カタログ通販でのストーリー・マーケティングとターゲット・マーケティング
2004年12月16日
ネットショッピングの普及が、ビジネスモデルに深刻な影響を及ぼすと考えられる業態の1つとして、カタログ配布型の通信販売があります。例えば、通販大手のセシールでは、2004年12月期の連結売上高が前年同期比8.5%の減少、最終損益でも88億円の赤字になる見通しです。このような厳しい環境下で、通販各社とも独自のマーケティング戦略を展開する動きが見られます。情報源は、『カタログ売る「通販生活」――ユーモアで読ませる工夫』(2004年12月15日 日経流通新聞MJ 3面)です。
インターネットが登場し、書籍など活字メディアの販売部数が落ち込むなか、有料で、しかも定期購読者が123万人もいるカタログ誌がある。カタログハウス(東京・渋谷)が発行する「通販生活」だ。お金を払ってでも読みたい顧客が100万人いるというその顧客基盤のパワーは、無料カタログの顧客数でいえば1,000万人に匹敵する反応率の高さになる。
またこのカタログが他社の通販カタログや小売店と決定的に異なるのは品ぞろえで、顧客に代わってプロが吟味した商品を1ジャンル1機種で推薦する。1冊2,500~5,000点を掲載する一般的なカタログに比べ、販売前の商品検査が十分でき、一点ずつの商品説明も丁寧に行えるメリットがある。「読ませる工夫」に加え、「購入してもらう工夫」として、各界で活躍する文化人や著名人による利用者の声の紹介にも力を入れる。また「ユーモアで飽きさせない工夫」も誌面にあふれている。その好例が秋号で特集したヨン様グッズ。商品だけでなく、ユーモアも売り物にしていることがわかる。
通販生活のWebを見れば、通常の通販サイトと違うことが一目瞭然で、むしろ出版社のサイトに近い印象を受けます。トップページには、普通のECサイトのような直接的なセールス情報はありません。あるのは通販生活最新号の目次紹介と、同誌の定期購読を促すリンク程度です。あくまでも雑誌を購入した人に、記事中で紹介した商品を買ってもらおうという戦略です。
最新号の巻頭特集は、「文士の重宝」で、通常の文芸誌クラスの豪華な執筆陣を揃えています。各人がお気に入りの逸品にまつわる話を独自の視点で語る内容なので、宣伝色はあまり感じられません。井上ひさし氏が万年筆、林真理子氏が拡大鏡、重松清氏が照明スタンド、立松和平氏がウォーキングシューズ、佐藤愛子氏が安楽椅子を紹介しています。それ以外にも、懐かしい故人ゆかりの商品に関するエピソードとして、池波正太郎氏、開高健氏、山口瞳氏も取り上げられています。
通販生活のアプローチは、通常の記事を読ませながら、ごく自然に厳選した商品の購買を誘引するという、ストーリー・マーケティングがコンセプトです。したがって、他の通販誌に比べれば1冊あたりで掲載できる商品数も少なくなります。その分付加価値の高い商品が多く、1品あたりの粗利も高くなっているのではないでしょうか。
一方、通販生活とは逆に大量商品紹介型の戦略を踏襲しながらも、リニューアルによるテコ入れを図ろうとするのが、セシールです。情報源は、『セシール、カタログ、ターゲット別に、年5回、最新傾向反映――デザイナーも増員』(2004年12月15日 日経流通新聞MJ 6面)です。
通販大手のセシールは、商品群別に分類していたカタログを年齢や性別などターゲット別に再編した。発行回数も年2回から5回に増やす。最新の傾向を反映させて、デザイン性の高い商品を適切な顧客層に提供し、顧客満足度を高める。デザイン性の高い商品の開発を強化するため、1日に東京に商品開発拠点を開設、デザイナー8人を新規採用した。
従来、婦人服と紳士服はほとんど「セラヴィ」というカタログに集約していた。1日から、25~44歳向けの「レディースセシール」や45~59歳向け「セシールスタイル」などに再編、九種類のカタログを用意した。発行回数も増やし、最新の傾向を反映させる。「1冊当たりの部数は減るが、適切な顧客にカタログを送ることを徹底する」(久本和彦専務執行役員・統括本部長)。
同社のカタログ再編の背景には、ネット販売に対抗する意図があることは明らかです。注目すべき1点目は、顧客ターゲットの広さと深さのバランスです。ネットショップではインターネットユーザであれば誰でもアクセス可能ですが、実際に注文を受けるまではユーザ属性を把握することはできません。したがって、幅広いターゲットの共通ニーズに応えようとすれば、内容も浅くなります。
一方カタログ通販では、ターゲットは自社の雑誌購読者に限定されます。しかし、読者属性に応じて送付する掲載の内容を絞り込めば、余計な情報を盛り込む必要もなく、特定層に対する深いコミュニケーションが可能になります。今回のセシールのリニューアル策は、この限られたリーチというカタログ販売でのマイナス点を生かして、ターゲット・マーケティング志向を加速しようという発想です。
2つ目は、提供情報の鮮度の問題への対策です。リアルタイムで更新ができるWebサイトに比べれば、カタログ通販は情報の新鮮さという点でハンデがあります。今回は発行頻度を増やすことにより、情報鮮度の向上を狙ったわけでしょう。
今回の通販生活とセシールの戦略は、各々ストーリー・マーケティングとターゲット・マーケティングの好例と言えるものです。何れにせよ、明確なマーケティング・コンセプトがないと、ネットの時代にカタログ通販が生き残っていくことは難しくなることは明らかです。どっちつかずの中途半端な方針では、座して死を待つことに他なりません。
この考え方は、カタログ通販だけでなく、ネット販売にも当てはまるのではないでしょうか。さしずめブログでの商品紹介が、通販生活型のストーリー・マーケティングに当たりそうです。中には、商品紹介とわかっても面白い内容の投稿も多いものです。これとは別に個人運営のサイトでも、ターゲットを絞り込んだサイトでは、アフィリエイト収入が結構あがっているという話を聞きます。要するに、それなりの方針がないと、売上げに結びつかないということでは同じということでしょう。
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コメント
はじめまして。
トラックバックさせて頂きましたので、ご挨拶まで。
ストーリー・マーケティングとターゲット・マーケティングのお話を興味深く拝見しました。
消費者としての視点ではなく、マーケターとしての視点で見ると、企業戦略も色々楽しめますね。
Posted by: 通販カタログショッピング生活研究所 | 2004年12月18日 23:18