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競争激化時代の到来を見込んだ国内MBAスクールの独自戦略

2005年01月19日

大学全入時代を目前に控えて大学間の学生獲得競争が激化しています。少子化時代の到来は、マーケットが縮小することを意味するので、生き残りをかけて大学間の競争が熾烈になるのも当然でしょう。少子化対策の一環として各大学が、積極的に取り組んでいるのが専門職大学院の新規開設です。こうした専門職業人の育成は文部科学省の政策にも沿うものでもあります。さらに社会全体として高度な専門知識をもった職業人に対するニーズも高まりつつあるので、大学院では需給面での心配は当面なさそうです。しかし、大学院進学者数も未来永劫に増え続けていくわけではありません。もしこのままの勢いで大学院の開設が進めば、早晩、専門職大学院も大学と同じ厳しい競争環境を迎えるのは確実です。経営大学院(MBA)の競争時代が到来することに備えて、すでに一部の学校では、カリキュラムに独自性を打ち出す戦略をとり始めています。 最初に紹介するのは、新聞での扱いが最も大きかった慶應大学院のビジネススクール(KBS)の取り組みです。 情報源は、『MBA、医科学修士、慶大が“乗り入れ”制――医療に強い経営者を育成』(日本経済新聞 2005年1月19日 朝刊 38面)です。

慶応義塾大は4月、ビジネススクール(経営管理研究科)と医学研究科で相互に修士号を取得できる新制度を国内大学として初めて導入する。経営学修士(MBA)取得後、最短1年で医科学修士号を得ることが可能となり、主にビジネススクールの学生を対象に、医療・医薬、バイオに詳しい経営者の育成を目指す。

ビジネススクールの学生はMBA取得後、同スクールの推薦と医学研究科での面接を受けて、医学研究科への入学ができるという。両科はバイオ・ビジネス戦略論などの共通科目を設置し、双方の学生が履修できるようにし、修了単位として認める。

早稲田と同じく理工学部を持つ慶應も、MOTと連携したMBAプログラムは既に開設済みです。しかし、MBAコースを持つ総合大学の中でも医学部を持つところは極めて限られています。医学部と連携したカリキュラムは、慶応独自の強みを活かした戦略と考えられます。また、今後バイオが巨大産業になっていくことを見越して、この分野に詳しい経営管理者を養成することも、社会的なニーズにもマッチするのではないでしょうか。

2番目は、一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)のMBAコースの場合です。情報源は、『経産省、一橋大と組む――事業再生の専門家、養成講座を開設』(日経産業新聞 2005年1月19日 3面)です。

経済産業省は一橋大学大学院国際企業戦略研究科と組み、事業再生の専門家を養成する講座を開く。案件の量に比べて、専門家が不足していると判断。再生に不可欠な経営や法務、金融などの知識をケーススタディー形式で実務と理論の両面から教える。同大学院のスタッフに加え、産業再生機構の関係者ら実務家も多数講師を務める。

同研究科の布井千博教授と投資ファンド(基金)、ユニゾン・キャピタルの代表だった佐山展生助教授を中心に、事業再生の専門家で構成する事業再生実務家協会の理事らが講師を務める。財務リストラやファンド、企業の合併・買収(M&A)、ファイナンスなどを実例に即して講義する。

こちらの方は産業再生関係の講座を新たに設けるという内容です。当然新講座の内容は、同大学の正規のMBAプログラムにも反映されていくはずです。産業再生という、特殊性のあるビジネス分野に特化したプログラムは、他のスクールと十分に差別化が可能なのではないでしょうか。経済産業省と連携してプログラムが開発できたのは、一橋大学が国立大学だからです。これも自分の強みを活かす戦略です。

最後は、法政大学大学院経営学研究課のビジネススクール(HBS)です。情報源は、『法大ビジネススクール、中小向けMBAコース、履修1年、4月開講』(日経産業新聞 2005年1月19日 23面)です。

法政大学のビジネススクール、専門職大学院イノベーション・マネジメント研究科は中小企業経営者を育成するプログラムを4月から始める。中小企業の経営事例を1年間で集中的に学ぶほか、経営についての専門知識を既設のMBA(経営学修士)コースで身につけてもらう。中小企業の経営者や、その後継者などに参加を呼びかける。

「中小企業経営革新プログラム」の履修期間は1年間。修了後は経営学修士の学位が取得できる。授業は平日夜間や土曜日にも実施し、働きながら通えるようにする。経営戦略や財務、人材管理、情報技術(IT)などの科目は既設のMBAコース受講生と一緒の授業。将来的には同時開講する同大学院アカウンティング専攻で会計講座も選択できるようにする。

法政のビジネススクールは、正直なところ実績、知名度で慶應、一橋の両校に水をあけられています。正面から著名ビジネススクールに戦いを挑んでも、勝ち目がゼロとは言いませんが、苦戦することは明らかでしょう。普通のビジネススクールのカリュキュラムは、大企業もしくは起業家育成に焦点をあてたものが多いものです。その間にある、中小企業経営や、その後継問題をテーマにすることは、稀なのではないでしょうか。そのニッチなマーケットに目をつけたのが、法政の中小企業経営者向けのコースです。1年間でMBAの学位が取得可能な点も、セールスポイントになりそうです。

今回紹介したビジネススクールに限らず、ロースクール、アカウンティングスクール等の専門職大学院が、近い将来競争時代を迎えることになるのは明らかです。ロースクールの絶対評価基準は、司法試験合格率になるはずです。 アカウンティングスクールの場合は、カリキュラムの内容は会計原則が中心なので、思い切った独自性も打ち出せないのではないでしょうか。一方、ビジネススクールの場合は、客観的な評価基準や、これといって準拠すべきものもありません。したがって、スクールごとのカリキュラムの自由裁量の余地は極めて高くなります。カリキュラムの多様さという点では、今後のビジネススクールが一番面白くなると予想できます。競争力のあるユニークなプログラムを企画、実施する総合力こそが、ビジネススクール乱立時代を乗り切る鍵となるはずです。


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