済効果を少なくとも株主には説明する責任があることも事実です。ただブランド認知度の向上を、念仏のように唱えているだけではいただけません。ある程度の嘘は許すとして、夢のある壮大なプランを示して欲しいものです。ソフトバンクの株主は、そのプランによってソフトバンクの球団買収の当否を判断するだけでしょう。


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