佐川急便も短期間で荒稼ぎ可能な苛烈な実力主義から普通の成果主義に変貌中
2004年11月26日
前回の投稿(成果主義の正確な評価には人事システムのトータル像を把握することも重要 に引き続き、成果主義について考えてみたいと思います。現在のように成果主義という用語が一般に広まる前までは、実力主義という言葉が使われていたような気がします。今でも実力主義という言葉の方が相応しい場合もあります。その最たる例は、プロスポーツ界だと思います。理由は、プロスポーツの世界では、「実力=成果」ということが当然のように考えられているので、あえて成果というまどろっこしい言葉を持ち出す必要がないからです。ここがビジネスの世界と根本的に異なるところでしょう。ビジネスの世界では、必ずしも「実力=成果」という等式が成立しないことが前提になっています。したがって、一定期間における「実力」が発揮された結果を「成果」として評価することにしましょう、という発想が生まれたわけです。
しかし、プロスポーツの世界でも「実力=成果」の関係が成り立たなくなると、問題が生じることは、ビジネス界と同じです。ここ数日間、巨人残留か他球団への移籍かで、その去就が注目されている清原選手の場合もこれにあたるのではないでしょうか。清原氏の主張は、おそらく実力があるのにもかかわらず、不本意な成果しかあげられなかったのは、起用法のせい。来期も同様な起用法が続くのであれば、「実力=成果」の関係が取り戻せる他球団でのプレーを希望したい、あたりでしょう。
入ってすぐ、佐川の強さが分かった。同じ地域で日本通運は配達に2人、集荷に2人、営業に1人と計5人でやっていた。それを佐川は1人でやる。僕も4人分はやった。給料は確かに他社の2倍だけど、4人分は働くから会社は2倍儲かる仕組みなんだ。
1年後、給料を80万円にするから本部で働いてくれと誘われたが、独立を考え断った。重い荷物を運んで腰は痛めたけれど、佐川には本当に感謝している。必至に働き月25万円貯めて作った300万円が、今のワタミの資本金だ。あれだけの厳しさに耐えられた、というのは大変な自信になった。
創業のチャンスも佐川がくれたようなもの。居酒屋「つぼ八」の創業者と会った時、佐川で働いて資本金を貯めたことを話すと、5000万円貸してくれた。固い決意と経験を認めてくれたんだと思う。その後、つらいことがあっても、「あの地獄だけには戻りたくない」という強い思いが僕を支えてくれた。
渡邉社長が佐川急便に勤務していたのは、1982年から84年までの期間で、今から20年以上前のことになります。そんな時代でも、佐川急便の労働実態が異彩を放っていたのは確かなことのようです。しかし、渡邉氏のコメントの中で注目したいのは、佐川に対して感謝の言葉こそあれ、非難する姿がまったくないことです。これは渡邉氏が自分の目標である創業資金を短期間で貯めるには、当時の佐川急便の給与体系が好都合だったからです。そして当初の目論見通り、 その資金を元手に見事に独立・開業して大成功をおさめることができたので、過酷な労働も十分に納得にいく選択だったわけです。なお、渡邉氏は和民での成功体験を学校経営にフィードバックしようと、私立学校の理事長として教育事業に情熱を注いでいます(私立学校 新しい学校経営のあり方)。
しかし、渡邉氏のように短期思考の人間ばかり集まっては、コアとなる人材も育たず、会社の永続的な成長を考えると望ましいことではありません。実際に離職率が異常に高かった当時の佐川急便は、色々社内的な問題を抱える会社でした。その後の東京佐川急便事件をはじめとする一連の不祥事の発覚を経て、佐川急便は企業変革を迫られことになりました。現在の同社は、普通の会社へ転換するために数々の施策を実施しています。青天井の実力主義にも変化が見られてきました。先ほどと同じ情報源からの引用です。
かつては日本でも随一の高給に、血気盛んな若者が群がった。今では給与水準は下げていないものの、労働実態にに合わせ昇給を見直し、上限を設けている。ある意味「普通の会社」を目指してきた佐川の新たな苦悩も、実はそこにある。
この問題に、専務の辻尾敏明はこう答える。「確かに年収ベースではかつてより下がっただろう。だが、休みも取れるし、今や東京佐川事件を知らない優秀な若者も入ってきている。一生賢明やるドライバーをどう処遇するか。これこそ重要だ」。
このため、1999年以降は年功色を排し、より成果を反映した給与制度を導入してきた。今では初任給は月36万~37万円程度だが、1回の評価で昇給は最大5万円ぐらいの差が生じる。来春導入予定の新給与制度で設けた上限は月70万円台。100万円を超えた過去には及ばないが、頑張った人はそれなりに上がる仕組みにした。
幹部の登用制度も見直す。かつてはドライバー経験者が自然に幹部になってきたが、店長の独自の裁量によるところも大きかった。今後は社内の統一基準を設けて幹部候補生を選抜し、透明化を図る予定だ。苦情受付窓口も拡充するなど、現場のドライバーの士気向上を狙う。
佐川も命を削ってでも荒稼ぎを目指す会社から、通常の会社と同じ近代的な給与体系の会社に変わっていくようです。これも時代の流れでしょう。しかし、短期間で借金を返済したい人とか、渡邉氏のように創業資金を貯めたいと思うツワモノにとっては、こういう会社がなくなってしまうことは残念なことでしょう。借金を返すには、もうマグロ船に乗るしかないんでしょうか。
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