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おごるアップルは久しからず? iPod の独り勝ちが続けば風当たりも強くなる

2005年01月12日

iPod の快進撃が止まる気配が一向にありません。東京、大阪に引き続いて、1月22には名古屋でも直営店の「アップルストア名古屋栄」がオープンします(『アップルストア名古屋栄、1月22日オープン』)。先ほど開幕された世界最大の家電関係のトレードショウ「CES」でも、iPod は話題を集めました。パイオニアやクラリオンといったカーオーディオ・メーカーが相次いで、iPod を車内でも聞けるようにした接続アダプタを発表しています(『カーステレオでもiPod――大手メーカー各社、CESで対応アダプタを発表』)。さらに本日、現在の好調を磐石なものにしようと、廉価版の Mac mini と iPod shuffle を発表しました(『「iPodシャッフル」発表 容量512メガで99ドル 』)。まさに今のアップルには飛ぶ鳥を落とす勢いが感じられます。

しかし、これほど強くなると逆に風当たりが強くなるというのが世の常です。 今回は、絶好調のアップルに関するあまり芳しくない話題をご紹介します。1つ目は、一般ユーザからアップルが提訴されたという話です。情報源は、『「iTunesは違法」とユーザーが訴訟起こす』です。

オンライン音楽ストアiTunesに不満を持つユーザーが、Apple Computerを相手取って訴訟を起こした。AppleがiTunesを同社のiPodにしか対応させず、他社を締め出しているのは独禁法違反だと訴状で訴えている。この訴訟は1月3日にサンノゼの米連邦地裁で起こされた。1人の独禁法専門家はこの訴訟を勝ち目のない賭けだとしているが、カリフォルニアに住むトーマス・スラテリー氏はiPodの購入を「強制された」ことに対する損害賠償(金額は特定されていない)を望んでいる。

「Appleは、HDD音楽プレーヤー市場での競争を抑えるために、違法に抱き合わせを行い、合法オンライン音楽販売市場での独占力を利用した。またその逆のことも行った」と訴状にはある。スラテリー氏は自身を、自分の音楽を持ち歩きたければ「iPodを購入せざるを得ない」iTunes利用者と表している。

裁判では、原告側の訴えが全面的に認められるようなことはまずなさそうですが、アップルが独占禁止法違反で訴えられるようになったこと自体が、アップルが強くなったことを物語るものです。独禁法で訴えられるのは、昔はマイクロソフトばかりであったことを考えると、隔世の感があります。携帯オーディオプレーヤー市場では、PCのOS Windowsと同様のデファクト・スタンダードと呼ぶに相応しい優越的な地位を確立している証左でしょう。

2つ目は、自社の機密情報を漏洩しているという理由でファンサイトを提訴したアップルが、逆に非難を浴びているという話です。情報源は、『それでもApple新製品の噂はやまない』です。

米Apple Computerは、一部のMac関連BlogやWebサイトに対する訴訟により、世間から非難を浴びている。サンフランシスコで開かれるMacworldの開幕日に、電子フロンティア財団(EFF)は、AppleInsiderとPowerPageの発行人の代理人を務めることを明らかにした。これら2つのサイトは、「Asteroid」というコードネームの製品に関する情報を掲載したとして訴えられた。これらサイトは、Appleが今週、ミュージシャンが従来の音楽機器をMacにつなげるようにする新しい外付けデバイスを発表すると主張している。

Appleは12月13日にサンタクララの裁判所に訴状を提出した後、AppleInsiderとPowerPageに召喚状を発行する裁判所命令を獲得した。同社は、問題の情報をリークしたとされる「Does 1-20」というタイトルの投稿を行った人物の氏名を要求していると語った。EFFは、ブロガーたちの情報源は、ジャーナリストの取材源を保護しているのと同じ法律で守られると反論している。

この提訴は、現在進行中の裁判とは別に意外な方向に発展しています。アップルの主張は米国の憲法で保障された言論の自由を否定するものではないかと、批判する声が聞こえて来たからです(『アップルのMacファンサイト提訴--専門家の反応はいかに』)。元々、アップルは存在自体が反主流と自由の象徴のように解釈されることの多かったブランドです。そういう意味では、同社が言論の自由を抑圧しているかのように思われてしまえば、ブランドイメージが傷つくことは間違いないでしょう。これも、アップルが強くなったからこそ、浮上してきた新たな問題の1つと考えられます。

さらに、携帯オーディオプレイヤー市場でのアップル独り勝ち状態に挑戦して来る企業も跡を絶ちません。MP3対応のネットワークウォークマンを投入したソニーが、今度はPSPで iPod に反撃です(『「PSP」は“iPodキラー”~北米向けローンチイベント』)。

ソニー・コンピュータエンタテインメント・アメリカ(SCEA)は1月5日、「International CES 2005」会場近くのホテルで、ゲームベンダーや流通などの関係者および北米の報道陣を集め、PSPの北米向けローンチイベントを開催した。 同社の社長兼CEOの平井一夫氏の口からは「PSPは“ニンテンドーDSキラー”ではない。われわれの製品は“iPodキラー”だ」との言葉も聞かれた。音楽アーティストを招いてのデモでは、PSP内のメモリースティックに対して、ソニーの音楽配信サービス「Connect」からダウンロードした楽曲を転送。会場内で演奏させてみせた。

古くからのユーザが iPod がこれほどメジャーになって大喜びしているはずだと考えると、どうも事情は反対のようです。米国では、昨年10月の時点で誰でも持つようになった iPod を敬遠したがる複雑なファン心理が報告されています(『隠れiPodユーザー:使っているのを知られたくない人々』)。

文筆家で講演活動を行なっているセス・ゴディン氏は、米アップルコンピュータ社製の携帯音楽プレーヤー『iPod』を愛用している。すでに5台目だ。にもかかわらず、一目でそれと分かる付属の白いヘッドホンは一度も着用したことがない。理由? iPodを持っていると他人に気づかれたくないからだ。つまり、「隠れiPodユーザー」というわけだ。iPod愛好者の中には、少数だが愛好者と認識されることをひどく嫌う人々が存在する。

隠れiPodユーザーは、早くからこれを使っている人の間でとくに顕著な傾向となっていると、消費者行動を研究するイリノイ大学アーバナシャンペーン校のトム・オグイン教授(広告学)は指摘する。理由は、遅れて流行に乗った人だと思われたくないためだ。「根底にあるのは『少数派願望』だ」とオグイン教授は話す。たとえば、一部のマックユーザーにとって、アップル社の少数派としての位置付けと、市場シェアの少なさは「自慢のタネ」になっている。そこへiPodがメジャーになりはじめたために、一部の初期からのユーザーが、独占的な立場を奪われたと感じて嫌がっているというわけだ。

イギリスのサセックス大学でメディア・文化研究の講師を務めるマイケル・ブル博士も意見を同じくする。「iPodの人気が高まれば高まるほど、初期ユーザーの文化的優位は薄れていく。米国のiPodユーザーの多くが、街で見かけるiPodの数が増えていくことに懸念を示している。以前はほかの初期ユーザーを見かけたら、一種の特別な感覚、文化的な優越感を分かち合ったものだ。」

確かに iPod 純正の白いヘッドホンの米国での評判は芳しくないようです。高級ヘッドホンを別に買い求めるユーザもかなりいるらしく、ある音響メーカーは思わぬ特需で笑いが止まらない状態です(『iPod人気の御利益にあずかる音響機器メーカー--高級イヤホンがバカ売れ』)。この記事にあるように iPod ユーザと悟られることがイヤなのか、それとも単純により良い音質を求めてなのかは、実際の購入理由を分析しないと真実はわかりませんが。

最後に、絶対的信者の支持があるので、雨が降ろうと槍が降ろうとアップルは大丈夫という話で締めくくることにします。そんな信者の1人である米国の36歳の高校教師が、趣味が昂じて個人で iPod に捧げるCMを作りました(『『iPod』ファンが自主制作したCM、ウェブで話題に』)。実際にこのCMを見ましたが、素人の作品には見えない出来栄えです。結局、このような熱狂的なファンがいる限り、世間からどんな批判を浴びようともアップルは永遠に不滅という結論にしておきます。


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