ボストンコンサルティンググループ次期代表は水越豊、御立尚資のツートップ体制
2004年11月20日
日本のボストンコンサルティンググループ(BCG)の代表人事が決定しました。水越豊(みずこしゆたか)シニア・ヴァイス・プレジデント(48歳)と、御立尚資(みたちたかし)ヴァイス・プレジデント(47歳)が、来年の1月1日付で、共同代表に就任することになります。なお、現代表の内田和成(うちだかずなり)氏は、シニア・ヴァイス・プレジデントに退く予定です。情報源は、『熱の水越氏、理の卸立氏 ボスコン、時期日本代表は異例の2人体制に』(日経ビジネス 2004年11月22日 p.16)です。
2人のキャリアは甲乙つけがたい。水越氏は東京大学経済学部卒、米スタンフォード大学でMBA(経営学修士)を取得し、新日本製鉄から1990年にBCG入り。93年に日本航空から転じて御立氏も京都大学文学部卒、米ハーバード大学でMBAを取り、成績最優秀者に贈られるベイカースカラーを授与された。水越氏は通信やハイテク、製造業に精通し、御立氏は消費財や流通業、金融サービス業のエキスパートとして実績を積み上げてきた。
かつてBCGで机を並べていた樋口泰行・日本ヒューレット・パッカード社長は、「2人とも非常に頭脳明晰でしかも柔軟。御立さんは論理的でプレゼンテーション能力が際立っているし、水越さんには強い信念とパッション(情熱)、人間味がある」と評する。
コンサルティング業界関係者のみならず、顧客企業も注視していたBCGの次期日本代表。いざふたを開けてみれば異例ながらも誰もが納得する結論だった。2人代表制の提案に、17人いるパートナーから、異論はなかったという。もし1人に絞れば、もう1人は社外へ流出したかもしれない。その意味で賢明な判断をしたと言えそうだ。御立氏が「業容が拡大しており、責任者が1人ではカバーし切れない」と言えば、水越氏は「弁護士事務所なら代表者が2人いるのは珍しくない」と応じ、二人三脚を強調する。
新代表に選ばれた2人は記事にある通りの立派なキャリアの持ち主です。とりあえず波乱の人事がなかったBCGの将来も安泰ということでしょう。今回ツートップ体制(英語では"Two-in-a-box")になった理由を少し考えてみます。この背景には、戦略コンサルタント業のビジネスモデルの変化があるのではないでしょうか。従来の戦略系コンサルタントは、クライアントに対して戦略を提案し、その実現(インプリメンテーション)までは手を出さないのが普通でした。そういう時代に求められていたトップ像は、自社のシンボルとして、ある種のカリスマ性と強力なリーダーシップを兼ね備えた人物でした。BCGであれば堀紘一氏、マッキンゼーであれば大前研一氏のような、個性の強い人がその好例です。
最近では、戦略系コンサルタントでもインプリメンテーションの部分まで責任を持って実施することを、クライアントから要求されるようになってきました。昔のようにコンサルタントが「水戸黄門の印籠」を見せれば、例え提案した戦略プランが絵に描いた餅で終わってしまっても、許されていた時代ではなくなったのです。こういう時代に求められるのは、強烈な個性というよりも確実な実務執行能力です。次期日本代表の2人は、堀、大前の両氏に比べれば小粒な印象を与えますが、時代の要請にはマッチしているのではないでしょうか。
日経ビジネスの記事の中にも1人に絞ると、もう1人が退社する懸念があったことが述べられています。昔はトップコンサルタントが抜けると、その人を慕って部下のコンサルタントも後を追うこともありました外資系コンサルティング会社のBCGから吉越社長ら10人が独立、新会社設立。)。堀紘一氏が起業したドリームインキュベータの取締役を占めるのも、BCG出身者です。昔はこうしたことがあっても、残されたコンサルタントだけで十分に勢力を盛り返せるほど、組織力にも余裕がありました。また、残った会社の新代表がスリムになった組織をグイグイ引っ張っていく方が、組織運営上健全であるという考え方もあったようです。現在の戦略コンサルティング業界に比べると、隔世の感があります。
なお、ツートップ体制は法律事務所に限らず、米国企業ではそんなに珍しいことではありません。例えば、マイケル・デルがCEOを退いたときも"Two-in-a-box"という言葉が使われていますし、インテルでも同様な体制を採っています(米Dellが新CEOを任命…Dell会長はテクノロジに焦点)。
米Dellは、ニューヨーク市で開催した取締役会で、Kevin Rollins社長兼COO(最高執行責任者)が新CEOに任命されたことを発表した。7月16日の株主総会で正式に就任する予定で、社長も兼任する。創業者のMichael Dell現CEO兼会長は、会長として引き続きDellを率いる。
Dell氏が企業の顔となっているが、近年のDellの成功は、同氏が研究開発を含むテクノロジ分野を率い、Rollins氏が経営戦略を担当するという分業に寄る部分が大きい。Rollins氏がCEOに就くことで、「成功している"Two-in-a-box"の経営組織が今後も維持される」とDellは説明している。
今回のBCGの新人事では、御立氏が外交面で水越氏が内政面といった区分けになるんでしょうか。
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