ブランドと社名の関係:マンダムの社名がギャツビーに変わる日は来るか
2004年11月11日
男性用化粧品会社のマンダムの中間決算が発表されました。本決算の見通しでも8期連続の営業増益が予想される好決算です。このマンダムの高収益体質を牽引しているのが、主力ブランドの「ギャツビー」です。このブランドだけで今期250億円の販売が見込まれています。今回はマンダムのブランドネームと社名の関係を話題として取りあげます。情報源は、『マンダム、最高益8期連続――危機に学んだ「身の丈経営」』(2004年11月11日 日経産業新聞 28面)です。
男性用化粧品大手マンダムの業績が堅調だ。10日発表した2004年9月中間期の連結決算は増収増益を確保、通期で8期連続の営業最高益を見込んでいる。かつて経営危機に直面した同社は冒険をしない「身の丈経営」が信条。現場に近い社員の声を地道に拾い上げる「ボトムアップ経営」も徹底し、緩やかで着実な成長を目指す。
「う~ん、マンダム」。中年男性の記憶に残っているこのセリフは、1970年に始めたテレビCMで米人気俳優のチャールズ・ブロンソンを起用して流行語になった。CMの大成功を受け、ヘアリキッドやスキンクリームなどの「マンダム」シリーズは急成長した。ところが、社長以下ごく数人の役員主導で始めた78年の直販制でつまずく。現在の主力に育った「ギャツビー」ブランドを投入した同社は小売価格の安定を狙って大手の資生堂などをまねしたが、男性用専業では直販網を維持する負担が大きすぎた。反発した問屋業界から販売店への圧力もあり、販売激減で直販制の撤回を強いられた。
93年に発売した女性用無香料化粧品「ルシードエル」は、営業員が「無香料の『ルシード』は男性用なのに女性も買っていく」と指摘したのがきっかけ。調べてみると購入者の2割は女性。「香りがないため香水のにおいと混ざらない」「男性用だから整髪力が強そう」という理由があった。
この記事を読む前からマンダムの社名の由来を知っていた人は、記事にある通り「中年男性」に違いありません。元々は男性化粧品のブランド名であった「マンダム」が大ヒットしたので、社名もブランド名に合わせて変更したわけです。その1つ前の社名が「丹頂」で、主力製品が棒状ポマードの「丹頂チック」であったことを知る人は、もはや「老年」の部類に入るのではないでしょうか。現在のメインブランドの「ギャツビー」の由来に関しては、マンダムでは特に説明していません。しかし、これがフィッツジェラルドの名作『華麗なるギャツビー』からヒントをもらったことも明らかでしょう。いまや、ロバート・レッドフォード主演の映画を知らない人がほとんどなのかもしれません。
マンダムの歴史とマーケティング戦略に関しては、『65日のオンリーワン・マーケティング―マンダムの革新的DNA経営』に詳しい説明があります。同書はマーケティングの実践書としてもお薦めです。簡単にいえば、元々香水を製造販売していた会社が、新ブランドがヒットしたら、そのブランド名に社名を合わせてきたというのが、マンダムの歴史です。ある意味一貫性のあるコーポレート・ブランド戦略ともいえます。
・1933年 「丹頂チック」発売
・1959年 社名を「丹頂株式会社」に変更
・1970年 広告キャラクターとしてチャールズ・ブロンソンと契約
・1970年 「マンダムシリーズ」発売
・1971年 社名を「株式会社マンダム」に変更
・1978年 「ギャツビー」発売
・1999年 「ギャツビー」が男性用化粧品で業界初の100億円突破
これまでの歴史通りに進むなら、マンダムの社名がいつギャツビーに変更されてもおかしくないはずです。現在は化粧品もユニセックス化していますし、マンダムも女性用の化粧品「ルシード エル」シリーズも発売しています。いかにも男性ぽい名前のマンダムを変更する方が、将来のビジネス・ドメインを考えると、相応しいようにも思えます。
またマンダムは株式市場では、好業績の割には株価が安い「割安株」とよばれることが多いようです。さらに同社の株主に関しては、もう1つ特徴的なことがあります。
『マンダムの議決権行使、ネット経由1割超す――若い株主が積極活用2年連続で群抜く』2004年7月5日 日経金融新聞 5面
マンダムの今年の株主総会では、インターネットを利用して議決権を行使した株主の比率が11.5%となった。導入初年の昨年は10.9%で、2年連続で1割を超えた。ネットでの議決権行使は2002年の商法改正で認められた。今年からはソニーやNTTが携帯電話での行使も受け付けた。ネットでの議決権行使を受け付ける企業は広がっているが、行使株主の比率は各社で数%止まりで1割を超えるのは珍しい。マンダムの東京証券取引所上場は2002年1月で、古くからの個人株主はいない。加えて、品ぞろえも若い層向けの商品が主体のため、会社側では「他の企業に比べ若い株主が多いことが理由ではないか」(広報IR室)と見ている。
マンダムは製品ユーザ、株主とも若者が中心の企業になりました。この際、ターゲットである若者への訴求力を高めるために、社名もギャツビーに変更する可能性はあるのでしょうか。しかし、マンダムの名前は東南アジアを中心に幅広く浸透しています。ここまでビジネス展開が大きくなると、単品経営に近かった時代のようには簡単に社名を変更できないというのが実情ではないでしょうか。
なお、同じく昨日にソフトバンクの決算発表会も行われました。ソフトバンクは汐留への本社社屋移転、携帯電話事業やプロ野球事業への参入など、これから大きなイベントを予定しています。同社でもこれまで一貫性がなかったブランドネームを統一することを計画しています。目白押しのイベントの中のどこかのタイミングで、新ブランドが発表されることになると思います。一挙に社名変更まで考えているかどうかは定かではありません。
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