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MOT(技術経営教育)の前に、義務教育段階の理数系教育改革を『もっと』やるべき

2004年12月21日

この前の投稿「社長もいろいろ」時代に「社長の出身大学ランキング」の意味はあるか を書いたときに気づいた話題を改めて投稿します。前回ご紹介した東洋経済調査の上場企業社長の出身大学のランキングを再掲します。しかし、残念ながら私が知りたかった本当の情報はここにはありません。それは、出身学部が文系と理系とどちらに属するのかということです。情報源は、『上場企業の社長を数多く輩出する大学』(週刊東洋経済 2004年12月18日 p.146)です。

順位大学名社長数役員数学生数
1慶応義塾3683,06732,137
2東京2412,60927,312
3早稲田2182,68150,204
4京都1201,41621,617
5日本1071,05982,927
6中央951,48229,189
7同志社8277024,016
8明治731,00533,505
9大阪5658220,201
10一橋518146,528
21東京工業312409,878

文系、理系の学部別のデータがないので、無理を覚悟の上、同じ東京にある国立大の一橋大と東工大の数値の比較で代替することにします。前者を文系の代表、後者を理系の代表として考えることにします。

まず、最初に両社の社長数と役員数を比べてみます。東工大を1とした場合、一橋大の社長数は1.6倍、役員数で3.4倍となります。

社長数役員数
一橋大1.63.4
東工大1.01.0

実際には、東工大の学生数(9,878)は、一橋大の学生数(6,528)の1.5倍になるので、両校の卒業生を同数として社長、役員数を比較すれば、その差はもっと広がるはずです。以下は、学生数1,000人あたりの社長数、役員数を比較したものです。

社長数役員数
一橋大8125
東工大324
慶應大1195
東大996
早大453
他の有名大学と比べて、東工大卒業生の社長、役員の確率は極めて低くなります。一方、一橋大の場合は、1,000人の卒業生のうち、125人が役員という高い確率になります。この理由は、一橋大には、商学部、経済学部、法学部、社会学部の4学部しかなく、卒業生も大企業を中心にビジネス方面に進む場合が多いからだと考えられます。

さて、この東工大のデータから考えたいのは、日本企業における理系トップの少なさの問題です。技術立国日本を確立するには、技術と経営の融合が基本です。そのためには、経営層に技術系出身をもっと増やす必要があるのではないでしょうか。特に技術進歩の早いIT産業の分野では、上司が技術を理解できなことは日常の問題となりつつあります(上司が技術を理解できないのは、仕方ないです。

また、ビジネススクールでも技術系のMBAと呼ばれる『MOT(Management of Techonology:技術経営)』講座を開設するところが増加傾向にあります。この狙いは、日本の国際競争力を維持するのに必要な「経営がわかる技術者」を育成することにあります。MOTの設立背景は十分に納得ができ、「技術者に経営マインドを植えつける」方向性も正しいと思います。それは、「文系出身の経営者に技術を教える」という逆の方向より、遥かに容易であることが明らかだからです。

MOTが普及する以前でも、理想的なキャリア・バックグラウンドとは、大学で理系学科を勉強した人がMBAで経営マインドを習得することだと米国ではいわれていました。日本でも同様なことが当てはまる可能性は高いと思います。有名なところでは、早大理工学部卒の原子力工学博士・大前研一氏がマッキンゼーのビジネス・コンサルタントとして開花したような例があります。人事組織論で数々の著作がある高橋俊介氏も、東大工学部卒のマッキンゼー・コンサルタント出身者です。いずれにせよ、遅まきながら日本でもMOTの発想が注目されてきたことは歓迎すべきでしょう。

しかし、日本の将来を考えた場合、MOTのような専門教育を充実することよりも、真剣に対処すべきもっと身近な問題があるような気がします。それは、先頃発表された国際比較で明らかになった、小学校レベルでの理数系学力の顕著な低下の問題です。情報源は、学力調査:得意の理系も低下 文科省も認める--国際評価学会です。

国際教育到達度評価学会(IEA)が03年、各国の中学2年生(46カ国・地域参加)と小学4年生(25カ国・地域)の学力を調べた国際数学・理科教育調査(TIMSS)で、世界トップレベルとされてきた日本の小4理科と中2数学の平均点が前回(小4は95年、中2は99年)から下がったことが分かった。小4理科は553点(2位)から543点(3位)へ、中2数学は579点(5位)から570点(同)へと統計的な誤差の範囲を超えて下がった。高校1年生の読解力が下がった経済協力開発機構(OECD)の03年学習到達度調査(PISA)に続き、学力低下が浮き彫りになった。

中山成彬文部科学相は「二つの調査結果を見ると、我が国の子どもの成績には低下傾向が見られる。世界トップレベルとは言えない」と語った。文科省は国立教育政策研究所と共に両結果を分析して、授業改善策などの指導資料作りを急ぐ方針。

義務教育レベルでの理数系リテラシーがこのまま低下を続けると、理数系の大学に進学を希望する者も減ってくるのは間違いありません。入学者が減ってくれば、量を伴わない質の維持、向上はありえないので、当然ながら大学教育のレベルも下がってくるでしょう。そうなれば、ごく少数の卒業生に対してMOTのエリート教育を施したとしても、日本の全体の技術経営のレベルが向上するとは思えません。MOTの前に、義務教育での理数系教育の改革は日本が緊急に取り組むべき課題でしょう。


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コメント

主旨はよくわかりました。ただ一つ疑問が。

「上場企業の社長や役員」になることが今後ともそれほど意味のある指標になるのでしょうか??

>「上場企業の社長や役員」になることが今後ともそれほど意味のある指標になるのでしょうか??

前回の私の投稿を読んでもらえば理解できると思いますが、自分自身が創業した、もしくは創業メンバーとして参画した会社が上場企業になり、結果として指標に反映されるという点で意味があると思います。

資金調達、CSR等の面から「上場企業になる意味」があるのは、コクドの例からも明らかだと思います。

おっしゃるとおりだと思います。

ただ言われるようなケースに該当する役員さんが
何人いるかと考えると、あんまり意味がないような気が。。

たぶんこういうランキングって、10年もしたら、
廃れてるんだろうな。。

今役員になっているような人たちは、輝いている人たちの
中で競争に勝ってきたんでしょうけど、これからは
そうではないような気がします。

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